植物肉や代替肉、昆虫食など、世界中で代替タンパク質の研究が進んでいる。その背景には、食肉の生産が与える環境負荷や、2050年の世界人口爆発に伴う食糧難などの問題があるようだ。この分野において日本国内で最先端を行くスタートアップや研究機関を取材すると、代替タンパク質の現在地や未来が見えてきた。
「食材」となると、やはり代替タンパク質を中心に回っていくと思います。北米はもちろん、欧州でもベーコンなどの代替肉加工品を作っていたりもしますが、最近はアジア圏にも増えてきました。香港の”Green Monday(グリーン・マンデー)”も”Omni Pork(オムニ・ポーク)”という豚肉をモチーフとした代替肉を販売しています。 “LIVEKINDLY(リブカインドリー)”のようにクオリティの高い原料メーカーも出てきました。代替肉は原料、一次加工、二次加工、調味加工など、すべてのレイヤーにプレイヤーがひしめきあっています。 世界でも、培養肉はまだこれからの分野ですね。しかし、すでに世界で60社ものプレイヤーが存在しています。今年の1月に”Memphis Meats(メンフィス・ミーツ)”がソフトバンクなどから180億円の調達に成功し、まだ研究開発のフェーズながらも、期待が高まる領域です。
先行事例としては、微生物発酵で作る培養ミルクが挙げられます。1500億円の調達に成功した”Perfect Day(パーフェクト・デイ)”のミルクは酵母菌に牛のDNAを挿入して発酵させる。アレルギー成分を含まないので健康リスクがなく、サステナブルでもある。日本だと遺伝子組み換えに対する抵抗感が強いので、すぐには火がつかないでしょうが、世界では非常にホットな話だと言える。 昆虫食は……やっぱり直接摂取は抵抗感が強いと思います。飼料用など間接的なマーケットのほうが理にかなっていると思います。 ただいずれにしても新食材の調理をどうするかという意味で、シェフの果たす役割は大きいですね。J-Vegan協会の副会長に就任したベジタリアン料理の世界的なシェフ、杉浦仁志さんのような方にかかる期待はますます大きくなるでしょう。
ほか、国内では亀田製菓が「マイセン」というブランドで100%玄米のパンを作っていたりして、すそ野はぐっと広がっている印象はあります。代替バーガーミートや代替ハムも出てきています。大豆以外の素材はどうか、大豆ならどういう調味が最高か、ネーミングも含め、もう一歩深く踏み込むことが必要かもしれません。その意味では、東京ヴィーガン餃子はおもしろいネーミングですね。説明調になりすぎず、名前だけでコンセプトを語ることができている好例です。今後は伝え方もとても重要になってくるはずです。(田中宏隆談)
text 松浦達也 取材協力 シグマクシス 田中宏隆
本記事は雑誌料理王国2020年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。