スーパーフード「ビーツ」のレシピ vol.1:レシピ4選


特性を生かすビーツ

40年にわたり世界中の郷土料理を研究してきた荻野さんにとって、ビーツは、 「ビーツを研究しようと思っていたわけではないが、どこの国に行っても結果的に食べている、目に入る日常野菜」なのだという。ここでは、長年親しんだ各国の料理を、特性に基づき、披露していただく。

 ビーツは、サラダやジュースといった生食もポピュラーであるが、生で食べると少し土っぽい、ゴボウに似た個性がある。日常的にビーツを習慣にし、様々な料理に即展開するなら、「まずは、酢漬けと甘酢漬けがおすすめ」。と荻野さん。ヨーロッパでは定番の常備食でもあり、スープやサラダ、サンドウィッチ、肉のソースにも使われる。汁はジュースだけでなく、冷製スープやドレッシングなど様々に活用できる。コツは、味が染みやすいよう、すり下ろすなどして繊維を断つこと。「茹でる場合は世界中、どこに行っても色が抜けることを恐れてか、丸ごとが主流ですが、とても時間がかかります。角切りにすると早いですし、初めは色が抜けますが、そのまま水気がなくなるまで茹でると色も吸い戻し、ちょうどよく仕上がります」。これは新しい手法と言えそうだ。

 またビーツは、加熱すると甘味と旨味が引き出され、果物とも野菜とも言えないような濃厚な味わいに変化する。これは、天然のオリゴ糖を含むことが大きい。油とも相性がよく、煮崩れしにくいので、長く煮込んでも食感が楽しめる。荻野さんの「世界の人にとって、ビーツは日常野菜」という言葉を踏まえ、イメージしやすい日本の家庭料理にビーツを置き換えてみるなら?「炒めて塩をふるだけでうまみ抜群のきんぴらに、煮出すことで出汁いらずの豚汁に、揚げれば、甘くホクホクの天ぷらになりますね」とのこと。特性を知って調理すれば、活用度が広がりそうだ。

【レシピ】ビーツの甘酢漬け、ビーツの酢漬け

ビーツの甘酢漬け(左)と酢漬け(右)

ビーツの甘酢漬け

  1. ビーツ500gは皮ごとよく洗い、賽の目に切って鍋に入れる。かぶるくらいの水を注ぎ、火にかけて茹でる。次第に茹で汁に色素が抜けてくるが、汁がなくなるころにちょうど茹で上がり、色素も吸い戻される。
  2. 煮沸消毒した瓶に入れ、甘酢(酢、水各3カップ、砂糖1/4カップ、塩大さじ1/2)を注いで漬け込む。

ビーツの酢漬け

生のシャキシャキとした食感を味わえるシンプルな酢漬け。ビーツを皮ごと洗って繊維を断つようにシリシリ器などですりおろし、酢と同量の水を注ぐのみ。

【レシピ】ビーツミルクとビーツジュース

【地域】 メキシコ、アメリカ、アジアほか世界各国
世界中で愛されているビーツジュース。海外では市場やスタンドなどでよく見かける。毎朝の一杯を習慣にすることで、とにかく体調が良くなるパワードリンクだ。ビーツは乳製品ともとても相性が良く、一度飲んだら病みつきになる。

材料と作り方

ビーツの甘酢漬け(好みで酢漬け)の漬け汁を、水や牛乳で好みの濃さに割る。お湯で割るとホットドリンクにも。

【レシピ】冷たいボルシチ

【地域】 リトアニア(ロシアでも食べられている)
ビーツの色の美しさを目で味わえる料理の代表格。これを飲むと多くの人のビーツの認識が変わる。実はロシアではなくリトアニアの郷土料理で、自家製サワークリームを加えることで現地の味に近づけている。ひんやりとしたコクとまろやかさに、付け合わせのじゃがいもが止まらなくなる。日持ちもするため、ケータリングなどにも。

材料と作り方(4人分)

  1. ボウルにヨーグルトを1/2カップ入れ、同量の生クリームを少しずつ加えながら混ぜてサワークリームを作る。ここにビーツの甘酢漬けを汁ごと1カップ加えて混ぜ、塩で調味して冷やす。濃いようなら水を適量加えて薄める。
  2. 皮をむいて2㎝角程度に切ったじゃがいも2個を鍋に入れ、かぶるくらいの水を注ぐ。塩ひとつまみを加えて柔らかくなるまでゆでる。ザルに上げて湯をきり、みじん切りにしたディル適宜をまぶす。
  3. 1にきゅうりのみじん切り1/4本分、玉ねぎのみじん切り1/6個分入れて器に注ぎ、2を添える。好みでボルシチに入れながら食べる。 

【レシピ】ビーツとグレープフルーツのサラダ

【地域】 メキシコ、アメリカほか
南米原産のグレープフルーツの甘味と酸味をビーツが引き立て、あっさりとした味わいにまとめる。玉ねぎがビーツ色に染まり、食感も色味も香りも楽しめる。ホテルやデリ他、あちこちで見かける定番の組み合わせ。香菜はイタリアンパセリなどでも。

材料と作り方(2人分)

器に汁気をきったビーツの酢漬け100gと玉ねぎの薄切り1/4個分、薄皮をむいたグレープフルーツ1/2個分を彩りよく盛り合わせ、香菜の葉適量を散らす。塩、こしょう各少々をふって、オリーブ油大さじ1を回しかける。

edit&text 𠮷田佳代、 photo 公文美和、 料理監修 荻野恭子

本記事は雑誌料理王国313号(2020年12月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は313号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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