日本でもすっかり定着したタジンは、モロッコの伝統料理。肉、野菜、魚といろいろなバリエーションがあるが、牛肉とプルーンの組み合わせは王道中の王道。
モロッコの郷土料理タジンは水が貴重な砂漠の国で生まれた。食材から出る水分を蒸気にして循環させ、その水分だけで料理する無水調理で、鍋の円錐形は効率よく加熱するための機能的デザインだ。「モロッコでは普段は野菜のタジンが多く、肉、特に牛肉はごちそうです」
牛肉とプルーンとの組み合わせは伝統的なレシピで、スパイスと調味料でマリネした牛肉を、戻したプルーンと一緒にタジン鍋で加熱する。「甘味のあるドライフルーツは料理にもよく使います」。塩気の中に自然な甘味のアクセントが加わって複雑な味わいになる。「現地では、タジンにホブスと呼ばれるパンを添えます」
肉をたっぷり堪能したら、コクのある煮汁をパンにつけて頬張る。すると、口いっぱいに旨みが。牛肉とプルーン、この意外な組み合わせがクセになりそうだ。
牛肉(シチュー用)……400~500g
にんにく(すりおろす)……2片
玉ねぎ(みじん切り)……1個
A
・ターメリック(またはサフラン)……小さじ1/2 (サフランの場合は少量のお湯で色を出す)
・ジンジャーパウダー……小さじ1
・白こしょう(または黒こしょう、いずれも粉)……小さじ1/2
塩 …小さじ1弱
オリーブオイル…大さじ2
プルーン…12~15粒
B
・ シナモンスティック…1本
・ グラニュー糖(または蜂蜜)…大さじ4
・ バター…大さじ1
白ごま 適量
「モロッコのバザール(市場)に行くと、プルーンやあんずなどいろんなドライフルーツが山積みになっています」。種類も豊富で値段も安い。モロッコの人たちにとっては身近な食材なのだ。シロップで煮てヨーグルトにかけたりパンケーキにのせたり、また料理にも大活躍だ。「シナモンなどのスパイスで香りをつけるのもおすすめです」
口尾麻美 Asami Kuchio
料理研究家·フォトエッセイスト。料理教室「Amazigh」主宰。アパレル会社に勤務後、イタリア料理店を経て独立。世界を旅して料理や食材を味わい、各地で出合った料理を再現すべくレシピを研究する。『おはよう! アジアの朝ごはん』(誠文堂新光社)、『まだ知らない 台湾ローカル 旅とレシピ』、『はじめまして 電鍋レシピ』(共にグラフィック社)など著書多数。
text Miki Numata photo Yukako Hiramatsu recipe Asami Kuchio
本記事は雑誌料理王国315号(2021年4月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は315号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。