「イタリアでは、わずか5%しかEVオリーブオイルが入っていないオリーブオイルを、EVオリーブオイルとして販売するなど、オイルに関する食品偽装が大きな社会問題になっています」と山田さん。「高品質なEVオリーブオイルを選ぶためには、使う側が正しい知識を持つことが大切です」と、警笛を鳴らす。
「EVオリーブオイルの酸度は0・8%以下と定められていますが、これは機械で判定できます。それに対し私たち鑑定士の仕事は、香りや辛みなどを評価し、本当にエクストラヴァージンかどうかを判断すること。これだけは人間にしか判別することはできません」
良質なEVオリーブオイルのポイントは3つ。異臭がないこと。オリーブ本来の香りがあること。最後に、辛みがあること、だという。
「市場には到底EVオリーブオイルとは呼べないようなものが、数多く出回っています」。例えば、オリーブオイルにあるカビや酸化した臭いは、水に移る性質がある。そのため、大きな洗濯機状の機器にオイルと水を入れて回してしまえば、ディフェクト(欠陥)オイル特有の臭いを消すことができる。
「これで異臭は消えますが、当然、オリーブ本来の香りも損なわれてしまいます」
また、香りや味以外にも、ラベルやボトルで、ある程度の予測がつく。「内側に蓋がついた型のものは、後からの混入が不可能なので、品質が保証されていると言えます。ラベルに原料となるオリーブの品種が書かれていることも重要です」。さらには、イタリア語で単一品種を意味する“MONOCULTIVAR”の記載があることにも注意して欲しいという。「イタリアには628種類のオリーブの原種があると言われていますが、それぞれ成長の早さが違いますから、当然、収穫時期も異なります。EVオリーブオイルを作る際、果実の完熟度は50%が理想です。ベストな収穫期でオイルにしたものを、ブレンドするのなら品質は保たれますが、そうでなければ、ディフェクトの可能性があるとも言えます」
正しい知識を持ち、本物のEVオリーブオイルを選んで使うことで、ディフェクトオイルを減らすことができる、と山田さんは呼びかけた。
プラスチック容器でテイスティングを行う場合は、容器を5~6回、回しながら、内側の壁面をオイルで洗うようにしてプラスチック臭を飛ばす。
香りをたたせるために、しっかりと右手で蓋をして底に左手を添え、容器を回しながら温める。温度はひと肌になる程度、季節にもよるが3~5分ほど。
温めることで立ち上ったオリーブオイルの香りを確かめる。トマトやアーティチョークの葉や茎、レタスやセロリなど、さまざまな香りを嗅ぎわける。
テイスティングは飲んで行うものではないので、小さじ1杯分程度を口に含む。
「シィー」という音が出るほどに、オイルをノドまで吸い込む。このとき、舌の奥で辛さを感じるものがよい。この辛さの正体がポリフェノールである。
1.豊かなオリーブの香りがする
2.ノドの奥で辛さを感じる
3.したにオリーブ以外の雑味が残らない
「舌の奥で感じる辛さは、辛ければ辛いほどポリフェノール値は高くなります。またEVオリーブオイルの色は、品質とは関係ありません。苦みもオリーブの原種の特長によるものです。もちろん苦味がある方がポリフェノール値が高いのですが、テイスティングする際には、オイルが持つ個性として捉えるべきです」と山田さん。
協力/ ミーレ・ジャパン株式会社 ミーレ・センター表参道
本記事は雑誌料理王国第229号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第229号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。