【名店の絶品貝料理】四ツ谷「北島亭」の『真牡蠣』を使用した一品


凝縮感あふれるフュメ・ド・ポワソンがカキの旨味と合体

築地通いのシェフとして知られる「北島亭」の北島素幸さん。「貝はね、まずは信頼できる業者さんに頼むことが先決。あと安物は買っちゃだめよ。いくら生きてても、日にちが経ってる場合があるからね」。   

「北島亭」で貝といえば、カキが主役。なかでも北島さんが年以上前にパリのレストランで食べてヒントを得た、フランボワーズビネガーを使った生ガキのマリネは看板料理のひとつ。ひと昔前までは、三陸のカキを好んで使っていたそうだが、最近では西日本でも大ぶりで質のいい貝が手に入るようになった。今回の料理には、兵庫県赤穂のカキを使ったが、次回は長崎県小長井のカキも試してみたいと北島さんは話す。 

【真牡蠣】(マガキ)
■ 英名/giant pacifi c oyster
■ 分類/イタボガキ科
■ 旬/旨味が増す秋から冬。「Rの付かない月はカキを食べるな」というイギリスのことわざがあるが、これは春から秋の産卵期は鮮度が落ちやすく食中毒を起こしやすいため、注意を促す言葉となった。
■ 特徴/日本各地で養殖業が盛んで、主な産地は広島、三重、宮城、岩手、北海道。「海のミルク」と呼ばれるほど栄養価が高く、グリコーゲンや鉄、銅を多量に含む。むき身は身がふっくらとして艶のあるものを選ぶのがいい。

天然の真鯛でとった澄んだだしをベースに

緑鮮やかな写真のスープは、フランス料理の定番であるサフラン仕立てのムール貝のスープを、バジル仕立てのカキのスープにアレンジした一品。1990年のオープン以来、ずっと作り続けていたが、ここ数年は提供していなかったという。「だってメニューに載せると、こればっかり出るんだもん(笑)。でも、久しぶりにまた作ってもいいかなと思ってね」と北島さん。

この料理の要は、天然の真鯛のアラを使って、ベースとなる澄んだフュメ・ド・ポワソンをとることにある。あくを丁寧に取りつつ、香味野菜と一緒におよそ20分間静かに煮てから漉す。スープを口にした時に広がるピュアな魚介の凝縮感は、このフュメがもたらすもの。カキは殻から外し、でき上がったスープで軽く温める程度にとどめる。

大ぶりのカキは、まるでバジルのバスタブに横たわっているかのように柔和な姿。幻の料理が復活する日が待ち遠しい。

カキのスープ バジル風味

兵庫県赤穂産のカキを使用した魚介のエキスたっぷりのスープ。フュメ・ド・ポワソンをベースに、生クリームやカキから出た海水などを入れ、仕上げにバジルのピュレとトマト、香り付けのペルノーを加えた。カキは最後にスープで軽く温める程度で提供。

北島素幸さん

1951年福岡県生まれ。高校卒業後、フランス料理の世界へ。六本木「レジャンス」(閉店)などで修業後、77年渡仏。「トロワグロ」など星付きレストラン数軒で修業。帰国後、東京・京橋「ドゥ・ロアンヌ」、赤坂「パンタグリュエル」のシェフを経て90年に独立。

text:Kanami Okimura /photo:Yuko Uehara

本記事は雑誌料理王国2011年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2011年3月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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