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シェフが惚れる!「肉の匠」がいるレストラン5選

北島亭 仔羊フィレ肉の 塩包み蒸し焼き

なぜこの店の肉は 旨いか?
旨い肉には、さまざまな要素がある。
素材のよさはもちろんのこと、熟成の見極めや、その素材に適した火入れ、
提供のタイミング、引き立てる付け合わせ、そして、肉を取り巻く時代の潮流を知ることも 深い旨さにつながっていくかもしれません。そこで、料理王国ではシェフにアンケートを行い、「肉の匠」がいる5つのレストランを選出しました。

1:【四ツ谷 北島亭】香りを逃さず、肉をいじめないように火を入れる 北島素幸さん

和牛イチボのローストビーフ風 骨髄添え、ボルドレーズソース
しっとりと焼き上げたイチボの上に、人肌に温め、塩水でなめらかにした骨髄をのせる。やわらかな肉の食感と、とろける骨髄とのバランスは絶妙。自然な甘さのソースともよく合う。

「肉」と聞いて、シェフたちの注目度がもっとも高かったのが「北島亭」のオーナー、北島素幸さんだ。選ぶ肉の基準を言葉で説明するのは難しいとしながらも、「豚や羊肉を選ぶポイントは、脂が厚く肉の色が白くてきれいなこと。
牛肉はきちんと肥育されてサシが少ないもの」と、素材へのこだわりを熱く語る。火入れに関しても妥協せず、「僕なんかまだよちよち歩きの料理人」。北島さんは重鎮と呼ばれる今も、すべての料理に正面から真剣に取り組む。

肉の表面を乾燥させないように油と水をかけながら焼く

塩、粗挽きコショウをふり、油を馴染ませたイチボを冷たいフライパンにのせてサラマンドルへ。両面が薄く色付くまでゆっくりと火を入れる。
そのままプラックに移して、脂部分がきつね色になるまで焼く。脂が焼けたらいったんフライパンから肉を取り出し、出た脂を取り除いておく。
フライパンに牛脂を入れてコンロの火にかけたら、その上にイチボを戻し、油や水をかけながら焼く。両面を焼いたら再びサラマンドルに入れる。
サラマンドルから出し、プラックの上の棚で休ませる。そのあと、もう一度、肉の表面に油と水をかけ、コンロで温めてから切り分けて盛り付ける。

北島さんはフライパンひとつで肉を焼き上げる。これは多くの料理人の知るところだが、それにはいくつものポイントと、外せないタイミングがある。「肉の種類に関係なく、肉をいじめないように焼くこと」。
イチボの場合、まず冷たいフライパンに入れ、サラマンドルでゆっくり熱を伝えるところから始める。肉が温まってきたら、次に高温のプラック(天板)で脂を焼く。焼き色が付いたら、ここで初めてコンロにかける。この時、焼いた牛脂や鶏ガラの上にイチボを置き、風味やコクをイチボに移すのも北島流。「それ
と肉を乾かさないことも大切」と、途中、何度か表面に油と水をかけた。
 

北島亭 仔羊フィレ肉の 塩包み蒸し焼き
仔羊フィレ肉の 塩包み蒸し焼き
骨のまわりの歯応えのある肉と、やわらかなフィレをひと皿で味わえる。添えられているのはトリュフソース。このスペシャリテを求めて「北島亭」を訪ねるゲストは多い。

仔羊フィレ肉の塩包み蒸し焼きについても調理の流れはほぼ同じで、背肉から切り離したフィレはパータ・セル(塩の生地)と網脂に包んでプラックへ。残りの部分は冷たいままのフライパンにのせてサラマンドルに入れる。どちらもプラックやコンロにかけたり、休ませたりしながら火を入れる。機械に頼らずに仕上げるのは難しく、「それを乗り越えようと挑戦し続けたおかげでスペシャリテが生まれた」と振り返る。
 さらに「料理は香りが命」と、調理直前まで肉のそうじはしない。真空調理もしない。「料理を作る料理人にも香りは大事」と笑いながら厨房を動き回る。料理人の香りとはおそらく、この若々しさとバイタリティーから香る。若いシェフたちはこれからも、北島さんと、その料理が放つ香りに憧れ続けることだろう。

北島亭 北島素幸
Motoyuki Kitajima
1951年、福岡県生まれ。77年に渡仏。「トロワグロ」「ジョルジュ・ブラン「」ラ・
マレ」等の名店で5年間修業して帰国。京橋の「ドゥ・
ロアンヌ」、赤坂の「パンタグリュエル」のシェフを務め、90年に「北島亭」で独立した。
北島亭

北島亭
東京都新宿区三栄町7 JHCビル1F
03-3355-6667
● 11:30~14:30(13:30 LO) 18:00~22:00(19:30 LO)
● 水、第1・3火休
● コース 昼3780円~ 夜8640円~
● 18席



上村久留美 = 取材、文 依田佳子 = 撮影
text by Kurumi Kamimura photos by Yoshiko Yoda


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