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「ピッツェリアパーレンテッシ」中野秀明さんに学ぶ加工肉の極意


自家製食肉加工品講座

滋味、酸味、旨味。生ハムやソーセージ、塩漬け肉には生とはまた違った旨味があります。「ほかでは味わえない”本物の味”」をめざして、自ら仕込むシェフが増えています。伊・仏・中、5人のシェフに加工肉の作り方とその展開例をご紹介いただきました。

宮城県の農家の野菜、信頼のおける業者からのサルシッチャ、ハムなどの自家製加工肉。「ピッツェリアパーレンテッシ」の食材の中で、履歴のたどれない食材は皆無に近い。

シェフの中野秀明さんは、食材を仕入れる際に、ほとんどの生産者を訪問している。それでも、食材の安全性、他店との差別化、そして「おいしさ」を求めて続けるうちに、自家製の食材の割合が次第に増えた。

「何でも自家製がいいとは思わない。でも、人工の環境で作られた輸入食材よりも、日本の素材で自家製したほうがおいしいこともある」
 

たとえば、イタリア・パルマ県ジベッロの生ハム、クラテッロ。豚の膀胱にモモ肉を詰めて14カ月間熟成させるハムだが、現地でも今やエアコンで温度管理をして熟成させる生産者が少なくない。ならば、日本の気候の外気で熟成する自家製のほうがいいと、中野さんは考える。また、ポー河の影響で湿度が高くなるジベッロの気候は、東京の湿度と通じるところもある。中野さんは仕込み始めは北海道で乾燥させ、その後、東北の小屋に移し、最後に東京の店内で、と自然の環境で熟成させる。
 

「塩の粒子や肉の厚みによって具合が異なるので、毎回、同じレシピというわけにはいきません。とにかく肉の状態を見守ることが肝心ですよ」と言うのが、加工肉を始めたい人への中野さんのアドバイスだ。

「安全でおいしく、ほかにない食材を探すうちにこんなに種類が増えました」

ラムのスモーク

同店では一度に5~7㎏を仕込む。骨を付けたまま掃除した新鮮なラム肉に塩、コショウをたっぷりとふり、バットに入れて角切りにしたセロリ、ニンニク、ショウガとローリエで覆う。数日間このままおくので、量を多めにふる。ラップ紙をかけて3~4日間冷蔵庫でねかせる。

野菜を取り除いてよく洗い、水気を拭いてから吸水シートで覆って再度冷蔵庫へ。余分な水分が抜けるまでおく。冷蔵庫から出してシートをはずしてから1時間放置し、肉を常温にもどす。汗を拭いてから2~3時間、ブナ、サクラ、ヒッコリー、ナラに、ザラメと挽いたコーヒー豆を加えて温燻する。

クラテッロ

イタリア・ジベッロでは、豚の太モモの付け根部分の肉を塩漬けにしてから、膀胱に入れて熟成するが、日本では膀胱が入手不可能なので、ケーシングに穴をあけて使用する。中野さんは北海道で仕込み、その後、宮城、東京など、より湿度の高い場所で熟成させる。沖縄のパイナップル豚を使用。

サルシッチャ
加熱スモークハム(沖縄「パイナップルポーク」)

サルシッチャは自家製したこともあるが、店舗で作業すると手間がかかりすぎ、衛生管理も大変なので、今は信頼のおける秋田県の業者から仕入れている。ニンニク、塩、フェンネルシードのシンプルな味付け。塩分濃度は0.8%と一般の仕様よりもやや低めにし、調理の応用がしやすいように生で仕入れる。加熱スモークハムは通常仔豚で作る。やわらかく淡い味わいの仔豚の皮を焼いて食感を演出、その後、燻製をかけることで味わいに奥行きが生まれる。チップもコーヒー豆とザラメを加えたオリジナル。

パーレンテッシ 加工肉の展開例

自らの仕様で作っているからこそ、多様な展開、多彩な味付けが可能なのだ。

ティジェッラ
モデナのパン「ティジェッラ」に加熱スモークハムと自家農園のルーコラを挟む。香ばしいパンと食べごたえのあるハム、ルーコラの苦味が好相性。「ティジェッラ 加熱スモークハム入り」1200 円

ティジェッラ・スタンポという器具でピッツァ生地を焼き上げた「ティジェッラ」。歴史の古いパンだが、今や現地、モデナでもあまり見かけない。香ばしく素朴な味わい。

サルシッチャ
自家製ではないが、生の状態で仕入れるのでスモークをかけることもある。塩気は控えめに指定するので調理に応用しやすい。焼いてから野菜を添えた。「ソーセージの野菜煮込み 焼きリゾット添え2840 円」

クラテッロ、加熱スモークハム(沖縄「パイナップルポーク」)
奥から「パイナップルポークのクラテッロ」「加熱スモークハム」「イノシシのクラテッロ」ですべて自家製。熟成した旨味と香りがあり、クルミのオイルが脂肪のナッツのような風味を強調する。「生ハムと自家農園のイチジク盛り合わせ」1980 円~

中野 秀明さん

1968 年宮城県生まれ。都内のイタリア料理店で10 年修業、99 年に「ピッツェリア パーレンテッシ」開店。年に1回は渡伊し、食材の生産者を訪ねる。

ピッツェリアパーレンテッシ
東京都目黒区東山3-6-8
● Phone 03-5722-6968
● 18:00 ~翌1:00 
● 不定休

伊藤由佳子=文・構成 三好彩子=文 浅山美鈴、天方晴子、東谷幸一=写真

本記事は雑誌料理王国181号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は181号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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