フレンチの鉄人直伝!肩ロースとバラ肉を使い脂の旨さを際立たせる


黒豚と赤豚を交配したこの豚の脂のおいしさを引き立たせる

フレンチの名店「ラ・ロシェル」では、常に食材の選択に厳しい目を光らせている。オーナーシェフ、ムッシュ坂井宏行さんの指導を20 年以上受けてきた山王店の料理長・川島孝シェフにも、当然、食材選びの厳しさは受け継がれている。そのふたりが今、気に入っている豚肉が鳥取県のブランド豚「大山ルビー」だ。「バークシャー種の黒豚と、鳥取県のオリジナル豚の大山赤豚を交配させた品種です。赤身の旨さもさることながら、サシの入った脂身の甘さが抜群です」と川島シェフ。

大山ルビー

・産地 鳥取県  
・飼育環境 豚舎
・品種 中小家畜試験場が作出した「大山赤ぶた」の雌に、黒豚の雄を交配したオリジナル品種。

大山ルビーは、鳥取県中小家畜試験場で7年の歳月をかけて研究された大山赤ぶたを母親にもつ、平成22年に作出した鳥取県のブランド豚。全国に多数あるブランド豚のなかで、黒豚(バークシャー種雄)と赤豚(雌)の組み合わせは、大山ルビーだけ。肉のきめが細かく、脂肪がおいしい黒豚の長所と、赤豚のサシや旨み成分オレイン酸が多い良点を受け継いでいる。

この大山ルビーの特性を十分に引き出すために、肩ロースとバラ肉というふたつの部位を使い合わせたひと皿が生まれた。

まず、肩ロース肉でコンフィを作る。肩ロース肉は、すぐに使わず、1週間から5日ほど熟成期間を置く。そして、ロース肉1キロに対して1・3%の配合塩をして、真空パックにかけ、1日置きマリネする。コンベクション・バプールを使い、54度の低温でゆっくりと12 時間かけて火を入れる。こうして作ったコンフィをさらに網焼きにする。

網焼きした肩ロース肉のコンフィの上に、ピペラードをおき、その上に豚バラリエットをおく。

キャベツとクレピネットで巻いたコンフィは、フライパンでアロゼしながら火を入れる。

肩ロースとバラ肉を使い脂の旨さを際立たせる

このコンフィの上にのせるのがピペラードだ。これは、ピレーネ山脈をはさみ、スペインとフランス両国に広がるバスク地方の郷土料理。「トマトと赤パプリカを粗みじんにして、オリーブオイル、ニンニク、パプリカパウダー、ピメントエスプレット(赤唐辛子)を鍋に入れ、水分がなくなるまで煮詰め、最後にクミンで香りをつけます」と川島シェフ。このピペラードと、バラ肉で作ったリエットをコンフィの網焼きにのせて、キャベツとクレピネット(網脂)に包む。この手間のかかる調理過程を川島シェフは、参加シェフたちを前に手際よく進める。

コンフィのクレピネット包みは、フライパンで焼いたあと、210度のオーブンで約4分。この手の込んだひと皿は、レモンとショウガの風味を効かせたソースで味わう。「ソースのとろみを出すのには、くず粉を使います。ショウガ、ニンニク、タマネギをすりおろし、グレープシードオイルに4〜5日漬けたショウガオイルが、いい風味を出してくれます」と、ムッシュ坂井がラ・ロシェルの〝秘伝の味〞を公開。
鳥取県産の大山ルビーは、フレンチの繊細な技法を得て、美味なるひと皿となった。

旨味成分オレイン酸を引き出し、オイルを加えず、豚本来の旨みを味わう

7日ほど熟成した肩ロース1㎏に対して、1.3%の配合塩をし、真空で1日おく。熟成後のマリネが肩ロース肉の旨みを引出す。コンベクション・バプールでゆっくりと火を入れる。

豚バラ肉は3㎝の角切りにして、1.3%の配合塩をする。この配合塩に混ぜるのは、白胡椒とナツメグ。このあと、玉ネギとともにマリネして1日おき、リエットをつくる。

豚バラの脂のおいしさを活かしてリエットにする。肉と水分に分けて、ロボクープにかけ、固さを見ながら、水分を入れてつないでいく。バラ肉の脂を活かすため、オイルを加えない。

【レシピ】鳥取県大山ルビーポーク 肩ロース肉低温コンフィのクレピネット包み

大山ルビーの赤身の旨さと脂肪の甘いおいしさを活かすために、熟成した肩ロースのコンフィを網焼きにし、それに合わせたのはピペラード。さらにバラ肉の脂身を使ったリエットを組み合わせる。これをキャベツとクレピネットで包む。フレンチの名店ならではのソースを纏った華麗なひと皿となった。

材料(25人分)

◦肩ロース肉のコンフィ
豚肩ロース肉…1㎏/A【塩…17ℊ/白コショウ…4ℊ/ナツメグ…2ℊ/タイム…1枚/ニンニク(スライス)…2枚】
◦ピペラード
トマト(完熟)…2個/赤パプリカ…2個/オリーブオイル…30㏄/ニンニク(すりおろし)…1片/パプリカパウダー…10ℊ/ピメントエスプレット…10ℊ/クミン…0.5ℊ
◦豚バラリエット
豚バラブロック(3㎝角)…1㎏/B【塩…17ℊ/白コショウ…4ℊ/ナツメグ…2ℊ】/タマネギ(5㎜スライス)…1個/白ワイン…500㏄/ニンニク(ロースト)…3個/オリーブオイル…適量/ C【ローリエ…4枚/ジュニパーベリー…10 粒/丁子…4個/白コショウ…10粒】/ジャガイモ…2個/生クリーム、スライスアーモンド(ロースト)…各適量
◦ソース
レモン…3個/塩…50 ℊ /ショウガ…50 ℊ / ニンニク…1片/タマネギ…
150ℊ/ショウガ(みじん切り)…10ℊ/ブイヨン…120㏄/グレープシードオイル、バター、くず粉、ハーブ…適量/レーズン…5~6粒
◦付け合せ
パイナップル…1/6 個/ D【マルサラ酒…750㏄/水…900㏄/ハチミツ…210ℊ/八角…3個/バニラビーンズ…1/2本】
◦仕上げ用(4人分)
豚肩ロースのコンフィ…35ℊ×4/ピペラード…10ℊ×4/豚バラリエット…15ℊ×4/キャベツ(大きめのもの。塩ゆで)…4枚/網脂、オリーブオイル、クレソンアレノア、ミニオネット・・・適量

作り方

1.肩ロース肉のコンフィを作る。豚ロース肉に対し1.3%の配合塩Aをして、真空パックにかけ、マリネする(1日)。その後、バプールコンベクションでゆっくりと火を入れる(54℃×12時間)。
2.ピペラードを作る。トマトは湯むきをしてコンカッセにし、種は取り除きパッセする。赤パプリカはコンカッセにする。
3.2のトマトと赤パプリカを鍋に入れ、オリーブオイル、ニンニク、パプリカパウダー、ピメントエスプレットを加えて水分がなくなるまで弱火で煮る。最後にクミンで香りづけをする。
4.豚バラリエットを作る。豚バラ肉は3㎝の角切りにし、1.3%の配合塩Bをする。タマネギとともにマリネする(1日)。これを圧力鍋に入れてエキュメし、白ワイン、ニンニク、オリーブオイル、Cのブーケガルニを入れ、ふたをして火を入れる(55分)。
5.4の肉と水分を分けて、水分を鍋に入れ1/5量になるまで煮詰める。肉をロボクープにかけ、固さをみながら水分を入れてつないでいく。
6.ジャガイモは蒸して皮をむき、タミーでパッセする。
7.5の豚バラ肉と6のジャガイモのピューレを同量ずつ混ぜ合わせ、生クリーム、スライスアーモンドを加える。
8.ソースを作る。レモンは1/6にカットし、塩とともに漬け込んでおく(1~2週間)。ショウガ、ニンニク、タマネギはすりおろし、グレープシードオイルで漬け込んでおく(3日)。
9.鍋にバターを熱し、8の塩漬けレモンとショウガのみじん切りを炒める。ブイヨンを加え、沸騰したら塩、コショウで味をととのえる。くず粉で濃度をつけ、最後に8のショウガオイル、刻んだハーブ、レーズンを加える。
10.付け合せを作る。Dの材料を鍋に入れて沸騰させる。これにパイナップルを加え、210℃のオーブンでアロゼしながらローストする(30分)。
11.仕上げをする。1の肩ロース肉のコンフィを網焼きにし、3のピペラード、7の豚バラリエットをのせて、キャベツ、網脂で巻く。フライパンにオリーブオイルを熱した中にこのクレピネット包みを入れ、アロゼしながら火を入れる。さらに、210℃のオーブンに入れる(約4分)。
12.盛り付けをする。皿に11のクレピネット包みを盛り、10の付け合せを添えて、9のソースをかける。クレソンアレノア、ミニオネットを飾る。

Takashi Kawashima , Hiroyuki Sakai

Hiroyuki Sakai(右)
1942年、鹿児島県生まれ。38歳で「ラ・ロシェル」を開く。以来、日本のフランス料理界の第一人者として活躍。「料理の鉄人」としても有名。

Takashi Kawashima(左)
1967年、群馬県生まれ。群馬調理師専門学校卒業後、「ラ・ロシェル」に入社。その後、渡仏。2010年から「ラ・ロシェル山王」料理長に就任。

ラ・ロシェル山王
La Rochelle

東京都千代田区永田町2-10-3
東急キャピトルタワー1F
☎03-3500-1031
● 11:30~14:00LO
18:00~21:00LO
●月、第1火休(祝日を除く)
●コース 昼4500円~
夜8500円~
●60席
www.la-rochelle.co.jp

長瀬広子=取材、文

本記事は雑誌料理王国241号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は241号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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