世界中の料理と引き合い、新たな魅力を提示するアルザスワインは、日本においてもシェフたちの感性を刺激している。この動画では、毎回3種のアルザスワインをテイスティングしながらその可能性を探っていく。
第一回はこちらから。
ソムリエとシェフが語り合う。アルザスワイン×食の至福
第1回 和食(割烹小田島)
https://cuisine-kingdom.com/alsace001
第二回はこちらから。
ソムリエとシェフが語り合う。アルザスワイン×食の至福
第2回 フランス料理(ラ・ボンヌ・ターブル)
https://cuisine-kingdom.com/alsace002
AOCアルザス ピノ ブラン 2018
ドメーヌ ・アルベール ・マン
AOC Alsace Pinot Blanc 2018, Domaine Albert Mann
香りはフレッシュ。白桃、洋ナシのニュアンス。「優しくてやわらかい印象。口当たりもまろやか。なにかが秀でているというのではなく果実味、酸味、ややほろ苦さがきれいにまとまっていて、軽やかに仕上がっている」(大越氏)。
AOC アルザス ピノ・グリ 2017
≪シュタイネール≫ドメーヌ・ジャン・ガングランジェ
AOC Alsace Pinot Gris 2017 « Steiner », Domaine Jean Ginglinger
「スモークさがあり、キノコから、アプリコット、ビワなど黄色い果実へ。複雑で力強い香り。味わいも厚みがあって、それが酸とほろ苦さでぐっとしまる」(大越氏)。こちらもナチュラルなワイン造りから生まれた、ひと味違う飲みごたえのあるアルザスワイン。
AOC アルザス ピノ・ノワール 2018
ドメーヌ・クリスチャン・ビネール
AOC Alsace Pinot Noir 2018, Domaine Christian Binner
ナチュラルな造り方から生まれたワイン。「うまみがじわっと口の中に広がり、味わいもしみわたる」(大越氏)。一般的なピノ・ノワールの華やかさ、ラズベリーのような香りではなく、滋味深い大地のニュアンス、赤いプラムのような香りが印象的。
日本ではイメージしづらいが中国、特に内陸、北部で仔羊はポピュラーな食材。その地域で伝統的に愛されているのが、白菜を発酵させて漬物にするという発酵調味料。この2つの取り合わせで酸、うま味をたっぷり味わえるのが今回の料理。この地で同様によく使われるクミンやフェンネルでマリネしロースト。仕上げにアクセントで青い山椒などを振り、心地よい清涼感を演出。
多くのワインラバーが好きなピノ・ノワール(黒)に、ピノ・ブラン(白)、ピノ・グリ(グレー)という同じグループのぶどうの色違い3品種。同一地域でこれが楽しめるのもアルザスらしさです。中華料理はうま味のおいしさ、スパイスの使い方が魅力で、アルザスのナチュラル系のワインとは見事に相乗効果があります。さらにアルザスのワインは、その中でもフレッシュな酸を維持できますし、複雑な香りとのハーモニーも生まれます。今回はピノ・グリならソースのニュアンスが、ピノ・ノワールなら仔羊そのものが持ち上がる。料理の中でより相性のいい部分を引き出せます。
もともと個人的にもアルザスワインのきれいな酸が好きでした。アルザスワインの塩味のニュアンスや豊かな果実味は中華料理とよく合います。今回使った白菜のような発酵調味料とも、乳酸発酵による酸やうまみ、ナチュラルな香りという点で共通しています。そして香りのバリエーション。アルザスワインには様々なフレーバーがあります。今回の料理では、最後にハーブを追加しますが、多彩なハーブを使う中華料理とアルザスワインの組み合わせの可能性は尽きません。きれいな酸というベースがあって、香りで動きもつけられる。魅力的ですね。
【知られざるアルザスワインの世界】動画はこちらから!
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Text:Daiji Iwase Photo: Yusuke Onuma
紀元1世紀からローマ人により導かれ、何世紀にもわたり発展を遂げてきたアルザスワイン。東をライン河、西をヴォージュ山系に挟まれたアルザスは、北部に位置しながらも気候に恵まれ、南北100km、東西1~5kmの1万5000haの畑から年間約95万hlのワインが生産されている。そのワインは基本的に単一品種でつくられ、生産量のおよそ90%を辛口白ワインが占める。生産量の1/4強にあたる甘口白ワイン、赤ワイン、スパークリングワインにも根強いファンが多い。そのピュアで繊細な味わいは、世界中の人々から愛されている。