日本のコンビニのタマゴサラダサンドイッチは今や世界に誇るコンフォートフードだ。2013年に料理人の故アンソニー・ボーデインがCNNのTV番組で、「とんでもなく柔らかくておいしく、不思議な中毒性がある」と、とりわけ「ローソン」のタマゴサラダサンドイッチを絶賛したのをきっかけに話題となり、さらに昨年、LAの「Konbi」が大々的に“ジャパニーズ・エッグサラダサンドイッチ”を売り出し、本格的なブームが勃発。その人気が飛び火し、今ニューヨークでも「エッグサラダサンドの最高峰はどこか?」という議論が沸き起こっている。
なぜここまで人々を熱狂させるのかといえば、アメリカではマヨネーズがそもそも淡白な風味で、固ゆでタマゴを大雑把に刻んだタマゴサラダの味は薄く、ぼそぼそとしたテクスチャー。一方の日本スタイルは、マヨネーズをたっぷり使い、ふんわりした食感の中に黄身のコクとマヨネーズの酸味を共存させているのが特徴。しかも、パンも柔らかい食パンを使用と、どこまでも丁寧だ。
人気のオールデイダイニング「Hall」のサンドは、ほどよく白身の形を残したタマゴサラダに、カットしたゆで卵もさらにつけ、見た目の主張も十分。さっくりとしたパンにタマゴのコクが絡み、一口ごとに濃厚な味わいが楽しめる。しかも、ベーシックで$4、プロシュートハムあるいはスモークサーモン入りでも$5という価格はかなり良心的。出勤前のオフィスワーカーたちの朝の止まり木になっている。日本のあの味を一度知ったら、もうアメリカスタイルには戻れないはずだ。
小松優美
ニューヨークの食、デザイン、カルチャーを分野に活動するライター&プロデューサー。飲食店の激戦区イーストビレッジ住まいで体重増加中