イギリスの食文化#1 イギリスのパンケーキはクレープのような薄さが身上


日本で2010年代に入った頃からかブームとなった菓子に、パンケーキがある。
個性的なパンケーキが続々と登場し、ふわふわした食感がウリだったり、どんと高さがあるものだったり、クリームや果物でカラフルにデコレーションされたものだったり。ついにはカスタムメイドできるお店も出現したほどだ。

ところが、イギリスの伝統的なパンケーキは、日本で認識されているそれらとはまったく様相が異なる。
決定的な違いは厚さ。イギリスのパンケーキはクレープを思わせる薄いものだ。
さらに提供の仕方も違っていて、くるっと巻き、粉砂糖をふって、レモンを添えるのが一般的である。

パンケーキは、粉、卵、牛乳といった、ごくシンプルな材料で作る菓子だ。
パンとはbreadではなく、フライパン/frying pan、つまり平たい調理器具で焼くから。
歴史を遡れば、鉄板などの道具を利用して作ってきたものである。

イギリスのパンケーキはイースターにちなんだ菓子

パンケーキは、イギリスでは告解火曜日/Shrove Tuesdayの食べ物として知られ、そのため告解火曜日はパンケーキ・デイ/Pancake Dayとも呼ばれる。告解火曜日は、フランス語ではマルディグラ/Mardi grasとなる。
告解火曜日とは、四旬節/Lent、灰の水曜日/Ash Wednesdayから復活祭/Easterまでの、主日/Sundayを除いた40日間の前日のことである。
ちなみに、告解火曜日や復活祭は移動祝日のため、毎年日にちが変わる。(2020年は4月12日(日)が復活祭)。

告解火曜日/パンケーキ・デイには、イングランド・バッキンガムシャーのオルニーのパンケーキ・レースを筆頭に、イギリスでは伝統的なイベントを行うところがある。

では、なぜ、この告解火曜日にパンケーキを食べるのか。
それは、告解火曜日の翌日から復活祭までの、日曜日を除く40日間は断食期間になるからである。
そのため、贅沢品と考えられていた卵や乳製品は、断食期間の前に食べ切る必要があり、告解火曜日にたっぷり食べて翌日からの断食に備える意味があったのだ。

【レシピ】 パンケーキ(直径18~20cm5~6枚分)

<材料>
薄力粉……60g
卵……1個
牛乳……150ml
バター……適量
レモン……適量
粉糖……適量

<作り方>

  1. 薄力粉を2~3度ふるう。卵をときほぐし、牛乳を少しずつ加えて混ぜ、薄力粉に加える。
  2. 裏ごしし、冷蔵庫で1時間以上休ませる。
    ※こうすることで生地が落ち着く。
  3. フライパンに少量のバターを入れて火にかける。バターがとけたら、生地をレードル1杯分程度流し入れ、生地を広げる。
  4. ふちがパリパリしたら、裏返し、両面を焼く。
  5. 軽く巻いて皿におく。粉糖をふり、1/6にカットしたレモンを添える。

文=羽根則子

食のダイレクター/編集者/ライター、イギリスの食研究家。出版、広告、ウェブメデイアで、文化やレシピ、技術、経営など幅広い面から食の企画、構成、編集、執筆を手がける。イギリスの食のエキスパートとして情報提供、寄稿、出演、登壇すること多数。自著に、誠文堂新光社『増補改訂 イギリス菓子図鑑』など。


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