「素材をそのまま活かす日本料理やイタリア料理などと違い、フランス料理の特徴は素材の形状に変化を持たせることだと思います」と髙橋雄二郎さんは言う。テリーヌやムース、ブリュレ、フラン、ソース……。メインを張る食材でさえ、姿を変え、ときには存在を隠しながら、その旨味や香りを食べ手に届ける。
「フォワグラは、さまざまな料理に使えるバリエーション豊富な食材。形状に変化を持たせやすい食材でもあり、その意味でもとてもフランス料理らしい食材だと思います」
その特徴を最大限に活かすため、髙橋さんは、テリーヌ、フラン、ポシェ、ムース、ブリュレ、ポワレという6種類の〝調理法〞で6つのフィンガーフードをつくってくれた。
まず、「カボス、フォワグラ、酒粕、セロリラブ」は、スダチの酸味が爽やかな一品。ムースにするとチーズのようなニュアンスになるセロリラブのムースを入れ、フォワグラとはひと味違うコクを出した。
「スダチごとフランにかけたかったのですが、スダチの色が変わってしまうので、この形になりました」
続いては、「フォワグラ、トウモロコシ」。ブリュレの上に乗せたキャラメルの焦げた感じが、トウモロコシに合うと考えての一品だ。
次は「フォワグラ、赤ワイン、スパイス、ブリオッシュ」。味噌漬けの食感を赤ワインで出せないかと考え、思いついた。フォワグラはポシェしても旨いというひと皿だ。
4つめは「フォワグラ、スッポン」。これは、基本的にスッポンを食べてもらう料理。「スッポンを、よりおいしく食べていただくためにフォワグラのコクをプラスしました」
5つめの「フォワグラ、ソラマメ」も、主役はあくまでソラマメ。フォワグラはその〝引き立て役〞と考えた。このなかでは、いちばん「現代」を意識しました、と髙橋さん。
最後は、「フォワグラ、マンゴー、パッションフルーツ、スパイス」。オーソドックスなテリーヌだが、スパイスとフルーツを合わせて、軽めに食べてもらいたいと考えた。
今回の6つの料理のコンセプトは、「フォワグラを現代風に」。フォワグラ=クラシックと思われがちだが、そんなことはないということを伝えたくて考えた、と髙橋さん。
髙橋さんには常連のゲストも多い。同じゲストに同じ料理は出せないから、常に新しい料理を考える必要がある。そのため、無意識のうちに、新作のためのアンテナを張り巡らせる。そんな髙橋さんのつのフィンガーフードは、見た目も味も、驚きに満ち、楽しさにあふれている。
フォワグラ…100g /トウモロコシのピューレ…100g/卵黄…2g /生クリーム…50cc /トウモロコシのアイス…30g /砂糖…適量/しょう油…適量/塩・コショウ…適量
焦げた感じがトウモロコシと合う。しょう油を加えるのもポイントです。
フォワグラの冷製フラン…15g /酒粕…3g /セロリラブのムース…15g /スダチと青リンゴとハチミツのジュレ…10g /カボス…1個/塩・コショウ…適量
フォワグラ…10 ~ 15g(1人分)/スッポン…1匹/キノコ…100g /ホウレンソウ…数枚/ニンニク…1/2片/バター…適量/白ワイン…30cc /塩・コショウ …適量/パイ生地…適量
スッポンにより深みを加えるために、フォワグラを合わせました。
フォワグラ…300g /赤ワイン…100cc /ルビーポルト…100cc /コニャック…30cc /塩・コショウ・八角 ・シナモン・クローブ・ナツメグ・ジュニパベリー ・コリアンダー・レモンの皮・オレンジの皮…適量/ブリオッシュ…適量/ブドウ…適量
フォワグラのテリーヌ…80g(1人分)/マンゴーとパッションフルーツのジュレ(マンゴー…1/3個、パッションフルーツ…1個)/スパイスのチュイル(薄力粉…120g、グラニュー糖…45g、塩…1.5g、水…150g、溶かしバター…6g、アニス・クローブ・シナモン・ナツメグ…適量)/ビスキュイショコラ…適量/塩・コショウ…適量
フォワグラとチョコレートって、素材の特徴が似ていると思うんです。それで、ビスキュイショコラをアレンジしてみました。
フォワグラのガナッシュ(ムース)(フォワグラ…125g、ハチミツ…25g、ルビーポルト…30g、水…30g、牛乳…30g、生クリーム…50g)/ソラマメ…50g /フォワグラのテリーヌ…少々/塩・コショウ…適量
主役はあくまでもソラマメ。アクセントにフォワグラを入れて、広がりと深みを出しました。
Yujiro Takahashi
1977年福岡県生まれ。大学卒業後、調理師専門学校へ。都内のレストランで修業したのち、2004年に渡仏。三ツ星の「ル ドワイヤン」や「ラミジャン」(ビストロ)、「メゾンカイザー」(ブーランジェリー)などで経験を積み、07年帰国。代官山「ル ジュー ドゥ ラシェット」のシェフを経て、15年に「ル スプートニク」をオープン。
山内章子=取材、文 依田佳子=撮影
本記事は雑誌料理王国2019年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2019年9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。