2025年秋、2回目となる「やまなしスイーツコンテスト」が開催されました。
山梨県産のフルーツを使ったスイーツのコンテストで、生菓子、焼き菓子、山梨県産ワイン使用の3部門があります。
焼き菓子スイーツ部門で、最優秀賞に輝いたのは、「モノリス」(東京・青山)シェフパティシエの中山麻未さん。コンテストと山梨県産フルーツについて、お話をうかがいました。
言わずと知れたフルーツの一大産地、山梨県。
ブドウ、サクランボ、モモ、スモモ、イチゴ、ブルーベリーなど、年間を通じて、種類豊富なたくさんのフルーツが実ります。
そんな『フルーツ王国』山梨県の魅力をもっと多くの方に知ってほしい。そんな思いから始まったのが、「やまなしスイーツコンテスト」です。
山梨県産のフルーツをスイーツに使ったコンテストで、2024年にスタート。好評だったことを受け、2025年に第2回が開催されました。
「やまなしスイーツコンテスト」は山梨県産フルーツ使用を条件に、以下の3部門があります。
いずれの部門もまずは一次審査があり、応募者の名前や勤務先を伏せて、純粋に作品にフォーカスした写真・レシピの書類による審査が実施されます。
2回目の「やまなしスイーツコンテスト」では44作品から15作品が最終審査に進み、10月21日に最終審査が行われました。
「やまなしスイーツコンテスト」最終審査では、コンテスト参加者は自身のスイーツを手に壇上に上がり、アピールポイントをプレゼンテーションします。そして、5人の審査員による厳正な試食審査が行われ、各部門とも、最優秀賞、優秀賞、審査員特別賞が発表されました。
焼き菓子スイーツ部門で最優秀賞を受賞したのは、「モノリス」(東京・青山)でシェフパティシエとして活躍する中山麻未(なかやままみ)さん。
受賞作品「果実の王冠〜山梨りんごと楓香の恵み〜」、そして山梨県産フルーツの魅力についてお話をうかがいました。

「私は山梨の隣県、静岡の出身で、山梨は遊びに行ったりして、よく知っているところです。また、身内がイチゴ農家をやっていることもあり、果物、ひいては食材にとても興味があります。
東京にもいろいろコンテストがありますが、お菓子そのものに焦点を当てたものが多い。一方、『やまなしスイーツコンテスト』は、フルーツという食材をお菓子でどう表現するかというもので、私にピッタリだと思いました。
自分の今の力を知りたかったのと、コンテストを通じて山梨のフルーツやお店の発信ができるといいな、と思ったのも応募した理由です。
『やまなしスイーツコンテスト』では、まずは山梨のフルーツをもっと知ろうと考えました。
山梨県は東京から近いので、思い立ってすぐに現地に行けるのもありがたく、道の駅や地元のお店を訪ねました。ネットで取り寄せたりもして、実際にフルーツに触れて味見をすることから始めました。
そうして、気になった農家さんにコンタクトをとり、農園を見学させてもらいました。百聞は一見に如かず。現場で得られる情報や知識は非常に大きかったです。
山梨県は、ブドウひとつとっても品種がいろいろありますし、年間を通じて楽しめるフルーツの種類が豊富。
加えて、こだわってフルーツに向き合っている農家の方が多く、刺激をたくさんもらいました。コンテストに向けてどのフルーツを使うか考えるのはむずかしくはあったものの、楽しくうれしい時間でした。」

「その中でアイディアが湧いてきて、焼き菓子スイーツ部門で応募したのが『果実の王冠〜山梨りんごと楓香の恵み〜』です。
王冠とはフランスの伝統菓子であるガレット・デ・ロワのこと。そこに山梨県産フルーツを合わせました。
このお菓子には、私のフランスで修業したときの感動が詰まっています。
1月6日のガレット・デ・ロワの習わしと、新年を新鮮なフルーツで祝う文化に心が躍り、その時の感激を山梨県産のフルーツで表現したいと思いました。」

「日本のフルーツのほとんどは、生で食べておいしさがしっかりわかります。山梨県のフルーツも素材自体のポテンシャルが高く、それだけで完成品です。
となると、フルーツによっては焼き菓子に使うと、せっかくのよさが十分に発揮できず、ちょっともったいない。
山梨県のブドウといえばシャインマスカットが有名ですが、そのままですでに十分においしい。
そこで、ドライフルーツを使うことにしました。シャインマスカットの干しブドウ、ドライシャインマスカットがそれです。粒が大きいので存在感がありますし、お菓子の味わいに奥行きを生み出してくれました。
スイーツにドライフルーツを使うときは、たいていの場合、リキュールやラムなどの洋酒に漬けて使うのですが、水で戻して活用しました。ドライシャインマスカット自体の味わいをダイレクトに表現したかったからです。また、水で戻すことでふっくらとした程よいやわらかさを持つ食感になり、食べたときに心地いいアクセントになります。」

「『果実の王冠』には山梨県産リンゴの焼きリンゴも使っています。干しブドウとリンゴは相性抜群です。リンゴは焼きリンゴにするととろけるような食感になり、ややもするとフルーツ感がわかりづらくなりますが、果物の食感はドライシャンシャインマスカットがしっかりと担ってくれました。
リンゴを使うのも、山梨の農家さんを訪ねたときに閃いたものです。味は問題ないのに赤く色づかないため出荷できないリンゴを見て、焼き菓子であれば利用できる、と思いました。
また、ドライシャインマスカットと焼きリンゴのつなぎ役として、稀少な「早川町の楓シロップ」を選びました。
このような山梨県産のフルーツ、クレーム・ダマンドのフィリングとのバランスを考えて、フイユタージュはオルディネールではなくアンヴェルセにしました。バターでデトランプを折り込むこの製法はバターの豊かな風味とサクサク感がより増し、果実感やクレームのコクとのコントラストが明確になって、メリハリの楽しめる一品になったと満足しています。」

実は中山さんは、山梨県産ワインを使用したスイーツ部門にも、「Parfait au Parfum 〜弾けるサンシャインレッド〜」で応募しました。
こちらは、山梨県が世界に誇る「グレイスワイン」とネーミングにもある「サンシャインレッド」を使用したリッチなパフェです。
「サンシャインレッド」は、シャインマスカットとサニードルチェのかけ合わせで生まれた、山梨県のオリジナル品種。大粒、種がなく皮ごと食べられ、フローラルな香りと日本のブドウでは珍しい赤い果皮も特徴です。
中山さんの作品「Parfait au Parfum 〜弾けるサンシャインレッド〜」でも、そのよさが存分に発揮され、赤い色が放つ華やかな見た目は、強い印象を残します。
洋菓子店でキャリアを積み、現在はレストランでデセールを担当する中山さん。
複眼的な視点がフルーツを使ったお菓子作りのアイディアを豊かにし、足し算したり引き算したりアプローチのバランスが優れているのは言うまでもないでしょう。
さらに、中山さんはお客さまと接するときに心がけていることがあります。それは、文化も伝えるということ。
お菓子のベースとなっているフランスの食文化はもちろん、山梨県についても然り。
山梨県は歴史と文化が豊かなところです。
今回の作品はどちらもお店でも提供。「Parfait au Parfum 〜弾けるサンシャインレッド〜」では山梨にちなんだ器を選ぶなどし、こういったことからお客さまとの会話が弾み、フルーツをはじめ山梨に話題が及ぶことも少なくないそうです。

中山さんは、「やまなしスイーツコンテスト」応募にあたり、山梨県が主催している「県産フルーツの活用技術向上」セミナーにも参加しました。
第一線の現場で働くシェフが登壇し、ここで得た山梨県産フルーツや、フルーツをスイーツに応用するときの考え方が、大いに役に立ったと言います。
山梨県では他にも、パティシエやスイーツ店舗向けのセミナーを準備し、裾野を広げ、人材を育成する取り組みを行い、モノやイベント、だけでなく、コトも通じて、山梨県のフルーツを伝える活動をしています。
生で食べてよし、スイーツにしてよし、そして知ればもっと味わいが増す。
中山さんが語ってくれた山梨県のフルーツは、どこをとっても奥深い魅力に溢れています。

中山麻未(なかやままみ)
静岡県出身。2011年より「アニバーサリースイーツハピネス」(静岡県長泉町)にて、製菓の基礎から応用までを学ぶ。2019年、「パリセヴェイユ」ヴェルサイユ支店にて研修。フランス滞在中に訪れた「タイユヴァン」でのデセールに強い感銘を受ける。2020年から「ジョエル・ロブション」(東京・恵比寿)にてデセールを中心に研鑽を積み、 2022年より「モノリス」(東京・青山)にてシェフパティシエを務める。
「モノリス」
東京都渋谷区渋谷2-6-1 平塚ビル1F
https://neo-monolith.com/
やまなしスイーツプロジェクト
https://y-terroir.pref.yamanashi.jp/sweet-project
やまなしスイーツ手帖
https://hq.pref.yamanashi.jp/yamanashi-sweets-note/
山梨県観光振興グループ美酒・美食(公式)
https://www.instagram.com/yamanashi_bishubishoku/
text: Noriko Hane, photo: Hiroyuki Takeda
