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ヌーベル・キュイジーヌの鬼才「アラン・サンドラス」からはじまる。フランス料理の輝かしい系譜


三ツ星をミシュランに返上したビストロノミーの発案者

3つ目はミシュランへの挑戦。2005年、サンドランス氏はパリの高級老舗三ツ星店「ルカ・カルトン」をいきなり「リーズナブルな美食店」に改装し、フランスの料理界を騒めかせた。その日、「ムッシュ」は30年近く保持した三ツ星をミシュランに「返した」。

ひとり100ユーロのリーズナブルな食事は大ヒットし、店の売り上げは3倍に増した。ヒラメでなくサバ、仔羊はカレ(あばら)でなく肩肉。新「ルカ・カルトン」は高級食材の代わりに安くておいしい食材を食べさせる。実に、今日の「ビストロノミ―」の前身だ。

この系譜の次の世代は戦後に生まれたアラン・パッサール氏だ。パッサール氏、ピエール・ガニュエール氏、ミシェル・トロワグロ氏、アラン・デュカス氏、つまり戦後50年代生まれの著名な三ツ星シェフの中で、アラン・パッサール氏は独特な立場にいる。

彼はメンバーの中で唯一、パリ以外に店を持たない。他のシェフたちは東京や香港などに店を開いたが、彼はパリに1軒だけだ。「弟子たちと一緒にいたいから、他の街にレストランをオープンしないんです。調理場に何時間も立ち、弟子たちに素材の選び方や切り方、手の動かし方、正しい動作のひとつひとつを見せることが、グランシェフの仕事だと思っています。それが楽しい」と語るパッサール氏。

彼は15年ほど前、自分の料理が限界にきたことに気付いた。肉のロースト職人として腕を磨いてきたが、肉を使い尽くした感じがしたのだ。

「赤ビートのタルタル」。パッサール氏の「野菜時代」の代表的な料理のひとつ。牛肉を赤ビートに置き換え、野菜とは思えない歯応えを表現している。

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