● 製造者:ジーナ・エ・ソフィア社
● 原材料:プーリア産デュラムセモリナ粉と大麦(割合は4:6)
● 製造方法:3人の女性の手作業中心で作るパスタ。圧搾機から出てきた麺を女性たちが手作業で切るので不揃い。でき上がったパスタは、工房内で約2日間、自然乾燥させる。
まるで日本そばのような色。これは大麦をブレンドしたパスタで、プーリア州レッチェに特有だ。プーリア州の丘陵地帯は硬質小麦の産地として有名だが、平地のレッチェ近郊は、大麦が主な穀物だ。そのためレッチェでは、大麦の配合が多いパスタを昔から食してきた。「リッチョリ」は「巻き毛、カール」を意味し、この地方で伝統的な手作りパスタの形のひとつ。
「オステリア・ヴィンチェロ」の齋藤克英さんが使う乾麺は、レッチェ出身のイタリア人と一緒に設立したパスタ工房、ジーナ・エ・ソフィア社のパスタだ。オリジナルの手打ちに倣って、手作業中心でパスタを作る。でき上がった製品は網の上に広げ、工房内の常温で2日間乾燥させる。季節によって乾燥具合も違うため、ゆで具合は目と舌が頼りだ。このパスタは田舎そばのようにポソポソとした食感があり壊れやすいので、湯を沸騰させず、やや低めの温度でゆでる。パスタは最初水を吸って濃い小豆色に変わり、さらに加熱して外側がグルテン網でコーティングされると白く変化する。「表面につるんと艶が出てきたら完成です」。素朴なパスタは、麺だけで食べても大麦独特の香りと香ばしさが楽しめるが、やはり郷土定番のソースで。粉は違っても、どこか日本の田舎で出合ったような情緒を感じる麺だ。
①調理前のリッチョリ。ゆで時間の目安は10分だが、あくまで目安。ゆで具合は目と舌で確認する。
②湯は沸騰させすぎず、低い温度で小さな泡がフツフツする状態をキープ。麺の表面に白い膜がはってきたらやさしくほぐす。
③パスタの色が濃くなってきたら半分程度火が通った証拠。
④さらにゆでると表面が白っぽく変 化する。表 面が徐々にコーティングされつつある。
⑤麺の表面に艶が出て、つるんとしてきたら完成。このパスタにアルデンテは不要。躊躇せず、しっかりとゆできる。
ポルペッティーノ、揚げ茄子とトマトソースのリッチョリ
プーリア州でよくある素材の組み合わせ。ひき肉の団子(ポルペッティーノ)、揚げナスの組み合わせは、庶民の腹を満たすボリュームたっぷりのパスタ。カチョ・リコッタは、牛乳のリコッタチーズを塩漬け、乾燥させたもの。トマトソースと一緒にパスタを噛むと、大麦の香ばしい風味がふっと香る。プーリアでは、魚介のソ ースと合わせて食べられることも多い。
オステリア・ ヴィンチェロ
齋藤克英さん Katsuhide Saito
1967年東京生まれ。ウンブリア州ペルージャで修業。イタリア在住中に出会ったイタリア人と共同でイタリアワインや食品の輸入ビジネスを展開中。日本産食材の輸出にも着手。
本記事は雑誌料理王国第183号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第183号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。