食物アレルギーとは?食品事業者が気を付ける5つのこと


知らないと怖いアレルギー

アレルギーとは、有害なものから体を守るための免疫が、食べ物や花粉など、無害なものに対して反応することによって起こり、ぜん息や皮膚炎、花粉症など人によって原因や症状は大きく変わります。何てことない物質が体に悪影響を及ぼす可能性があり、決して無視することはできません。

食物アレルギーとは

アレルギーはその原因物質によって、花粉症やラテックスアレルギーなどがあり、特定の食べ物を喫食することで症状が現れるのが食物アレルギーです。
食物アレルギーは、実際に食べる以外にも、原因食材と同じ設備で調理された食品を食べただけでも発症する場合があり、食中毒や異物同様注意が必要です。

アレルギーを起こす物質「アレルゲン」

アレルギーを引き起こす物質をアレルゲンといい、食物アレルギーであれば、原因食材のタンパク質がアレルゲンになることが多いです。

アレルゲン割合のグラフ
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アレルゲン情報は表示の義務がある

容器包装された加工食品は、食品表示法によりアレルギー物質の表示が義務づけられています。

法令で規程している特定原材料7品目

アレルギー患者が多い「乳、卵、小麦、えび、かに」と、重篤な症状に至ることが多い「そば、落花生(ピーナッツ)」の7品目は特定原材料に指定されており、必ず表示しなくてはいけません。

特定原材料
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表示を推奨する特定原材料21品目

表示義務はありませんが、特定原材料に準ずるものとして、以下の21品目は可能な限り表示をするよう推奨されています。

「アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、ゼラチン、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご」の21品目が、特定原材料に準ずるものとして表示を推奨されています。

特定原材料21品目

なお、上記の食物アレルギー表示対象品目は日本での基準となります。海外では、トマトやマスタード、亜硫酸塩などが表示対象品目となる場合もあるので、海外展開を考えている事業所はその国のアレルギー表示義務を確認し従いましょう。

最悪の場合は死亡する場合も

アレルギー表示を怠り、誤ってアレルゲン食品を喫食してしまうと、じんましんやむくみ、咳、嘔吐、腹痛、下痢などの症状が現れます。最も重い症状がアナフィラキシーショックで、血圧が下がって意識が遠のき、最悪の場合は死亡する可能性もあります。
アレルギー情報は必ず消費者に届くように発信しなくてはいけません。

食物アレルギー事故を起こすと・・・

食物アレルギー事故が発生してしまうと、会社は社会的、金銭的なダメージを負います。
過去には、食品ではないですが、石鹸にふくまれる小麦成分によって2,000人以上の人が小麦アレルギーを発症し、関連する3社が解決金として合計 約1億1600万円を支払うことになった事例もあります。

製品回収

事故が起きた場合はもちろん、実際に事故が発生しなくても、アレルギー情報の表示ミスにより、製品回収になった例が非常に多くあります。
回収には莫大な経費がかかり、会社の信頼度にも傷がつきます。
事故や表示ミスを発生させないことが第一ですが、製品回収をしなくてはいけなくなった時に迅速に回収ができるよう、あらかじめマニュアルを作成しておきましょう。

食物アレルギー事故を起こさない対策は「つけない」のみ

食中毒予防の3原則は、「つけない」「増やさない」「なくす」ですが、アレルゲンは化学物質のため、増殖することはなく、また、一度付着したアレルゲンは加熱や薬剤、すすぎなどでは除去することができません。
そのため、食物アレルギー事故を防ぐには、いかに他の食材にアレルゲンをつけないかが重要になります。
本記事では、アレルゲンをつけない対策として5つのポイントを説明していきます。

1. 原材料の取り扱い

1つ目のポイントは「原材料の取り扱い」です。
アレルゲンは、原因となる食品中に含まれているので、食品同士を接触させないことが重要になります。

受け入れ時

受け入れ時には必ず原材料表示を確認し、アレルゲン食品とそうでない食品を別々に受け入れるようにしましょう。また、アレルゲン食品とそうでない食品が同じトラックで混載されて到着する場合は、運搬中に食品同士が触れ合う可能性があるので、注意が必要です。特に、小麦やそば粉などの粉体は、密閉空間内に充満し、他の食品に付着するおそれがあるので、特に気を付けましょう。

パレットの色分け

保管時

アレルゲン食品と、そうでない食品は分け、中身が漏れ出さないように密閉容器に入れて保管してください。誤使用を防ぐため、アレルゲン食品にはマーキングやタグ表示などを行い、中身が明確に分かるようにしましょう。
アレルゲン食品とそうでない食品を同じ場所で保管する場合は、アレルゲン食品の下にアレルゲンを含まない食品を置かないようにしてください。
牛乳とチーズなど、同じアレルゲン食品は一緒の場所に保管しても問題ありません。

アレルゲン食品の保管場所

仕入れ先との情報交換

仕入れ先から、原材料にアレルゲンを含んでいるかどうかの保証書を取得し、仕入れ先がアレルゲン管理を実施しているかを確認をしておきましょう。特に、仕入れ先の変更時には注意が必要です。

再生原料の取り扱い

再生原料を使用する場合は、アレルゲンが含まれていることを明確に表示し、専用エリアに保管して誤使用を防ぎましょう。再生原料の管理が難しい場合は、すべて廃棄し、再生原料を使わないという選択も大切です。

2. 製造時の注意

2つ目のポイントは、製造時の注意です。製造時は、アレルゲン食品と含まない食品が接触を起こしやすいです。動線や製造スケジュールなどを管理し、アレルゲン食品と含まない食品が同じ場所に置かれないようにしましょう。

色分け管理(カラーコントロール)

汚染区と清潔区のように、アレルゲンを含む/含まないで機器やラインなどを色分けをすることで、交差接触を減らすことができます。色分け管理は製造時に限らず、保管時や出荷時にも非常に有用です。食品に触れた従業員を介してアレルゲンが付着する可能性もあるので、作業着を色分けし、製造ラインには特定の色の人だけが入れるようにすることも良い管理方法でしょう。

帽子の色分け

製造スケジュール

アレルゲンを含む製品とそうでない製品はなるべく異なるラインで製造するのが好ましいですが、同一のラインで製造する場合は、先にアレルゲンを含まない製品を製造し、その後にアレルゲンを含む製品を作るようにしましょう。また、ライン変更や洗浄作業を最小限にするため、アレルゲンを含む製品はできる限り一度に製造するとよいです。

3. 洗浄作業の徹底

3つ目のポイントは、洗浄作業の徹底です。一度付着したアレルゲンは加熱や薬剤では除去できず、唯一洗浄でのみ除去することができます。アレルゲンをつけないことが最重要ですが、付着してしまった場合、洗浄作業が食物アレルギー事故を防ぐ最後の砦となります。食品が直接触れる機械器具はもちろん、アレルゲンが付着するおそれのある、床なども確実に洗浄作業を行いましょう。洗浄時にアレルゲンを広げないために、他のツールと色分けをした専用の洗浄ツールを用意することをオススメします。また、確実な洗浄を行うために、作業手順書を作成し、従業員に周知徹底させましょう。

ヴァイカンブラシ

洗浄の検証

アレルゲンは目視では確認できないので、正しく洗浄されているかの検証が必要になります。
検証方法としては、『ルミテスター』などの残留ATPを測定する機器を使うことで、アレルゲンが残っていないかの代替確認ができます。https://www.youtube.com/embed/m2L2hu7coag

4. アレルギー情報の表示

4つ目のポイントは、アレルギー情報の表示です。製品にアレルゲンが含まれている場合、アレルギー情報を表示しなければいけません。食品表示法に基づき、特定原材料7品目は必ず表示し、可能であれば特定原材料に準ずる21品目の表示も行いましょう。また、パッケージと中身が一致しているか、表示の印刷ミスはないかなどもチェックしてください。特に、製品の原材料などを変更した際はアレルギー情報に変更がないかを必ず確認しましょう。

アレルギー表示の印字例

5. 従業員教育

5つ目のポイントは、従業員教育です。どれだけアレルギー対策がなされ、マニュアルがしっかりと作られていても、実際に作業するのは現場の従業員です。従業員が「少しくらいいいや」と判断したことにより、食物アレルギー事故は発生します。なぜアレルギー対策をしなくてはいけないかを従業員に落とし込み、ルール厳守を徹底させてください。
新人が入ってきた時はもちろんですが、1年に1度など定期的にアレルギーに関する勉強会を行い、常に危機感を持って仕事に取り組める環境を作りましょう。

記録と見直し

以上、5つのポイントを紹介しましたが、それら5つに共通してやるべきことが、記録と見直しです。洗浄作業はきっちり行ったか、原材料の受け入れ時は食材を分けて受け入れたかなどを記録に残します。また、記録は定期的に見直し、基準の逸脱が多い場合は運用方法を改善する必要があります。
ルールを作っておしまい、実行しておしまい、ではなく、必ず確認、改善をしてPDCAサイクルを回してください。

まとめ|アレルギー対策をして、おいしい安全な食品づくりを

アレルギーは食中毒同様、事故を起こさないための管理が必要です。
アレルゲンを「つけない」衛生管理と消費者への適切な情報発信を行い、安心安全な食品づくりを行いましょう。


記事提供元

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