【私が東京イーストエリアを選んだ理由2】西大島「クチーナ シゲ」


イカスミを練り込んだラビオリを甲殻類のソースに合わせた一品。皿の中で多彩な海の幸が見事なハーモニーを奏でる。>>ページ下部にレシピがあります。

麻布十番「ヴィノヒラタ」のシェフとして腕を振るっていた石川重幸さん。2010年に大島で開いたこの店は、生まれ育った自宅を改装したものだ。勝手知ったる我が町ゆえ、地元のイタリア料理に対する意識が都心部とまるで違うことは重々承知。だが、「イタリアの地方料理が好きで、気軽に食べてほしいと願う自分の店は、都心部よりも下町のほうが合っているのではないか」という思いもあったそう。

ランチは980円で提供し、夜のコースも2800円から。値段は地元の目線を意識した、利用しやすい設定だ。一方、スタイリッシュなインテリアで統一された店内は、下町の気安さを排したモダンで落ち着いたしつらえ。料理もアラカルトを多数揃えるが、ポーションはあくまでもひとり用。そこには、気軽な利用
を望むとはいえ、レストランとして譲れぬ一線がある。

それでも、時には大皿料理を楽しむ感覚で来店するグループ客もいる。「そんな時は小皿に取り分けてから提供するなど、リストランテ風にアレンジするんです」と石川さん。

お客の意向に耳を傾け、柔軟な対応をすることで、店の品格はしっかり
と保つ。石川さんの腕をかねてから知る遠来の客と、地元客の双方に愛
される秘訣は、そこにある。

私がこのエリアを選んだ理由

①実家の建て替えと独立開業のタイミングがうまくマッチしたため。

②イタリア料理をくだけたスタイルで提供しやすい土地柄であること。

③いい仕事さえしていれば多少遠くても足を運んでもらえるはず、という期待。


【レシピ】ラビオリ アペルト

地ハマグリむき身…7個/赤座エビむき身…1尾/ホタテむき身…2個/ヤリイカ輪切り…3切れ/タイムの葉…3g /エシャロット…10g /トマトソース、イタリアンパセリ、プチトマト、地ハマグリの汁、塩、白コショウ、E.V.オリーブオイル…各適量/ニンニク…1片/パスタ生地…1枚(注1)/緑のパン粉…適量(注2)

注1:パスタ生地はセモリナ粉600g、卵黄100g、全卵120g、イカスミ5g、水50gを混ぜてこね、2mmにのばし、縦15cm×横10cmに切り分ける

注2:緑のパン粉はイタリアンパセリ
80g、ソフトパン粉160g、ニンニク1片、塩8g、E.V.オリーブオイル40gをロボクープで混ぜ細かくする

1.フライパンにスライスしたエシャロット、タイム、軽くつぶしたニンニクを入れ、E.V.オリーブオイルで炒める。

2.エシャロットがしんなりしてきたら、地ハマグリの汁、トマトソースを入れ、一度煮立たせる。

3.2の中に地ハマグリ、赤座エビ、ホタテ、ヤリイカを、火の通りにくい順に入れる。

4.同時に、別の鍋でゆでたパスタ生地を入れて馴染ませながら火にかけ、プチトマト、イタリアンパセリを入れて仕上げる。

5.皿の真ん中にパスタ生地を置き、中心に具を盛り付け、具を覆うようにパスタ生地を折り曲げ、その上から残りのソースをまわしかけ、緑のパン粉を添える。

石川重幸さん
1973年東京都大島生まれ。「クチーナヒラタ」を経て渡伊。「マドニーナ デル ペスカトーレ」などで3年間の修業後帰国、「ヴィノヒラタ」のシェフに。2010年に独立。

小久保敦郎=文 北村美和子=写真

本記事は雑誌料理王国2012年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2012年8月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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