【漲る!地方食材】長崎県諫早市「ホワイトアスパラガス」


暗幕で光を遮断することで軟白させた、光り輝く工芸品

国産ホワイトアスパラガスの収穫は、ハウス栽培も露地ものも2月中旬から初夏までが一般的だ。ところが、10月中旬まで長期間出荷している工房がある。長崎県諫早市にある九州フードブリングだ。

アスパラガスにはグリーンアスパラガスとホワイトアスパラガスがある。ともに同じ品種だが、萌芽後、そのまま成長させたのがグリーン。土をかぶせ、遮光して軟白させたのがホワイトである。

「10年ほど前、より効率的に長期栽培できないものかと考え、ハウス内を映画館のように真っ暗にすることにしました」と語るのは九州フードブリング代表の増山俊幸さん。

アスパラガスは微量の光や温度変化に影響されやすく、ハウス内に4重の暗幕を掛けることでホワイトアスパラガスの栽培に成功。工芸品のように光り輝くことから、「ながさきパールホワイトアスパラ」と命名した。「アスパラガスは、夏から秋にかけて土中の養分を根部に蓄え、春先から若芽を出します。弊社では牛糞や鶏糞、魚かすなど、独自の有機肥料、名水百撰にも選ばれた轟峡の水を与えることでおいしいホワイトアスパラガスを収穫しています」

夏場に、緑化しないアスパラガスの収穫は不可能とされてきた。だが、増山さんは特殊な方法で夏でもホワイトアスパラガスを出荷している。収穫後も穂首が光を浴びると変色する。そのため光や温度に細心の注意を払い、束ねた穂首にテープを巻いたものを鮮度保持フィルムに詰める。収穫したその日に出荷することで鮮度のよい状態で提供している。

【ほわいとあすぱらがす】

ユリ科の宿根性植物。マツバウドとも呼ばれる。漢名は石刀柏、龍髪菜。南欧原産で、古代ローマ時代から食されてきたとされる。フランスやドイツでは、野生のアスパラガスを鎮痛剤など薬用として利用していたが、侵入してきたローマ軍に教えられ、食べるように。以来ヨーロッパ全域に栽培が広がったといわれる。今では春を告げる野菜とし珍重され、アスパラガスを立てたままゆでる専用の鍋もある。日本で食用とされた始めたのは明治以降。大正末期、北海道で缶詰加工用にホワイトアスパラガスの栽培が盛んになった。播種後、5年ほどで成株になり、3年目ぐらいから15〜20年間収穫できる。

増山さんがホワイトアスパラガスの栽培に着手した当初、二重の暗幕でハウス内を覆った。肉眼では真っ暗。照度計で測っても数値はゼロだったが、アスパラガスは薄緑色に変色した。わずかな光でも光合成をすることがわかり、暗幕を四重にしたところ、真っ白なアスパラガスにな った。「土中から出た若芽は約4日でこのサイズになります。夏は肉眼で成長を確認できるぐらい伸びるのが速いんです」と増山さんは語る。

中島茂信・文 吉富高司・写真

本記事は雑誌料理王国2011年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2011年5月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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