【漲る!地方食材】岩手県・藤沢市「飼料米法牧牛」


地元農家が栽培した飼料米を食べて健康に育った自然児

土の上で放牧されている豚がいる。どの豚も元気に歩き回っているせいで、全身土まみれ。

「豚は寒さには強いのですが、暑さには弱いんです。涼しい時にエサを食べ、暑くなってくると小屋の中で寝転んでいます」と話すのは、岩手県東磐井郡にある館ヶ森アーク牧場社長の橋本晋栄さんだ。

館ヶ森アーク牧場では、2001年に放牧豚を始めた。07年、世界的なバイオエタノール・ブームの影響で飼料価格が上昇。片や、日本の農地は減反政策で荒れ果てていた。橋本社長は地元農家に農薬の使用を控えた飼料米の栽培を提案。08年、休耕田で育てたその飼料米を放牧豚に与えるという新しい試みを開始した。そして10年、麦類やサツマイモの中に、飼料米を30%混ぜたエサを与えた豚を「大地の米豚」と命名、新ブランドとして立ち上げたのだ。 

通常、豚は生後約6カ月で出荷する。だが、大地の米豚は生後4カ月頃から約3カ月間放牧するため、カロリーを消費して脂がのりにくいことから、ひと月ほど長く飼う。それにより肉が締まり、モモが張ってくるという。

「トウモロコシは与えていません。安価で栄養価は高いのですが、脂身にトウモロコシ特有の色が残るからです。米を食べると脂肪が白く甘くなるだけでなく、トウモロコシ主体飼料の豚肉と比べ、オレイン酸を多く含んでいるのが特徴です」

オレイン酸にはコレステロールを下げる効果があるといわれている。大地の米豚はおいしいだけでなく、健康にもいい肉といえるだろう。 

東京ドーム24個分の牧場内に放牧豚用の豚舎が12棟点在する。

【しりょうまいほうぼくとん】

バブコック・スワイン種(米国系の12品種をかけ合わせた、多重交雑のハイブリッド豚)と中ヨークシャー種を人工交配させた品種。放牧で歩き回り脂がのりにくいため、のりやすい中ヨークシャー種をかけた。飼料は農薬の使用を控えた岩手県産飼料米が30%、そのほかに大麦、小麦、サツマイモ、タピオカなどを使用。当初、飼料米の配合率が50%と30%のエサを与えていたが、試食会を開いてアンケートをとったところ、配合率30%の豚肉が支持された。その結果を受けて2010年、飼料米を30%与えた放牧豚を「大地の米豚」のブランド名で販売開始。おいしいだけでなく、栄養価にも優れた豚肉の生産を実現した。

中島茂信・文 藤田修平・写真

本記事は雑誌料理王国2011年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2011年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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