「乾物」は、奥深い中国料理の知恵のひとつ。もし、その知恵と技を中国料理以外のシェフが活用したら――。料理の可能性は格段に広がるだろう。中国料理の伝統に正面から向き合い、手間のかかる乾物使いにもこだわる田村亮介さんに、初心者でもわかる乾物使いについて聞いた【第三弾】!
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厨房内につるされたハモの乾物や豚バラ肉。田村さんの中華風干し肉は自家製だ。仕入れた乾物を絶妙のタイミングで戻す一方で、肉や魚の乾物も自分たちで作り、一途に「旨さ」を追求しているのだ。
ハモの乾物は骨切りして1週間ほど干して完成。薄く切って出汁を取る際に使い、このほか、ウナギやアナゴの乾物も作っているという。「中華風干し肉の味付けは、塩と山椒や自家製の醤油ダレのほか、豆板醤やトウガラシでスパイシーに仕上げることもあります」。2週間ほど乾燥させた中華風干し肉は、蒸してそのまま食べることもあれば、食材として調理することもある。生の食材を、わざわざ乾物にし、それを再び戻して使うのだ。
味付けしてから冷蔵庫で3日ほど寝かし、あとは風通しのよいところに2週間ほど干して仕上げる。煮込み料理に使えば、メイン食材としてだけでなく、出汁の元にもなる。ただし、この干し肉を仕込むのは、腐敗する危険性の少ない冬場と決めているそうだ。
「実際、中国でも作られるのは12月。中国ではこの干し肉を腊肉(ラーロウ)と呼びますが、腊月(ラーユエ)は旧暦の12月を指します。12月に乾燥して作るためにこう呼ばれ、昔から冬の保存食として重宝されました。また旧正月『春節』のための食材としても欠かせない。福を呼ぶ食べ物なんです」
さほど手間なく作れる自家製干し肉は、スパイスをアレンジすれば、他ジャンルの料理にも活かせそう。