ビーツは「食べる輸血」とも呼ばれ、ビタミンやミネラルが豊富なスーパーフードだ。特筆すべきは赤色のベタシニアンというポリフェノールと天然オリゴ糖、食物繊維の豊富さ。その他にも、ベタイン、エヌオーといった、他の野菜には含まれない、女性に嬉しい栄養素の宝庫である。ヨーロッパでは昔から健康によい野菜として知られており、実際に、食べた翌日から変化を感じる人も多い。古代ローマ人が発熱や便秘の治療に使ったいう記述も残されており、ロシアでは「ビーツがあれば医者いらず」と言われるほど。生でも加熱しても美味しく楽しめるが、何より、加熱しても栄養が減らないというありがたい野菜でもある。ロシアのボルシチが有名なことから、寒い地方の野菜と勘違いされがちであるが、実際には春播きと秋播きの年二回収穫が可能。インドや中南米、日本では奄美や沖縄といった温暖な地域でも収穫されている。
ビーツは、甜菜(砂糖大根)の赤色バージョン!
ビーツに含まれる糖分は「ラフィノース」と呼ばれる天然オリゴ糖。これは甜菜糖の原料でもある「ビート(SUGAR BEET)」の仲間で、砂糖大根とも呼ばれるが、どちらかというと外見はカブに似ており、根の部分に蓄えられている糖分から砂糖が 作られる。分類上はほうれん草と同じヒユ科に属しており、これはビーツとも同じ。18世紀に、甜菜の甘い汁といわゆる砂糖とが同じ成分であることを発見したドイツ人の科学者により、精製が始まったのが最初である。また、甜菜の葉の部分は畑の緑肥として、根の部分の砂糖の絞りかすは牛の餌としても活用されるケースも多く、捨てる部分のないサステナブルな植物であると言える。
ビーツは葉も食べられる
日本では運搬の問題もあり、葉付きのビーツが出回ることは少ないが、旬の時期に 出合ったらぜひ葉を試していただきたい。葉脈は太く赤く、ポリフェノールたっぷり。ほうれん草を濃厚にしたような味わいだ。生でサラダにしても、炒めても、スープにもいい。ロシアでは夏の収穫時に塩漬けにして乳酸発酵させるなど、余すことなく活用するのが定番だそうだ。
edit&text 𠮷田佳代 photo 公文美和 illustlation かけひろみ 協力 キューサイ、いしづあきこ、はるか農園、ファームベジコ、omefarm
本記事は雑誌料理王国2020年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。