徳島大学発、昆虫食ベンチャーの挑戦


安心安全安定の食用コオロギ供給を目指す
徳島大学発、昆虫食ベンチャーの挑戦

海外では広く受け入れられている昆虫食。日本では抵抗を持つ人が多い印象だが、今年に入り、今までのマイナスなイメージを塗り替えつつある。この流れの中で、昆虫食ベンチャーの「グリラス」は、食用コオロギの生産体制強化に乗り出した。

グリラス「食用コオロギ」

次世代タンパク源として
なぜコオロギが注目されているのか

新たな食品として昆虫食を支持する動きが、世界的に活発化している。2018年からEUの欧州食品安全機関は、食用昆虫をNobel Foodとして承認し、自由に取引ができるようになった。SDGsの観点でも、欧米では昆虫食が当然のように語られている。そんな中、次世代タンパク質として注目を集めているのがコオロギだ。実は高タンパク低糖質の理想的な食材で、鉄分やビタミン、食物繊維も含まれる。気になる食味は「エビのような旨みがある食材」と捉えれば間違いないそう。日本でも今年に入り、無印良品が発売した「コオロギせんべい」や昆虫食レストラン「ANTCICADA」の「コオロギラーメン」が話題になった。その原料となったコオロギパウダーを供給したのが、食用コオロギの養殖と育種を手掛ける徳島大学発のベンチャー企業「グリラス」だ。食用昆虫の中でも、なぜコオロギに注目したのか。

「これから日本でも昆虫食マーケットは拡大していくはずです。そのためには、我々のようなサプライヤーが供給体制を整え、安全性や品質を担保した素材を量産していかなければなりません。養殖生産の観点で見ると、コオロギは雑食性 なので他の昆虫と比較して育てやすい。カイコは桑しか食べず、イナゴは稲しか食べませんからね。量産しやすく、なおかつ味がいい。それがコオロギです」(グリラス代表取締役社長兼COO 岡部慎司さん)
グリラスが養殖しているのは、フタホシコオロギという品種。収穫時には体長1.5~2cmになり、他のコオロギと比較するとやや大きめ。性格が穏やかで、虫独特の匂いが少ないそう。そして最大の特徴は眼にある。「野外にいる一般的なコオロギは黒い眼をしていますが、弊社では白眼のフタホシコオロギだ けを飼育しています。仮に黒眼のコオロギが紛れ込んだら、潜性(劣性)遺伝である白眼のコオロギはやがて淘汰される。つまり弊社のコオロギは完全に室内で飼育され、野外から他のコオロギが入り込んでいないことを証明できるのです」

昆虫食マーケットの拡大に備え
生産体制を強化していく取り組み

食品としての安全性を満たすことやトレーサビリティが重要になることに加え、安定供給も求 められる。そこでグリラスは、トヨタ自動車グループの部品大手「ジェイテクト」と業務提携し、自動飼育システムの開発に着手。量産体制を整え、パウダー以外の原料加工にも力を入れていく。アレルギー表記の承認が下りていないことなど課題もあるが、食用コオロギのリーディングカンパニーに対する期待は今後さらに拡大しそうだ。

text 馬渕信彦

本記事は雑誌料理王国2020年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする