食の未来が見えるウェブマガジン

10年後も愛され続けるバルであるために!プロのコンサルタントによるバル運営法(後編)


バルの店主たちが抱えている悩みを、飲食店舗を数多くプロデュースする相原一雅さんが診断。解決への糸口を探るとともに、長く愛されるバルの運営法を考えていきます。

前編はこちらから!
https://cuisine-kingdom.com/daisukehaga/

ビアンカーラ 小平尚典さん

駅前の好立地を活かし高級住宅地でリピーターをつかむ

Q1 リピーターを増やすにはどうしたらいい?

お客の50%はビオワインファンと、しっかりと固定客をつかんでいるものの、平日の集客状況に波があるのが目下の悩み。そこで、もっと地元リピート客を増やしたいのだが、地元客は必ずしもビオワイン好きとは限らない。

A.確かに、目的客と違って地元客ならば、帰りがけにぶらりと立ち寄ってくれる可能性が高いですから、地元リピーター客の比率を高めることは大切です。

そのためには、まず、小平さんがこういう店をつくりたいという熱い信念を持つこと。その思いが必ずお客を呼び込みます。次に店側から情報を発信しファンを作ること。たとえば、店で季節ごとにハロウィンやクリスマスなどのイベントを催す。そして何よりも重要なのが、ビオワインはお客への啓蒙活動が欠かせないということ。お客を育てないとリピーターはつきません。たとえば、ビオワイン講座を開く、フランスのビオワインツアーを企画するなどです。 

ワインは人を構えさせる飲み物です。ましてビオワインならなおさら。いくらビオワインファンの多い店でも、初心者でもオーダーしやすいグラスワインは切らさないようにし、初心者向けのテイスティングセットなどを作るのもいいでしょう。売上アップにつながるメリットもあります。ワイン通でもビオを知らないお客には新鮮ですよ。

Q2 ツイッターを使って営業するときの注意点は?

現在、販促活動のひとつとしてツイッターで「これから○○のボトルを開けます」などとセールストークを頻繁につぶやいている。おかげで、これを読んだお客がわざわざ飲みにやってくることも多い。ただ、お客への返信は必要なのかなど、ソーシャルネットワークのうまい使い方がよくわからない。

A.ツイッターなどのソーシャルネットワークの魅力は折々の感情をつぶやくことにあるのかもしれませんが、商業利用の場合は安全最優先で、「○日から新商品が登場します」など店の広告情報だけを発信することをお勧めします。うっかり「僕は○○が好き」「○○してうれしかった」などとつぶやくと、その言葉の一部だけが独り歩きして炎上、などという事態を招きかねません。ネットは不特定多数の人々の目にさらされているものです。クレームのタネを探すクレーマーがどこかに潜んでいるかもしれないのです。ネットはお客と適度な距離感を保つことが難しいので、あくまでも店の〝情報発信〞のツールとして認識してください。
 

一方、店を広く認知してもらうのにネットは便利なもの。ビオワインファンの芸能人のツイッターなどはどんどんフォローするなどして接点を持ってみてください。もしかしたらテレビや雑誌などで紹介されるかもしれません。どんなチャンスも逃さないことです。

Q3 ピーク時に洗い場がいっぱいになっちゃうんです!

現在、オーナーの小平さんとシェフの2人体制で店を回しているが、小平さんがワインの説明に客席をまわり、シェフが料理作りにとりかかると、グラスなどの洗い物がどんどんたまってしまう。お客が思わず「次のワインも同じグラスでいいですよ」と声をかけてくれる事態になることも。

A.洗い物がたまるとすべての工程に影響が出てきます。ましてやお客が遠慮してしまうとは、店の居心地にもかかわることですよ。もともとワイングラスは洗って、乾かして、拭き上げなければならないので、ほかの食器よりも手間がかかるものです。これはなんとかしなければいけませんね。
 

解決策としては、ふたつあります。まずひとつは食洗機を購入すること。もうひとつは人手を増やすこと。食洗機を設置するにはスペースが必要ですが、スペース的に無理そうですね。人を増やすには、必ずある程度の売上が確保できていないとリスクになります。
 

早急にできることとしては、とりあえず洗ったワイングラスを乾燥させるために一時的に置く棚を作ることです。流しの上に湯沸かし器があるので、それを流しの下に置き換えたり、できれば外に設置し直してスペースを確保しましょう。ちょっと食器を置くスペースがあるだけで、作業効率はぐんと高まるはずですよ。

Q4 原価率の管理、どうしよう?

同店ではワイン約150種類(グラスワイン赤・白各4種類、スパークリング1種類)、料理25種類をラインナップ。しかも、魚料理を売り物にしているので、原価管理が難しい。

A ワインはカクテルやコーヒーなどに比べてどうしても原価が高くなります。ワインを主力商品にするかぎり、高原価率体質は避けて通れないことなのです。ましてや、魚料理を売り物にしているならば。
 

では、どうするか。まず、徹底してロスを出さないこと。カルパッチョ用の魚が残ってしまったら昆布〆めにしたり、別の料理にして使いきる工夫をすること。そして、魚以外の肉や野菜など食材全体で原価のバランスをとることです。パスタやカクテルのような原価率の低い商品を導入するのもよいでしょう。ただし、パスタはどうしてもスタッフがかかりきりになってしまうので、人手が足りない店では対応しきれません。一方、自家製の「ブランデースプリッツァー」650円などは原価率を抑えるよい商品ですよ。
 

しかし、原価率の高い店の抜本的な解決方法は、たとえ遠回りのようであっても売上を上げて食材原価を低く抑えることなのです。スタッフを雇って人件費が上がったとしても、ワインや料理の出数が増えればペイできます。週末だけでもアルバイトを入れてみたら、数字が変わってくるはずですよ。

原価率を下げる近道は売上アップです!

ビアンカーラ
高級住宅街の京王井の頭線・井の頭公園駅前にオープン。駅を出るとすぐ目の前が同店だ。立ち飲みスペースもあるカジュアルな雰囲気に加え、オーナーの小平尚典さんが魚料理で知られる居酒屋で修業した経験を生かし、ビオワインと魚料理という異色の組み合わせで差別化を図った。この狙いがあたり、比較的年齢層の高い30 ~ 40代以上のお客の利用が多く、当初予想を上回る客単価4000円をはじき出している。

東京都三鷹市井の頭3-31-1
☎0422-49-3032
●17:00 ~ 0:00 
●月休
●グラスワイン650円~、アンディーブとパルミジャーノのサラダ780円、ヒラメとカブのカルパッチョ1200円、魚介のブイヤベース1800円、あん肝のソテー980円、天然酵母の自家製パン(日替り)350円


小平 尚典さん
1976年群馬県生まれ。大学卒業後、アパレル会社に就職するも食べ歩き好きと飲食店を経営する伯父の影響で、2009年居酒屋「魚真」新宿店に入社。11年6月に
「ビアンカーラ」を独立開業。

相原一雅さん
1968年東京都生まれ。95年「organic design modern furniture shop」を中目黒にオープン。98年「organic design modern furniture shop」を「organi ccafe」として再生させ、カフェブームの火付け役に。以来、「BAR nems」「DEPOT」「dish」など飲食店舗をオープン。2004年、和菓子の製造販売店舗「たいかしの天音」を吉祥寺に展開。現在、飲食店舗および商品企画プロデュースなど数多くのコンサルティングを手がけている。

text:Toshie Shimizu / photo:Hisashi Okamoto

本記事は雑誌料理王国210号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は210号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする