さて。前置きが長くなったが、この記事の目的は青魚に多く含まれるDHA・EPAと免疫力との関係を探りつつ、青魚をより美味しく食べる知恵やアイデア、そして青魚を美味しく食べさせてくれる店の紹介をすることだ。新型コロナウイルス感染症はこの記事を執筆している2020年12月現在、感染を拡大させ続けている。
ワクチンの摂取が広がることでコロナ禍ができるだけ早いタイミングで収束することを期待したいが、第二第三の“コロナ”的な驚異が再び訪れない保証はない。それならば、人としての身体能力をアップしておいたほうがいい…みたいなことはきっと誰もがなんとなく考えたことがあるのではないだろうか。
例えば、免疫力を高い状態で保つことができていればウイルスに対する感染防止の一助となるだけでなく、「予防」という観点からも「回復力」という観点からも、身体のさまざまな機能が強さを増す。そして免疫力を高める食材の習慣的な「経口摂取(要は食べることによって摂取することです)」は、免疫力を高い状態に維持するために、大切な営みであるはずだ。
そもそも、DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、オメガ3とも呼ばれるn-3系脂肪酸で、青魚の脂肪に多く含まれる。EPAは、魚やアザラシを常食するイヌイットは、脂肪摂取量が多いにもかかわらず血栓症や心疾患が非常に少ないことから注目された栄養素でもある。
n-3系脂肪酸には古くから抗炎症作用、心血管保護作用、脳神経系保護作用などが報告されており、2012年に消費者庁で実施された「食品の機能性評価モデル事業」では「心血管疾患リスク低減」「血中中性脂肪低下」「関節リュウマチ症状改善」の3分野で「機能性について明確で十分な根拠がある」というA評価を得たりもしている。
免疫力という文脈では、DHA・EPAは循環器系の改善を通して、白血球の機能を維持し、ウイルスなどから体を守る免疫力を向上することが知られているが、一般財団法人日本水産油脂協会が組織する「DHA・EPA協議会」は、プロテクチンD1と呼ばれるDHA代謝物(DHAが人間の体内で変換されてできる物質)は体内に侵入したインフルエンザウイルスの増殖を遺伝子発現のレベルで抑制するという報告を2014年にしている(※1)。
実は「料理王国」では、今冬の「新型コロナウイルス」と「インフルエンザウイルス」が同時に流行する懸念に伴って、食材がもたらす免疫力に注目し、20〜70代男女を対象に「免疫力」と「食」に関する意識調査を実施した。「新型コロナウイルス」「インフルエンザウイルス」のツインデミックが懸念されていた時期の調査でもあったためか、過半数以上が「免疫力アップ」への意識が高まっていると回答。特に免疫力を向上する作用が期待されているDHA・EPAを多く含む青魚の食習慣について訊ねた設問では、昨年より風邪・発熱回数が減少した人は食生活で「魚を摂取する」割合が高く、また「DHA・EPAの摂取率」も高い傾向がみられた。
免疫力に関する意識では、昨年と比較し「免疫力アップ」への意識が高まった割合は53.1%。免疫力アップに向けて摂取したい食材では「ヨーグルトなどの乳製品」「納豆などの大豆製品」「緑黄色野菜」「フルーツ」などに続き「青魚」も23.2%と5番目に食い込んでいた。
きのこや海草に含まれる食物繊維、乳酸菌・納豆菌・麹菌などによる発酵食品には、腸管における免疫力の向上が期待できるという報告があるが、免疫力アップに役立つと思う成分についての設問では「乳酸菌」「ビタミン」「食物繊維」に次いで「DHA・EPA」は24.6%と4位に挙がっていた。
興味深いのは、魚食派と肉食派それぞれの「免疫力アップ」への意識についての設問だ。「免疫力アップのための対策ができている」と答えた割合は、肉食派43.2%に対し魚食派は57.7%と差が開いた。また「昨年より風邪を引いたり発熱する回数が大幅に減った」と回答した人の中で「DHA・EPAについての知識があり、積極的に摂取している」と回答した人の割合が32.2%と高かったことも面白い結果ではないだろうか。
というわけで今回は「青魚×DHA・EPA×免疫力」というテーマでお送りしたが、「青魚のポテンシャル」と題する記事を、今後数本に分けて公開するので、ご期待を乞う!
※1 インフルエンザウイルスの増殖に対するDHAの可能性
https://kyodonewsprwire.jp/release/201411205717
Text= 水亨一