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伝統を守り続ける老舗洋菓子店3選


老舗洋菓子店 ルネッサンス

流れの速い洋菓子の世界で、老舗といわれる店が今なお健在だ。長い歴史の紆余曲折のなか、どのように生まれ変わり続けてきたか。
飽きられず、いつまでもお客をひきつける魅力とは何か。 3軒の老舗が伝統を大切に守りながら、愛され、輝き続ける秘密を探った。

資生堂 パーラー

「原点回帰」をコンセプトに、伝統を見つめ直しながら時代を先取り

since 1902

創業後、レストランや喫茶部門、菓子などを扱うフーズ部門に分かれて発展してきたが、今回はお菓子にフィーチャーする。資生堂宣伝部のデザイナーだった仲條正義氏が、90年にパッケージをデザイン。01年、銀座8丁目本店ビルリニューアルのときに、仲條氏のデザインを一新することになった。計画全体のコンセプトが「原点回帰」。パッケージデザインのテーマは、社名の由来である「万物資生」だった。「すべてのものは土から生まれて土に戻る」という意味で、「自分たちも土に返り、新しいものを生み出そう」という意味を込めた。「この改革は社員の意識改革に効果があった」と阿久津厚男マーケティング課長は振り返る。「会社の歴史を再認識してスタッフの頭の中が整理され、基盤がしっかりした。すべての商品に伝統を盛り込むことができて、逆に新しいものに挑戦しやすくなった」。銀座にしかなかった店を、都内各所や地方都市へも出し、マーケットを拡大。季節ごとの味や銀座限定の商品など、ニュース性のある新商品を次々に発表。これらが時代の先取りにつながった。
デザインのみならず、社員の意識を原点へ戻し、躍進へのバネにする伝統の中に、お洒落感や新鮮さのあるお菓子である所以は、ここにある。

奥より、1932(昭和7)年頃から続くロングセラー「花椿ビスケット」。赤缶は仲條氏によるデザイン、青缶がリニューアルしたもの。仲條氏の弟子・澁谷善男氏が担当。銀色の缶は、本店ビル 1 階のプラザショップ限定品。手作りのクッキーをじかに詰め、原点回帰をストレートに表現している。 

ユーハイム

斬新なCIによって生まれ変われたのは、伝統があったからこそ

since 1921

老舗の岐路はバブル崩壊とともにやってきた。消費者がお菓子を買わなくなったのである。しかも当時の洋菓子業界は、海外から帰国したパティシエたちの店の全盛期。全国展開してきた老舗「ユーハイム」は、バウムクーヘンなど贈答菓子の売り上げこそ横ばい状態だったものの、時代の変化に危機感を感じていた。そこで、リニューアルを敢行。「ドイツ菓子店であること、バウムクーヘンを基本商品にすること、もの作りの姿勢をくずさない」の3本柱を守りながら、新しい挑戦を決めた。2002年、ドイツ人デザイナーによる新しいロゴと、斬新な店舗デザインで話題を呼んだ丸ビル店の完成によって新生ユーハイムが誕生。お客の老舗を見る目が変わり、「自分たちでもこういうことができるのだ」という自信が社員に出てきたという。これが起爆剤となり、全国への出店も増え、新しいブランドも打ち出すことができた。売上げの伸びが何より、このコーポレート・アイデンティティの成功を裏付けている。

上/バウムクーヘンは、すべてのブランドで扱う。ただし、ブランドごとに材料の配合は異なり、形もさまざまなものがある。全国有名百貨店ブランド「ユーハイム」のもの。右/ドイツ人パティシエとのコラボレート・ブランド「マイスターユーハイム」の「カシスのヴィントボイテル」。

洋菓子舗ウエスト

「真摯」を社是に、つねに小さな進化を続ける

since 1902

真っ白なクロス、クラシック音楽が流れる店内……。この店には、「古き佳き」という形容詞がぴったりくる。創業者である先代社長のスピリットを依田龍一・現社長が受け継いだ。流行に左右されず、上質の材料で職人がていねいに作るというコンセプトを守り続けてきた。きちんとした商品管理をしたいと、東京以外へは出店しない。しかし、売り物は「変わらぬよさ」だけではない。新商品の開発を怠らず、今年8月に米粉を使ったロールケーキを発売。
04年、日本橋三越に「レトロカフェ」を20年ぶりの新店としてオープンした。「ドライケーキしか知らないお客さまに、喫茶や生ケーキの存在も知ってもらいたい」と依田社長。この月には青山店を大々的にリニューアルする。敷地は4倍になり、すべてバリアフリー。ペット、喫煙OKのテラスもある。2カ所にあった工房を青山に集約し、作りたてのデザートも登場。古いなかに新しいものを取り入れ、進化し続けることこそ、老舗の理想の姿なのだろう。

上/ 1947 年の創業より販売されてきた「リーフパイ」は今も店の定番。中/ 06 年 10月に、ドライケーキのひとつとして登場した「アーモンドタルト」。左下/ふわふわ、しっとりの「米粉ロール」。

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北村美香―文、浅山美鈴―写真

本記事は雑誌料理王国171号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は171号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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