カナダ農務・農産食品省&カナダ大使館主催、カナダフードを楽しむイベントが大阪・梅田の料理教室「FOOVER」にて去る3月16日、17日、19日の3日間にわたって開催。トップシェフらがカナダ産食材、計11品目を用いた料理をレクチャーし、総勢60名のゲストがカナダフードの魅力に触れ、味わった。
ナイアガラの滝やオーロラといった息を飲む壮大な自然で知られ、北大西洋と北太平洋、北極海に囲まれた世界一長い海岸線や世界第2位の国土面積を誇るカナダ。
これら豊かな自然と日本同様に訪れる四季により、多様な海産物や農産物、畜産物に恵まれている。
例えば、春は漁期を迎えるズワイガニやオマール海老(ロブスター)、雪解けの早春に収穫され世界生産量の71%を誇るメープルシロップ。夏はブルーベリーやラズベリー、チェリーをはじめとする色とりどりのフルーツや野菜。秋は温暖化による生産地の北上で、世界の醸造家が注目するワイン。冬はオイスターなどの豊富な魚介類が。この他、肥沃かつ広大な大地による畜牛が盛んであり、大麦や小麦、トウモロコシといった地場産の穀物を飼料にしたグレインフェッドビーフなども有名だ。
日本で特に親しまれている食材においては、パンやパスタなどに使われている小麦や植物油の代表格であるキャノーラ、豆乳や豆腐に使われている大豆など、気づかないうちに毎日親しんでいる可能性のある素材が多数存在する。
今回のイベントでは「カラダも心も喜ぶカナダフードの恵みを体験」をテーマに、3月16日は日本料理店「京料理たか木」(兵庫・芦屋)の高木一雄氏、17日はフランス料理店「プレスキル」(大阪・淀屋橋)の佐々木康二氏がデモンストレーションを行い、最後にヘルシーなコースを堪能。また19日はパティスリー「Seiichiro,NISHIZONO」(大阪・肥後橋)の依田馨氏が実習を行い、2品のヘルシーかつ美容にも効果が期待できるスイーツを皆で作った。
イベントの開会式において、在日カナダ大使館・商務部食品担当の清信裕子氏は「カナダの料理とは国民の物語です。先住民の歴史は1400年以上を遡り、その後はフランスやイギリスなどから移り住んだ人々が自国の料理を伝えました。現在、カナダの国民5人に2人は両親のどちらかが移民というデータがあり、料理自体も多様です。またカナダの食材は広大な大地と四季の物語であり、日本と同じように、カナダの食生活は四季折々で変化します。シェフの料理を通してカナダの食材の魅力を感じていただきたい」と話した。
日本料理店「京料理たか木」(兵庫・芦屋)の高木一雄氏は次の4品を披露。
「日本料理の料理人として、カナダといえば最初に思いつくのが、カナダ産の数の子。これは、品質がいいものとして有名です。歯切れがよく粒がしっかりしている」と高木氏。おせちにはカナダ産の数の子が欠かせないという。この日は師匠から教わったという、数の子を白和に。キリリと効いたワサビの辛味が好評を得た。
一方、カナダ大使館・参事官のアレックス・チェン氏によるとカナダでは、フレッシュの数の子を昆布で巻いた料理が先住民の料理としてあるという。日本には塩漬けの加工がなされてから届くため、塩抜きをし、出汁を含ませて調理することが定石だが、フレッシュを楽しむという生産地ならではの食文化が興味深い。
またカナダ産カラスガレイを使った1品は「カラスガレイは脂がのっていてひとつで満足感のある素材。料理屋では味噌漬けにすることが多いですが今日はフライパンひとつでできる味噌煮にしました」と高木氏。脂がのり、ほろっとほどける肉厚の身は味噌といった塩分を入れても固くなりすぎないのも特徴。家庭でも扱いやすい食材だといえる。
なお、今回使用したカラスガレイは北極海などの冷たい海に生息し、その漁は、氷に2メートルの穴を開け1匹ずつ捕まえることで限りなく環境負荷を抑えたイヌイット伝統の漁法を現在も受け継ぐという。この他、漁獲エリアを分け、漁獲可能な期間やサイズの規定、資源管理を行うオマール海老(ロブスター)漁など、サスティナブルな取り組みが多いのもカナダ産素材の特徴だ。
フランス料理店「プレスキル」(大阪・淀屋橋)の佐々木康二氏は下記の4品を披露。
「フランス料理において、一番親しまれているカナダ産素材はオマール海老」と話す佐々木氏。今回はオマール海老のクリームに効かせた八角の香りが多くの参加者に驚きと発見を与え、好評を得た。これは佐々木氏が料理長を務めたレストラン「アラン・シャペル」(兵庫・ポートピアホテル内/現在は閉店)の味でもあるという。「シャペルではハトやエビに八角を合わせていました。この他、フェンネルといったハーブやコリアンダーといったスパイスもオマール海老に合います」。
カナダ産のオマール海老は活き、冷凍、殻を外してすぐに使える真空冷凍製品(超高圧処理(HPP)商品)、そして加工品などさまざまな商品が日本で入手可能だ。
なお、今回オマール海老は高木氏も佐々木氏も沸騰した湯で茹でてから調理し、それぞれ和洋の1品に仕立てたが、カナダでは「ボイルまたはスチームし、レモンと溶かしたバターで食べるのが一般的」と大阪万博・カナダパビリオン政府代表のローリー・ピーターズ氏。現地では特に高価な食材ではなく日常的な素材で、現地ではロブスター専門のファスドフード店も存在。幅広く愛されている国民的食材だという。
さらにカナダを代表するもう一つの食材で、この日も2品に使われたサーモンは、カナダ東部の北大西洋側で獲れ、脂肪分が多いアトランティックサーモンや、カナダ西部の北太平洋側で獲れ、脂肪分の少ないキングサーモンやシルバーサーモン、レッドサーモン、ピンクサーモン、チャムサーモンが日本で入手可能。
佐々木氏がこの日選んだのは脂肪分の少ないレッドサーモン。「寿司などに使う場合は脂がのっているアトランティックサーモンが合いますが、フレンチの場合は脂が多いとソースや味付けを油脂で弾いてしまう。また私の好みから油脂の少ないものを選んでいます」と佐々木氏。
中でも「カナダ産サーモンとクレープ・パルマンティエ ヴァンブランソース」はスモークや冷菜として楽しむことが多いサーモンのマリネをパンケーキの上に重ね、温かい白ワインソースをかけて楽しむティエド(やや温かい)温菜。覚えておくとサーモンのマリネの活用の幅が広がる一品だ。
パティスリー「Seiichiro,NISHIZONO」(大阪・肥後橋)の依田馨氏は下記の2品を実演。
「オートミールのクッキーは粉を米粉にすることでグルテンフリーに。また糖分をGI値が低く、ポリフェノールを67種も含むメープルシロップにすることでヘルシーに。これをグラニュー糖にすると単調かつ素朴な味ですが、メープルの香りがあることで味わい深くなります。またオートミールは玄米の2倍の鉄分があり、女性に嬉しい食材です」と依田氏。
カナダ産メープルシロップは採取時期が早く淡い色と軽い風味が特徴の「ゴールデン」、琥珀色で風味が増す「アンバー」、より色が濃くなりコクが増す「ダーク」、採取時期の最後の樹液から作られ風味が濃厚な「ベリーダーク」の4種類が。
これらの中でも「焼き菓子には、焼成しても香りが飛ばず風味が残るベリーダークがおすすめ」(依田氏)という。
なお、カナダでは各家庭に数種類のメープルシロップが常備されていることが多く、軽やかなゴールデンはヨーグルトにかけたり、アンバーやダークは日本でいう砂糖の代わりとして肉や魚のマリナードにしたり、ベリーダークは今回作ったベイクやケーキなどに使ったりするという。
またグラスデザートに使われ、コンポートにしたブルーベリーはカナダ産フルーツの代表格。抗酸化物質が豊富でカロリーが低く、食物繊維やビタミンCが豊富。ここではブルーベリーの風味を活かすため、糖分として用いたメールシロップは軽めの「アンバー」を使用。このように、表現したい味によって甘味や風味を調整できるのも多彩なカナダ産メープルシロップの特徴だといえる。
今回紹介したカナダ産素材は、現在「楽天市場カナダフェア」で入手が可能。
この他、世界の醸造家から注視されるカナダ産ワインや世界5大ウィスキーの一つであるカナディアンウィスキー、フルーツを用いたドリンクも。
ぜひ、大自然が育むサスティナブルなカナダフードを試してほしい。
楽天市場カナダフェアサイト
https://event.rakuten.co.jp/area/global/canada/
text: 佐藤良子, photo: 高嶋克郎