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グランメゾン「プレスキル」の厨房の中


理想の厨房をめざす!
プレスキル─佐々木康二さん

プレスキル x ホシザキ

シェフはもちろん、スタッフ全員が求める機能性に富んだ厨房は、店の成否を分ける重要なポイントだ。しかし、新店をオープンさせるまでの限られた時間内で、理想を形にするのは容易ではない。そこで佐々木シェフは、調理機器メーカーとしてだけでなく、行き届いた施工にも定評のある「ホシザキ」と組んで、これを実現させた。施工から調理機器に至るまで、信頼できる1社に絞って依頼するメリットは大きかった。

秋、大阪淀屋橋にオープンしたフランス料理店「プレスキル」。その料理長として迎えられた佐々木康二さんは、「アラン・シャペル」の名を冠した有名ホテルレストランなどでの長いキャリアと実績を持つ。施工段階からチェックを重ね、特に自身の料理哲学や表現の原点となるキッチンには、相当こだわったという。佐々木さんに、理想的なキッチンを実現させるポイントを聞いた。

収納スペースをたっぷり取って通路の幅も一定に設計

「第1のポイントは食材の収納です」と佐々木シェフ。店をオープンした後で、その厨房で実際に働いてみると、「収納が足りない」と気づくことが多いのだそうだ。そこで、「プレスキル」では、6台のテーブル形冷蔵庫を導入。調理台の下を冷蔵庫にすることで収納面の問題を解決した。厨房の壁側にも大型の冷蔵庫や冷凍庫を配置しているが、こちらにはストック用の食材を入れ、テーブル下にはその日に使う予定の食材や、仕込み済みの前菜などを収納。使い分けている。食材ごとに収納場所を明確にし、すぐに使うものは一番近くに置いておくと動線もよくなる。

「温かい料理はより温かく、冷たい料理はより冷たい状態で提供したい」との考え方から、調理台をアイランド形式にし、冷たいもの中心に手掛ける調理台と、火口があって温かいものを中心に作る調理台を分けたのも佐々木シェフのアイディアだ。これにもうひとつ、洗浄専用のアイランドが加わり、調理場では、常に3つのラインが効率よく動いている状態が保たれている。

調理機器を置く場所を考慮し、デッドスペースを作らないようにも計算した。たとえば真空包装機の横に空間ができたので、そこには棚を作って収納スペースとした。収納後、空いたスペースは作業台に活用できる。また、洗浄ラインの長さについても、洗浄ラックの必要個数を考えて算出。「うちの場合は2つの洗浄ラックを置くスペースが必要なので、その長さに合わせて洗い場も設計しています」。スタッフがスムーズに動くためには、「通路の幅を一定にすることも大きなポイントです」。ところどころ狭くなっていたりすると、そこで動きが止まってしまうからだ。「プレスキル」ではテーブル下の冷蔵庫の開閉を考慮して、90センチに決めている。

「プレスキル」のヒートランプについて、「これだけ高い位置からつるしている店は少ないのではないでしょうか」と佐々木シェフ。十分な高さがあるので、線を結んだりすることなく機能的に使える。

親身になって微調整をしてくれる施工会社選びが、実は重要

 今回佐々木シェフは、理想のキッチンを創り上げるためのパートナーに「ホシザキ」を選んだ。

「ホシザキさんの調理機器の良さは以前から知っていましたが、施工から相談にのってくれて、微調整にもていねいに応じてくださった。それが満足のいく厨房を完成できた理由だと思っています」と佐々木シェフ。ホシザキの販売会社ホシザキ阪神の担当者とは1カ月かけて、入念な打ち合わせを重ねた。その流れをホシザキ側に確認すると、第1段階としてシェフに決めてほしいのは、(1)調理や洗浄の動線、(2)火口の数、(3)1日のゲストの予定数など。これに基づいて設計図を考え、細部については話し合いながら進めていくそうだ。「プレスキル」の場合、細かなところでいえば、ヒートランプをつるす棚の高さや、デザート用の機器の電源の位置など、検討するポイントはたくさんあった。また、佐々木シェフの料理にはソースが欠かせないため、火口の横に、ソースを温めておくための作業台を取り付けた。わずか20センチほどの作業台だが、これがあるとないとでは大違い。「ひとつひとつの要望に対応してくださって、助かりました。施工からすべてを1社にお願いしたことで、費用も予定よりずっと安く済みました」。

 こう語る佐々木シェフが、理想の厨房で作ってくれたのは、真空包装機を駆使したフォワグラ料理。これからのキッチンに欠かせないもののひとつに真空包装機がある。これを使うことで、フォワグラの旨味、甘味、しっとり感を最大限に活かした料理も可能になるのだ。また、アーティチョークのように変色しやすい野菜にも真空包装機が役立つ。「めざすのは、伝統と進化の両方です。フュージョンとかイノベーションもいいと思いますが、アラン・シャペルの時代の料理には不動のおいしさがある、と僕は思うんです」

 最近、パリでクラシック料理が見直されている理由も、そこにあるのではないかとシェフは分析する。バターやクリームは比較的多めに使い、シャペルの時代には用いなかったユズやスダチの酸で、味を締めるのは現代的。訪れたゲストの中には、「久々にフランス料理らしい皿をいただいた」と喜ぶ人も少なくない。

 オープンしてまだ日が浅いため、「夜の集客については課題があります」と言いながら、昨日のランチは46席、満席だった。満席状態でもスムーズに料理を提供できたことで、改めて厨房の「成功」を実感した佐々木シェフ。これが大きな自信となって、この厨房からまた新たな料理が生み出されていくことだろう。

フォワグラのコンフィ、梅のピューレとアーティチョークの小さなサラダ
真空調理によって、風味よくしっとり仕上げたフォワグラのコンフィに梅のピューレをぬった。目にも舌にもさわやかなひと皿。同じように真空調理してサラダ仕立てにしたアーティチョークとのバランスも絶妙。

text 上村久留美   photo 村川荘兵衛

本記事は雑誌料理王国第261号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第261号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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