食の未来が見えるウェブマガジン

古代ローマ時代の料理法を新しい解釈で受け継ぐ「Lido 84」リカルド・カマニーニ


世界の第一線で活躍する、今、注目のシェフたち。彼らもまた様々なものを受け継いでいる。それは伝統であったり、文化であったり、レシピであったり…。これからの料理界を担うシェフたちが、それをどう未来へ繋いでいくか。ひと皿の料理で表現してもらった。

古典料理を新しい解釈で受け継ぐ

「未来の美食には、心からのコミュニケーションが大切になる」と考えるのは「リド84」のリカルド・カマニーニだ。今年世界のベストレストラン50の「ワン・トゥー・ウォッチ」を受賞、美しいガルダ湖を見渡す絶好のロケーションだが、オープン直後から満席が続く理由はそれだけではない。「一人一人のゲストに興味を持って接し、私たちが提供する食事、という夢に巻き込んでいくこと」そしてシェフの「エゴイスティック」さに警鐘を鳴らす。「私たちはせかせかと歩き、早口で話し、美食のリサーチの結果を早く習得し過ぎて、ゲストを置き去りにしていないか。説明はシンプルに。誰にでもわかる言葉で話すべきだ」。また、料理人がテーブルサイドで仕上げる料理も多く、ショーのように見て楽しく、コミュニケーションが生まれる工夫が凝らされている。それと同時にリカルドが心がけるのは、すっかり「巻き込まれた」ゲストを、歴史の旅に連れていくことだ。


「伝統が制限だとは思わない。伝統に根ざした上で、自分の考えを体系化する能力を持った素晴らしいシェフがこれまでにもいたし、そうして歴史に痕跡を残すのは多くの偉大なシェフの野望でもあった」と語る。自身も、ラテン語で書かれた古代ローマ時代の料理法・レシピを集めた「アピシウス」を紐解き、インスピレーションを得る。アピシウスに「豚の膀胱を使って食材を保管したり発酵したりする」と書かれており、自身がフランス料理店で修行中にブレス鶏のヴェッシー包みを調理した経験から、イタリア料理でもヴェッシー包みを作ってもいいのではないか、と思いつく。そうしてできた、豚の膀胱で乾燥パスタを調理して提供する「カチョエぺぺ」は、ワールド・レストラン・アワーズの、「ハウス・スペシャル」部門で表彰されるなど、味と技術はもちろん、そのストーリー性とプレゼンテーションも大きく評価された。人材育成にも工夫があり、月に一度、厨房とサービスのスタッフを交代させる。全ての人が深くレストランに関わっていくことで生まれるチームワークが、「心から温かく迎えられた」とゲストが感じるコミュニケーションにつながる。

未来に受け継ぐ一皿

Cacio e Pepe

元は、 ローマの伝統的なチーズと胡椒のバスタ。乾燥パスタを豚の膀脱の中で調理することで、「パスタ・ アラ ・ グリシア」を思わせる、 ソ ー セ ージのような香りが加わる。乾燥リガトー ニ、ペコリー ノチー ズ、 塩、 胡椒、 水を詰め込んだ豚の膀脱にお湯をかけながら27~30分問調理し、テー ブルサイドで振って中身を混ぜてから切り開く。豚の膀脱は、 水に浸ける日数によって香りの濃さが変わるが、 ゲストの反応を見て、今は10日間漬け込んでいる。

text 仲山今日子

記事は雑誌料理王国2019年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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