食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

次世代を担う海外注目シェフ「Boragó」ロドルフォ・グスマン


世界の第一線で活躍する、今、注目のシェフたち。彼らもまた様々なものを受け継いでいる。それは伝統であったり、文化であったり、レシピであったり…。これからの料理界を担うシェフたちが、それをどう未来へ繋いでいくか。ひと皿の料理で表現してもらった。

失われかけた民族文化を受け継ぐ

「牛の餌に使う草を使った料理など食べたいか?『料理』を持ってきてくれ」。13年前、評論家にそんな痛烈な言葉で評されたレストランが、今や予約の取れないレストランになった。最新のラテンアメリカのベストレストラン50でチリ最高の4位、「サステナブル・レストラン・アワード」も同時受賞し、まさにチリを代表するレストランだ。しかし、冒頭の言葉が示すように、その道のりは険しいものだった。「7年間は客が来ず、借金だらけでした。レストランを売却しようとしましたが売れず、このままでは監獄行きだ、と絶望していました」という2013年、初のラテンアメリカのベストレストランがスタート。8位にランクインしたことで爆発的に客足が伸び、そこから成功への道が続いてゆく。


ロドルフォの父はマプチェの血をひく。「実は、チリの人々の8割くらいには、マプチェの血が流れています。しかし、人々はマプチェの血を恥じて隠し、その文化は表舞台から消え去っていました。チリで食べられてきた食材を使い、失われたマプチェ文化に光を当てるファインダイニングを作ろうと思ったのです」しかし、当時の人々の頭の中では、高い輸送費をかけて海外から輸入される、フォワグラやキャビア、日本の魚などが、レストランで食べる価値あるものだと思われていた。「自然は値札をつけない。目の前の海に素晴らしい食材があるのに、と悔しかった」。マプチェは、日本の八百万の神と同様、自然の全てに神が宿る、と考え、自然と共生して生きている。現在、約200人の採集パートナー、約50人の小規模生産者と密に連絡をとり、極上の地元食材を手に入れられるようになったというが、「マプチェの文化の深さには到底到達できません。先日私は、コーヒーの育たないチリで、似た味の飲み物を作ろうと、アカシアの仲間の木の種を発酵させて炒った飲み物を作ってみたのです。この前マプチェの集落で、その話をしたら、なんとその文化はすでにあった。そして、『ああ、でもこの方法を生み出したのはつい最近だよ。2000年くらい前からだからね』と言われたのです。かないませんよ」。

未来に受け継ぐ一皿

Fish Head “Al Rescoldo” and Caldillo de Congrio with Wild Roses

「冬の間、 部屋を温めるために火を焚いた残り火でパンや野菜を焼く、 チリの伝統的な料理を応用して作ったものです。魚の頭を香りのよいイチジクの葉で巻いて、 さらに小麦粉と灰で作った生地で包み、 蒸し焼きのように焼き上げます。 チリでは、魚の頭は動物の餌になったり、 捨てられてきました。 でも、 ここはゼラチン質があって美味しい場所なのです。 先入観に囚われず、 味で判断してほしい。 そう思ってあえて頭の部分を使っています」。

text 仲山今日子

記事は雑誌料理王国2019年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする