食の未来が見えるウェブマガジン

次世代を担う海外シェフ12 (9)「sushi AMANE」宇井野詩音


世界の第一線で活躍する、今、注目のシェフたち。彼らもまた様々なものを受け継いでいる。それは伝統であったり、文化であったり、レシピであったり…。これからの料理界を担うシェフたちが、それをどう未来へ繋いでいくか。ひと皿の料理で表現してもらった。

自然の持ち味を引き出す仕事を受け継ぐ

ミシュラン三ツ星、アジアのベストレストランで今年25位、予約の取れないレストランとして知られる「鮨さいとう」。そこで握りを任された数少ない職人のうちの一人が、現在NYの「sushi AMANE」の宇井野詩音だ。若干29歳、2年前のオープンからわずか3 ヶ月でミシュラン一ツ星、競争の厳しいNYで2年連続星を獲得している。熊本県天草の出身。目の前の海に潜っては銛で魚を獲って食べる、そんな子ども時代を過ごした。「魚が自然の中でいきいきと泳いでいる姿を見ることができたので魚の状態、旬や、味わいの変化を勉強できましたし、命に対する感謝を学べたと思います」。大切にしているのは、「自然が人を作る」という考え方。「これは、大切なお客様に教えていただいた言葉なのですが」と前置きしつつ、「日本という国は魚が沢山獲れ、お米作りに適した気候で、それに基づいた食文化が生まれました。その気候、食べ物で長年育まれて日本人のアイデンティティはできています。なので、寿司は日本人のアイデンティティを代表する食べ物の一つだと思います」。

幼い頃インドとタイに1年間住んだ経験から、海外の文化や生活に興味があり、18歳で、日本だけではなく海外でも評価の高い、「鮨さいとう」の門を叩く。そこで学んだのは、まさに「自然を大切にした寿司」良い食材を仕入れて、必要最低限の仕事で、食材の良さを引き出し、提供する方法だった。「ここまでシンプルな食べ物は、世界的に見ても少ない。シンプルなだけにそれぞれの食材に敬意、感謝を感じられる食べ物だと思っています」。それぞれの食材が主張しつつバランスを保って美味しい状態なのが、自分の考える最高の寿司。東京とは違うNYという舞台では「宗教的な制限などで貝や海老、タコなどを食べない」などがあるため、しっかりとコミュニケーションを取る。これからの時代は、地産地消。その土地でしか食べられない食材が食べられることが価値になる、とサステイナブルなボストン産のマグロを提供する。寿司を食べることにより感じる自然への感謝を、次世代に繋いで行きたいと考えている。

未来に受け継ぐ一皿

ボストン産 天然マグロの握り

「今、 日本でも、 マグロをはじめとする魚の水揚げ量が、 減っていることが問題になっています。 このままでは近い将来、 日本近海で、 マグロは獲れなくなってしまう。 しかし、自分が今使っているポストンのマグロは、 獲って良い大きさ、 月毎の呈まで厳しく決まっていて、 資源を守っていく体制ができています。サステイナブルかつ地元で獲れた食材。 そんなマグロを江戸前寿司の手法で一週間寝かせて、 旨味と柔らかさを引き出して提供しています。

text 仲山今日子

記事は雑誌料理王国2019年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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