コネクテッドレストランを支えるテクノロジーの今


Uber Eats

テクノロジー×フードデリバリー。
Uber Eats が支える市場とは?

クラウドキッチンやゴーストレストランのような客席を持たない(厨房だけの)飲食店が成立する大きな要因が、 Uber Eats などのフードデリバリーサービスの拡大だ。

「Uber Eats(ウーバーイーツ)」は2020年3月現在、国内11 都道府県で17,000 以上のレストランパートナーを利用可能だ。

 Uber の配車事業で培ったマッチングテクノロジーを活かし、ユーザー、店舗、配達パートナーのニーズをリアルタイムでマッチングさせる「シェアリングエコノミー」の概念がベースとなる。店舗には厨房稼働率を上げたいという潜在的なニーズがあり、そこに「自分が今居る場所で食べたい」というユーザーのニーズと、「今から1時間なら仕事できる」という配達パートナーのニーズを即時にマッチングさせることで、ユーザーはダイナミックプライシングによる配送料を、店舗は手数料をそれぞれUber Eats に支払う。

 料理を30 分以内で届けるというポリシーもあり、配達は自転車や125cc 以下の原動機付き自転車が現実的な手段となるため、ユーザーは半径数km 以内にある候補の中から店舗を選ぶことになる。店舗にとっては必然的に商圏が限定されるというわけだ。

 DOORDASH(ドアダッシュ)やGrubhub(グラブハブ)など、さらなるフードデリバリープラットフォームが上陸する日も遠くないと囁かれる昨今、この市場はさらに拡大するはずで、商圏のユーザーのウォンツを探り、デリバリーに最適化されたメニューを開発するなど、創造性に磨きをかけたクラウドキッチンやゴーストレストランが増えるのかもしれない。

Square

より円滑な決済や売上管理を。
Squareが飲食業に提供する価値。

「AIRレジ」「Uレジ」などのPOSレジも、コネクテッド・レストランにとって必須のテクノロジー。例えば、 Twitter の共同創業者、ジャック・ドーシー氏によって2009 年に設立、2013 年に国内でのサービスを開始した「Square(スクエア)」は、そもそもフードトラックやポップアップなど、小規模事業者向けに誕生したという背景を持つ。

 事業者はタブレット端末とインターネット接続環境さえ整えれば、レジ機能や決済機能、日別・月別の売上データや、商品ごとの売上データなど、スクエアが提供するサービスを無料で使える。事業者がスクエアに支払うのはクレジットカード決済時の手数料3.25%のみ。現金決済時の売上には手数料は発生しない。また、キャッシュレス決済による売上は、最短翌営業日に指定した銀行口座に入金されるので、キャッシュフローが潤沢でなくとも運用が可能になる。また、売上が常にデータ化されるため、経営管理の効率が上がり、経理担当者や税理士の負担を軽減できるという利点も。仮に売上が100%キャッシュレス決済になれば、事業者の負担は大きく減るだろう。

Makuake

多角的な創業支援を繰り出す。
Makuake が大切にすることとは?

一部では「応援購入サービス」とも呼ばれるクラウドファンディングによって、より安定的かつ確実に事業を 離陸 させやすい環境が整う。「資金調達という一面もあるが、開業前のプロモーションという側面のほうが重要度が高い」と言うのは応援購入サービス大手「Makuake(マクアケ)」の共同創業者、坊垣佳奈氏。

 サービス提供前にプロモーション活動ができ、応援してくれる最初の顧客とコネクトできるという特長を活かし、ターゲットや需要を知るためのテストマーケティングを目的に、マクアケでプロジェクトをローンチする実行者
が増えている。

「大切なのは応援購入という考え方。サービス提供者の背景や思いを知ることを購買の理由にできるのです。ゆえに実行者の熱意・熱量が成否を左右します」。個々のプロジェクトは一人ひとりの人生をかけたチャレンジ。ターゲット設定やリターン設計については、自社のキュレーターが実行者に寄り添い、プロジェクトを綿密に設計する。2019 年には「note」とも連携、実行者の熱い思いをより丁寧に知る手立ても増やしている。

トレタ

新しい顧客体験を創出すべく、トレタが見つめる未来。

飲食店の予約・顧客台帳サービスを手掛けるトレタの中村 仁代表は「顧客体験」こそが鍵だという持論を展開する。飲食店の本業は料理の提供だ。しかし、料理だけで価値を差別化することは、もはや困難な時代になりつつある。ゴーストキッチンやロボットレストランは、料理の提供だけに特化した飲食店の究極の姿。それらと対抗しようとしても、コストパフォーマンスや効率面で、個人店に勝ち目は少ない。「だからこそ、小規模なお店は顧客との接点を磨き上げ、合理性ではなく 体験の豊かさ や 世界観 で勝負すべきではないでしょうか」。

トレタは今、飲食店の現場で起きている事象や顧客の行動をデータ化することで、新たな飲食店づくりを実現しようと試みている。「飲食店の現場ほど、顧客接点が濃密な場はありません。しかし現状はその殆どが「感覚」や「印象」で捉えられるのみで、何もデータ化できていないのです。まさに勘に頼っている状況。外食体験のどんなタッチポイントからどんなデータを収集できるのか? 例えば店内の温度を計測してビールの出数と掛け合わせれば、ビールが出やすい室温が割り出せるかもしれません。誰が接客すると顧客満足度が上がっているのか? 常連さんがこのお店を愛してくれている本当の魅力とは何なのか?」

データは決して無機質なものではなく、むしろ飲食店の温もりや価値を図るための大切な味方になるのかもしれない。


本記事は雑誌料理王国2020年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年4月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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