アラン・デュカスもその料理を絶賛した!若干31歳のシェフ


世界の第一線で活躍する、今、注目のシェフたち。彼らもまた様々なものを受け継いでいる。それは伝統であったり、文化であったり、レシピであったり…。これからの料理界を担うシェフたちが、それをどう未来へ繋いでいくか。ひと皿の料理で表現してもらった。

「Belon」ダニエル・カルバート

クラッシックを受け継ぐ

「誰かからベロンの話が出ると、俺たちは『ああ、ベロンか』と、肩を落とすって訳だ。あの技術の精巧さ、かなわないね。ダニエルに言いたいよ、ちょっとは手加減してくれって」とは、某星付きシェフの言葉、もちろん最大級の賛辞だ。かのアラン・デュカスもその料理を絶賛したシェフは、イギリス出身の若干31歳。去年のミシュランで初の一ツ星を獲得、アジアのベストレストラン50でも、今年40位から15位へと、大幅に順位を上げた。レストランに入ると、提供されるサワードゥはいつも、勢いよく湯気が上がるまさに焼きたてで、アラミニッツの仕事を大切にしているのがわかる。

「個人的にもクラシックなフランス料理の味の組み合わせ、構成、テクニックが好き。料理には、食べ慣れた味が欲しいし、それは変える必要がないと思う」と語る。ただ、現代ならではの工夫も行なっている。「今の時代に一番考えなくてはならないのは、ポーション。お客様は食べる量を少し減らしたいけれど、食べた後の満足度は同じであって欲しいと思っている。なので、ソースや味を濃厚にして、盛り付けも、余分なものを削ぎ落としてシャープにしている」。シンプルだからこそ際立つのは、NYの「パ・セ」、パリ・ブリストルの「エピキュア」で磨かれたその技術力の高さだ。

未来に繋ぎたいのは「調理への回帰という感覚を受け継いでいきたい。私たちは真空調理をしないし、パンやパイ生地、ソース、全てが一から自家製で、外から買っているものはない。次世代のシェフたちに、香港のごく狭い厨房(本当に小さい!)であっても、そうして素晴らしい結果を生み出すことが可能であることを見てもらいたい」という。デザートも、トリュフのスライスを挟んだミルクレープや、イチジクの葉をインフューズしたクレーム・ディプロマットのミルフィーユ、そんな一つ一つの細かな手仕事を愛するダニエルは、「未来のレストランの規模は小さくなっていくだろう。スタッフを見つけるのが難しくなっている上、お客様は個人的な体験を求め、コミュニケーションをより求めるようになっているから」と語る。

未来に受け継ぐ一皿

Pigeon Pithivier with Fig and Amaretto

鳩はあらかじめの火入れはせず生を使う。 ほうれん草のペーストの外側、 バイ生地のデトランプは、 水を一部クリームに置き換えて、 濃厚な味わいを実現する。 ソ ースは丸鶏と鳥の足(もみじ)で5時間かけて取った出汁にさらに丸鶏と鳥の足を加え、合計3回取った涙厚な鳥のストックがペ ースで、 イチジクと王道の組み合わせのアマレットを加える。 ポーションは1個を二人で分ける形で、 ダニエルの「少ないポーションで同じ満足を」を体現した一皿だ。

text 仲山今日子

記事は雑誌料理王国2019年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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