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【レストラン ラフィナージュ】ソースはフランス料理そのもの。高良シェフが挑むソースのさらなる進化


ソースは、フランス料理そのものとも言うべき存在。フランス料理の核とも呼べる技術、伝統、哲学が備わっている。さらに時代とともにさまざまな解釈もされてきた。今回はあらためてソースに着目し、その奥深い世界、揺るぎない世界を紹介する。

伝統が磨き上げた盤石な味わい
レストラン ラフィナージュ

レストラン ラフィナージュ 高良康之

1967年、東京都生まれ。ホテルメトロポリタンで修業 を重ねたのち渡仏。2年間経験を積み、帰国後は「ル・マエストロ・ポール・ボキューズ・トーキョー」などを経て「銀座レカン」総料理長に。2018年「レストラン ラフィナージュ」開業。

誰もがガツンとくる「おいしい!」って思う味、あるでしょ? そのもとが、小麦粉、バター、アルコールです。


フォワグラのフランとトリュフのクロックムッシュ

バターのふくよかさが小麦粉を包み込む
パン・ド・カンパーニュのフレンチトーストと、チーズ入りのベシャメル、トリュフの組合せ。ベシャメルのビロードのようになめらかな食感が料理の洗練度を一気に高める。フォワグラのフランとともに。

バターを鍋で溶かし、強力粉を加えたら、木べらでていねいに混ぜながら加熱。強力粉一粒ずつにバターをコーティングするイメージ。それができたら、蓋をして140~150°Cのオーブンへ。粉にしっかり火を入れてルーを作る。
ルーを牛乳で溶いて混ぜ、一定のとろみが出たら蓋をしてオーブンに。適宜取り出しよく混ぜる工程を4~5回くり返し、粉に充分に火を入れる。混ぜる際は、空気を含ませるよう意識する。
写真ほどのとろみがついたら、加熱をとめる。空気を含ませるように炊いたベシャメルは、ふわりとなめらか、かつ、ツヤやか。粉のデンプンが充分に糊化したことも伝わる。この後、漉して完成。

ソースはフランス料理そのもの

2018年10月、銀座にて「レストランラフィナージュ」をオープンした高良康之シェフ。「銀座レカン」総料理長を経て構えた自らの店で、さらなる料理の進化に取り組む。特にソースに対する思いは深く、現代性を備えた内容へと柔軟に、大胆に変化させた。ただしその根底には、フランス料理の伝統的なソースへの幅広い、そして深い理解が常にある。「今回は、フランス料理の基本中の基本となるソースを3つ紹介しました」と高良氏。フランス料理には、伝統的に定義されたソースだけでも数えきれないほどの種類がある。そしてそれは、いくつかのベースとなるソースを派生させていったもの。「この構造を押さえれば、全体像がつかみやすいのです」。

ソース・ベシャメルとは、いわゆるホワイトソース。小麦粉とバターを炒めて作る白いルーを牛乳で溶き、煮て作る。他の材料を加え、さまざまなソースや料理に派生させられるベース的な存在。伝統的なフランス料理を代表するソースの一つ。


その3つとは、ソース・ベシャメル、ソース・オランデーズ、赤ワインソース。「ベシャメルの決め手は小麦粉。オランデーズは、卵。赤ワインソースは、アルコール。この3素材はソースのみならず、フランス料理のさまざまな場面で登場する重要素材です」。ベシャメルを通して小麦粉の加熱上のポイントを知れば、製菓でも生かせる。オランデーズを通して卵の凝固温度や乳化について知れば、卵料理やヴィネグレットに通じる。そしてアルコールは、ソースにとりわけ欠かせない要素。扱い方を身につけることで、料理の表現の幅は圧倒的に広がる。「この3ソースの材料と分量の比率、作り方のポイントを頭に入れておくと、とっさの場面でも適切に対応できます 」。


若鶏のポッシェとオマール海老のコンビネーション、オランデーズソース

バターと卵黄のコクが、やさしく、深い旨みを作る
しっとりと蒸した若鶏胸肉に、ソース・オランデーズをたっぷりとのせて表面にこんがりと焼き色をつけた。オランデーズは、白色の肉や白身の魚とひときわ相性がよい。オマールの身、オマールのソース、春野菜を盛り合わせて。

卵黄と水をあらかじめ泡立ててから加熱。その際は卵黄の凝固温度である70°Cを超えないよう注意しつつ、かき立てる。澄ましバターを少しずつ加えて乳化させるプロセスでも、水分と油脂分がなじみやすい温度帯を意識する。
ソース・オランデーズとは、湯せんにかけてかき立てた卵黄と、澄ましバターを乳化させた温かいソース。軽く煮詰めて角をとった白ワインヴィネガー、白胡椒で風味をつける。コクと厚みをもちながら、酸味によるキレと軽い口当たりをもつ。

高良シェフのソースへの強い思いは、ホテルメトロポリタンのオープニングスタッフとして修業を始めて間もない頃にさかのぼる。「レストランで一番下っ端の洗い場から始めたのだけれど、先輩にソース・ヴァン・ブランとかベシャメルをスプーン1杯味見させてもらうことがあって。もう、『何だこのおいしさは!!』という衝撃ですよ(笑)」。なぜこんな味が作れるのか?という問いを抱き続けた。そしてカフェ、レストランでの先輩の補助、チーフの補助……と徐々にステップアップする際、「小麦粉とは何か」「卵とは」「アルコールとは」「煮詰めるとは」「乳化とは」「なぜこの分量なのか」など、素材や細かいプロセスへの探求を怠らなかった。「それが、自分の頭で料理を考える習慣になった。教えてもらえる時代ではないので厳しいけど、結果的に良かったんじゃないかな」と話す 。


シャラン産鴨のロースト、赤ワインソース

赤ワインを煮詰めた「核」が、味に深みを作る
皮目をカリッと、身をジューシーに焼き上げた鴨の胸肉を、鴨の風味の赤ワインソースとともに。ソースは、赤ワインをグッと煮詰めた核がありながら、ナチュラルな仕上がり。のびやか、かつ芯のある印象だ。

赤ワインを煮詰めて、ソースの「核」をしっかり作るのが最大のポイント。炒めたエシャロットに赤ワインを注ぎ、2割ほどの量になるまで煮詰め、ツヤやかな状態に。ここにフォン・ド・ヴォーを加えソースへと展開する。
赤ワインソースとは、赤ワインをツヤが出るまでよく煮詰め、フォン・ド・ヴォーをはじめとするフォン類を加えて再度煮詰める、というのが基本的な作り方。煮詰めたワインの深み、複雑で厚みのある酸味とうま味が、フォン類が持つ肉のうま味と一体化する。

また、「ソーシエ(ソース係)というのは、厨房の中でも一通り他のセクションを経た人が務める。それはとても理にかなっています」とも。ソースは料理の要。皿の要素をまとめる役割を担う。肉や魚を扱った経験があってこそ、的確なソースが作れる。ソースは、フランス料理の全キャリアの反映でもあるのだ。「料理自体の要であり、料理人としての総合力も反映するソースは、フランス料理そのものと言っていい存在です」。

レストラン ラフィナージュ
東京都中央区銀座5-9-16 GINZA-A5 2F
TEL 03-6274-6541
12:00 ~ 14:00 LO
18:00 ~ 20:00 LO
月・第3火 休

text 柴田泉 photo 山下亮一

本記事は雑誌料理王国2020年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年5月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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