シチリア料理の名店と聞いて、この店を思い起こす人は多いだろう。青山学院大学脇の、現在の場所に移転オープンして13年。今もなお、予約が取りにくいイタリアンとして、相変わらずの人気を誇る。
魅力は、シチリアの味にとことんこだわった料理と、フレンドリーで家族的な雰囲気。一歩店内に入ると、独特の世界観に引き込まれ、心を鷲づかみにされる。まさに、唯一無二の〝ドンチッチョ。ワールド〟。
それを下支えしているのが、まかない、と言っても過言ではない。
イタリアでは、下働きのスタッフでも、まかないではパスタとメインを食べる。「ドン チッチョ」もそれにならって、パスタとメインの2皿を用意するのが基本だ。
高価な食材はなるべく使わないようにする。基本的には、余った素材を使っている。営業時にゲストに提供する料理をまかないで作ることもあるが、例えば営業では松の実を使うところをピーナッツにするなど、素材を廉価なものに変えて作るようにしている。「パスタ アル フォルノ」も、ときどき店で提供している料理のひとつだ。
日々のメニューはまかない担当が決めるが、同じ素材を連続して使ったり、似たような味わいの料理が続いたりしないように心がけている。
材料(10人分)
米ナス・・・4本/アネレッティ・・・380g /サラミ・・・80g /エメンタールチーズ・・・80g /グリーンピース・・・70g /ゆで卵・・・5個/パルミジャーノ・レッジャーノ・・・2つかみ/カチョカヴァロチーズ・・・80g /ラグーソースとトマトソース・・・合わせて100cc /バター・・・ひとかけ/パン粉・・・適量
(1)-1. 米ナスを薄く切って素揚げする。
(1)-2. 型にバターを塗って、パン粉を全体にまぶす。
(1)-3. 素揚げした米ナス半量を型に敷いていく。
米ナスは2㎜くらいの厚さで、縦に切っていきます
素揚げした米ナスは、隙間ができないように型に敷き詰めていきます
(2)-1. ラグーソースとトマトソースを合わせ、そこにグリーンピースとゆでたパスタ、パルミジャーノ・レッジャーノ、カチョカヴァロチーズを混ぜ合わせる。
(2)-2. (2)-1の半量を型に流し込む。
アネレッティとは指輪型の小さなパスタで、シチリアならではのもの。これがパサパサしないようにするのがポイント
(3)-1. (2)の上に、サラミ、エメンタールチーズ、スライスしたゆで卵を重ねる。
(3)-2. (3)-1の上に、(2)の残りの半量を流し込む。
(3)-3. 素揚げした米ナスをさらに重ねる。
素揚げした米ナスとアネレッティの間に、サラミやエメンタールチーズ、スライスしたゆで卵をはさむイメージです
(4)-1. 上からパン粉をふる。
(4)-2. オーブンに入れて(A)(B)、30分くらい焼く。
トマトソース(C)を敷いた上に盛り付けます
店に入って4年、まかないを作り始めて3年が経つという杉山さん。「自分が作った料理だから、言い訳はできません。ですから、毎日、みんなの反応は気になるけれど、『おいしい』と言ってもらえたら、やっぱり嬉しいです。シェフやみんなから指摘されたことはきちんと受け止めて、次につなげるようにしています。とくにシェフの意見は営業時の注意点でもあるので、忘れないようにしています」。
材料(2人分)
鶏肉・・・半身/ミニトマト・・・4個/輪切りのナス・・・4個/黒オリーブ・・・4個/ケッパー・・・8個/オレガノ・・・2つまみ/ローズマリー・・・3㎝/イタリアンパセリ・・・適量/ニンニク・・・1片/ブロード・・・120 ~ 130cc /オリーブオイル、塩・コショウ・・・適量
(1)丸鶏を半身にして、塩・コショウをふる。フライパンを熱し、オリーブオイルを注いでニンニクを入れ、香りが出てきたら鶏肉を入れてソテーする。
鶏は縦に真っ二つに切って、掃除をしておきます
ニンニクも鶏肉も焦がさないように、中火でソテーします
(2)ソテーした鶏肉を耐熱皿に入れ、ミニトマト、輪切りにしたナス、黒オリーブ、ケッパー、オレガノ、ローズマリー、ブロードを合わせ、280℃に温めたオーブンで25分くらい焼く。
ブロードは耐熱皿のそこがひたるくらいの量でOK
(3)オーブンから出した後、耐熱皿を火にかけて、ソースを煮詰めて乳化させていく(A)。
ブロードは耐熱皿のそこがひたるくらいの量でOK
(4)最後にイタリアンパセリとオリーブオイルで仕上げる(B)。
耐熱容器のままブロードを煮詰めて、最後に塩をふります
イタリアンパセリはみじん切りにしてちらします
店に入って3年、まかないを担当するようになって2年という三上さん。「営業では、まだ料理を作ることはできません。ですから、まかないを作らせてもらえるのは、自分が成長していく上でとても良い機会だと思っています。メチャクチャ緊張はしますけれど・・・・・・。まかないのメニューも杉山さんたちと考えるのですが、思いつかなくなると料理雑誌を見て参考にすることもあります」。
Trattoria Siciliana Don Ciccio
トラットリア シチリアーナ ドン チッチョ
東京都渋谷区渋谷2-3-6 SGSSSビル1F
03-3498-1828
● 18:00~翌1:00(24:00LO)
● 予算 1人8000円~
● 日・祝日の月休
● 60人
山内章子=取材、文 依田佳子=撮影 text by Shoko Yamauchi photos by Yoshiko Yo
本記事は雑誌料理王国第297号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第297号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。