「イタリア料理のソースこそ、プロの技の見せつけどころ」
代々木上原に店を構えて4月で、ちょうど13年になるイタリア料理界の重鎮、見崎シェフはソースの重要性について語る。「旬やうま味をストレートに味わってほしい時はシンプルな調理に徹します。けれど、常に新しい料理を創りだすことが料理人の務めだと思うし、誰も想像できない料理を組み立てるためには、立体感のあるソースが必要です」。
立体感のあるソースとはーー。ペーストにして線を描くなど、一色単になりがちなソースだが、そこに異なる食感、温度差を組み合わせることで「高さが出る気がする」、と見崎シェフは言う。たとえば、生のカツオと焼いたカツオが味わえる「カツオのガルムソテー」は、4種類のソースで組み立てる。ベースとなる「リンゴとタマネギのソース」は、甘味を出したい時のシェフの隠し技のひとつ。リンゴの甘味に対して、ケイパーの塩気を合わせた。
ペースト状にしたソラマメとアイオリソースの滑らかな食感に対しては、素材そのものの歯ごたえを残すため、敢えて大きめに刻んだ生のカツオを加えた。本来なら対立するものを、共演させることで、料理はより複雑で立体的になる。
「オリジナルのソースというものは特にありません。直前に観た映画や、聴いた音楽から感じたイメージに沿って、食材を組み立てていく。それが僕のソースになるんです」
「ほわっと柔らかい女性」をイメージして生まれたというひと皿。生のカツオの柔らかさには、エッジのきいた強さが必要だと感じ、焼いたカツオの焦げ目で異なるタイプの女性のイメージを調和させた。まさに見崎流「立体」ソースの完成だ。
異なる食感、温度差を組み合わせることで立体感のあるソースができる
生のカツオのうま味と、焼いた時の香ばしさと温かさを4種類のソースでまとめたひと品。カツオは静岡県焼津産。配合を変えるとイナダ、サワラ、アジでもつくれる。
ソラマメのソース
ソラマメ…100ℊ/タマネギ…1/4個/アサリのだし汁…180ℊ
アイオリソース
ニンニク…₁ 片/卵黄…2個/エクストラヴァージンオリーブオイル…80ℊ/塩…少々/レモン汁…1/2個分
タマネギとリンゴのソース
リンゴのすりおろしたもの…100ℊ/タマネギをすりおろしたもの…80ℊ/アサリのだし汁…80㏄
カツオとトマトのソース
ケイパー(塩漬けしたもの)…30ℊ/グリーン、ブラックオリーブ(それぞれ塩水漬けしたもの)…各40ℊ/フルーツトマト…250ℊ/カツオの切り身…150ℊ/エストラゴン、イタリアンパセリ、バジリコ、塩、コショウ、エクストラヴァージンオリーブオイル…各適量
メキャベツのフリット
メキャベツ…2個/塩、ピュアオイル…適量
カツオのガルムソテー
カツオの切り身…100ℊ/ガルム、エクストラヴァージンオリーブオイル…各適量
Hidenori Misaki
1967年静岡県出身。バンド活動に励んだ高校卒業後、音楽を学ぶため単身渡伊。1年後、包丁捌きを見初められ、料理の世界へ転身。ナポリ、シチリア、リボルノなどで約6年間修業した後、1992年に帰国。「ホテル西洋銀座」などを経て2001年に同店をオープン。
料理王国=取材、文 村川荘兵衛=写真
本記事は雑誌料理王国2014年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2014年5月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。