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「ペレグリーノ」髙橋隼人さんが辿り着いた肉の調理


日本に上陸したてのバザス牛に4時間かけて火入れするぺレグリーノ─高橋隼人さん

数多くの美食家たちを唸らせてきたエミリア= ロマーニャ州の郷土料理の名店「ペレグリーノ」。舞台さながらの厨房で腕を振るうのは、オーナーシェフの高橋隼人さん。サービスも含め、すべてひとりで取り仕切る。

試行錯誤して辿り着いたオリジナルの調理法

フランス南西部に位置するボルドーから60kmのバザス村を中心に、限られた地域で飼育されるバ
ザス牛。春から夏は牧草地で遊牧された後、肥育される。繊細な繊維が格別。

今回の料理はフランス産バザス牛ロースの炭火焼きだ。30カ月未満の牛を現地で3週間熟成してある。頭数も少なく高価でもあるため、日本ではまだ数えるほどの店舗にしか入っていないという貴重な肉だ。「何といっても旨味の量が違う。味は確かです。よりおいしい肉を出したいと思って選びました」

熟成し、やや黒みを帯びたバザス牛の塊を、色と匂い、味で判断して劣化部分を取り除く。熟成と腐敗は表裏一体。臭くないところまでひたすら削り、結果として総重量の2分の1程度まで削り落とすという。

高橋さんが「試行錯誤してやっと辿り着いた」と語るのは、その調理法。最後は炭火で仕上げるが、「炭火だけで焼くとどうしてもムラができるから」と、炭で焼く前に約3時間かけて低温でじっくりと火を通していく。

まずは肉を冷たい銅鍋に入れ、極弱火のヒートトップレンジで50度になるまで30
分かけて温度をあげていく。肉の表面に薄く白い膜ができたら反転させ、温度を保ったままさらに30分というように全部の面を同様に繰り返す。

「銅鍋を使い、低温で火を通すことで均一に火が入ります。赤身の繊維を味わってほしいので、ゼラチンとスネの繊維を低温でじっくりほぐしていきます。赤身は冷えると繊維が収縮して固く感じてしまいますが、この方法だと冷めてもやわらかいままです」

炭は紀州備長炭。強火ではなく、火が落ち着いた頃合いで肉を乗せ、何度もひっくり返しながら焼いていく。厚い皮が少しついたところでフランスのフルール・ド・セルを全体に振り、仕上げに薄く切った発酵バターを肉の上に重ねて、炭火で溶かしながら全体にバターを絡ませて完成させる。

じっくり丁寧に火を通したバザス肉は、熟成の旨味と繊細な肉の質感が堪能できる極上の味わいだ。

フランス産バザス牛リブロースの炭火焼き
肉汁が全体にしたたっているジューシーな仕上がり。繊維もやわらかく、舌の上でほどけていく感覚。肉自体がおいしいので、付け合せは洋ナシのマスタードシロップ漬けのモスタルダのみ。ピリリときいた辛さとよく合う。

ヒートトップレンジにのせた銅鍋で表面に白い膜がつくまで低温で火を通す。銅鍋は熱が
上がりにくいが、上がったら一定に温度が保てる。肉を焼くのに適した調理器具だ。
上:コースの構成上、強火で魚を焼き、パスタ2品を挟んで炭火が落ち着いたところで肉
を焼く。下:時間をかけて焼かれた肉だけあって火の通り具合が均一。肉の色が美しい。
Hayato Takahashi

1978年新潟県生まれ。ワーキングホリデーで訪れたニュージーランドで料理に目覚め、日本各地のリストランテで経験を積んだ後、イタリアのパルマで1年間修行。2009年、西麻布にペレグリーノを開店。今年4月に恵比寿に移転し現在に至る。

ぺレグリーノ
PELLEGRINO
東京都渋谷区恵比寿2-3-4
☎03-6277-4697
●19:15開場、19:30料理一斉スタート
●月火木休
● お任せコース15000円(食前酒、ミネラルウォーター付き)
●6席
http://pellegrino.jp
※価格は税込み、サービス料別。

名須川ミサコ=取材、文 星野泰孝=撮影

本記事は雑誌料理王国256号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は256号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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