【シェフを魅了する日本の食材】大阪「本湖月」


「新鮮」「天然」「国産」ハレの日のための希少食材を求めて

本湖月 穴見秀生さん

「食材の本当の旨さを知った」「苦手なものが好きになった」と、「本湖月」の常連たちは口々に言う。当然ではあるが、同じ食材でも天然モノと養殖モノはまったく異なる、と言ってもいい。最初にどちらを口にするかでその後の食生活、人生まで変わる。「食材にはそれほどの力がある」と穴見秀生さんは言う。

カニしんじょの椀物。松葉ガニとヤマイモ、ハモのすり身などを合わせて蒸したものをお椀に。

本物の食材との出会いその感動を与え続けて

「料理屋は〝非日常〞の特別な場所」だから、とびきりの食材でもてなしたい。「馳走」の精神を貫きたい。山ブドウやサルナシなど、珍しい食材の調達にも熱心に動く。「うちのカウンターは食材との出会いの場所だから」と、自然薯の粘り強さに感動する客の様子を嬉しそうに眺める。「料理の旨さの半分は食材で決まる」から、バターやオイルなどは使わず、味付けは〝薄化粧〞と決めている。また、本物がないなら自分で作るのが穴見流。「片栗粉とは名ばかりで、じつはジャガイモ粉が主成分。それなら本物を作ろう」と、片栗の栽培を始めた。ただし原料の球根ができるには10年かかる。食材に「本気」の穴見さん。その感動を得たいから、今日も「本湖月」の暖簾をくぐる客は絶えない。

乾燥のフキは戻して佃煮にする。

山ブドウはジャムに。

天然の本シメジやイワタケはあぶったり、椀物に入れたりして、風味を損なわないように調理する。

Hideo ANAMI
1949年、福岡県生まれ。大阪の日本料理店で修業後、パリでJALの機内食を担当。帰国後、「中之島 吉兆」を経て法善寺横町の「湖月」の料理長に、1994年「湖月」を買い取り、「本湖月」としてオープン。


上村久留美=取材、文 村川荘兵衛=撮影

本記事は雑誌料理王国2013年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2013年1月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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