湘南の魚介類がサルデーニャ伝統パスタと出会う


白い極細の乾麺を湘南の食材とともに
フィリンデウ・アラ・ペスカトーラ

イル・リフージョ・ハヤマ 渡辺明さん

湘南・葉山。「イル・リフージョ・ハヤマ」は、海風がわたる心地よい一軒家のレストランだ。オーナーシェフの渡辺明さんは、ヴェネトの海辺の町やサルデーニャ島で修業を積み、2010年にこの店を開いた。

葉山の一軒家を改造した店内は風情たっぷり。緑豊かな庭には、オリーブの木が葉を広げ、ハーブが芳香を放っている。

そうめんのような白い乾麺「日本で使うのは私くらい」

フィリンデウは、サルデーニャ島ヌオロの町に伝わる伝統のパスタ。白い極細の乾麺はそうめんのようだ。現地では、ヤギのブロードに浸して食べるのが一般的という。「でも、私はあえて、佐島などの近港であがる新鮮な海の幸や、三浦半島の滋味たっぷりの野菜などを合わせています」と渡辺さん。

このあたりで獲れる伊勢エビはウニを、タコはサザエやアワビをエサにしているので味が違う、と渡辺さん。しかも渡辺さんは、贅沢に魚介を使うだけでなく、ストックしてある魚介のスープやエビの頭でとった出汁なども加え、やさしく奥深い味のブロードに仕上げていく。

「繊細なパスタに繊細なスープ。見た目は豪快ですが、味は複雑で細やか。そのギャップがポイントです」

サルデーニャの伝統パスタが、湘南の食材と“競演”して、やさしく五感を刺激する。

【レシピ】フィリンデウ・アラ・ペスカトーラ

アサリ、伊勢エビ、アカイカ、タコ、ウニ、トマトを贅沢につかったひと皿。食材はすべて地元産。バジルなどのハーブは、料理のたびに庭で摘んでくる。地産地消を具現化した料理は、素材そのものの旨さを感じさせつつ、フィリンデウの味わいも引き立てる。豪快さと繊細さが、絶妙なバランスで両立したひと皿である。

使っている豆「白インゲン豆」煮る

材料(2人分)

フィリンデウ…50g/アサリ…100g/伊勢エビ…1尾/アカイカ(中)…1杯/タコ…30g/ウニ…20g/トマト…1個/ウイキョウ…適量/バジル…適量/魚介のスープ…250㏄/エビの頭でとっただし汁…50㏄/白ワイン…適量/エクストラヴァージンオリーブオイル…適量

作り方

  1. フライパンに縦半分に割った伊勢エビとアサリを入れ、白ワインを加えて蓋をして蒸す。
  2. アサリの口が開いたら、ひと口大にカットしたトマト、バジル、スライスしたウイキョウ、魚介のスープを加えて火を入れる。
  3. 伊勢エビやアサリの身が固くならない程度に火が入ったら、伊勢エビとハマグリは取り出し、残ったスープにアカイカ、タコ、ウニ、エビの頭でとっただし汁を入れて火を入れる。
  4. 火が通ったら、フィリンデウを入れ、フィリンデウにスープを含ませる。水分が足りなければ、魚介のスープを加える。
  5. フィリンデウが柔らかくなってきたら、伊勢エビとアサリを再びフライパンに戻し、サッと煮込む。

小麦粉と水と塩で作るフィリンデウ
小麦粉を水と少量の塩で練って細長い棒状にしたら、手で1本を2本、2本を4本というように素早く延ばし続け、極々細くなったら、円盤状の板に格子状に乗せることを繰り返し、天日干しする。まさに職人技。

フィリンデウをそのままフライパンに入れる
材料のアサリや伊勢エビ、アカイカ、タコ、ウニ、トマトなどの旨みがしっかり出てきたところで、フィリンデウをそのままフライパンに入れ、出汁のきいたスープがフィリンデウに染み込むのを待つ。

取り出してあった伊勢エビやアサリをフライパンに戻す
フィリンデウにスープがしっかり染み込んできたら、身が固くなるのを防ぐために取り出しておいた伊勢エビやアサリを、再びフライパンに投入する。サッと火を通したら、完成だ。

Akira Watanabe
1974年、栃木県出身。24歳で料理人となる。2001年渡伊。トスカーナ州やヴェネト州などで約2年半修業。帰国後、「ラ ベットラ ダ オチアイ」を経て、05年に再渡伊。サルデーニャのイル・リフージョなどで働き、帰 国。2010年 に「イル・リフージョ・ハヤマ」を開く。

山内章子=取材、文 新山貴一=撮影

本記事は雑誌料理王国2014年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2014年8月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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