【レシピ付き】小手先の技ではなく、豆のおいしさをシンプルに「ラス」兼子大輔さん


奇をてらうことなく、シンプルだがしっかりとした、メッセージ性のある料理を発信する。「白インゲン豆のスープ」は、ラスのオーナーシェフ、兼子大輔さんらしいひと皿だ。 

素材は白インゲン豆のほかニンジン、タマネギ、セロリ、タイムなど、潔いよいほど特別な食材は使っていない。しかしその代わり調理に要する時間は4日。時間と労力は、たっぷりとかけてあるのだ。

シンプルな料理であるほど料理人の力量が試される

「料理はシンプルであるほど、おいしく仕上げるために技術を必要とします。技術以外にもセンスやバランス感覚なども大切な要素で、ごまかしなどは一切効きません。そういう意味で白インゲン豆のスープは、私がいちばん好きな料理です。

このスープは、豆の持つおいしさや味わいがありのままに伝わり、食べた人の感性や心に訴えることができる料理だと考えています」と、兼子さんはこのスープで応募した理由を話す。

日々の料理は、一つひとつの当たり前な作業をまじめに丁寧に行う。料理に向かう真摯な姿と、兼子さんの誠実な人柄が凝縮されたスープである。

【レシピ】白インゲン豆のスープ

白インゲン豆をタマネギやタイム、セロリ、ニンジン、白ワイン、塩、豚の脂とともに火にかけ、一晩休ませ、また火にかけるというシンプルな料理。しかしそこには、兼子さんの経験やセンス、知識が凝縮されている。

使っている豆「白インゲン豆」煮る

材料(4人分)

●スープ 白インゲン豆…125g/白ワイン…200cc/ 水 …375g/ラルド…100g/タマネギ…50g/オリーブオイル…20g
●ミルポワ タイム…10g /ニンジン…100g /セロリ…100g
●仕上げ 塩、黒コショウ…少々/EXオリーブオイル…50g

作り方 <ていねいに手間暇かける>

  1. 白インゲン豆を水375gに入れ48時間浸す。
  2. タマネギをアッシェにして、オリーブオイル20gでスュエする。
  3. タイム、セロリをひもで縛る。
  4. ニンジンを縦4等分にカットする。

火入れ

  1. 下ごしらえした1~4を白ワイン、塩(下味程度)、ラルドを鍋に入れ沸騰させる。沸いたら極弱火にして蓋をし、2時間30分火にかける。
  2. ミルポワ、ラルドを鍋から取り出しひと晩休ませる。
    ※ この時溶け出したラルド、細かく崩れたラルド、浮いた脂やアクなどは一切取らない。
    ※ この時点で全体量が560gになるように仕上げる。必要なら水分を足す。
  3. 翌日110gの水を足して再度極弱火で蓋をし、1時間煮る。
    ※ 再度仕上げを560gに合わせて、塩で味をととのえる。
  4. 最低ひと晩休ませる。

仕上げ

  1. 鍋に前日煮た豆を入れ中火でゆっくり温める。
    温めながら木ベラやディッシャーで豆を適度につぶす。
    ※つぶし過ぎない。あくまで自然に煮崩れた様に仕上げる。
  2. 塩で味を再度ととのえる。濃度が強ければ水を足して調整する。
  3. 温かい皿に盛り、上からEXオリーブオイルを回しかけ、黒コショウをひく。

兼子シェフの発想と技

  1. アクも一切取らない
  2. 4日がかりのスープ

Daisuke Kaneko
1979年、広島県出身。辻学園調理専門学校卒業。「ラ・ ベ ガ ス」(大 阪)、「コートドール」(東京)、「バランドル」(カオール)、「サンドランス」(パリ)、「カラペティバトゥバ」(東京)を経て、2012年にオーナーシェフとして南青山に「L’AS」を開店。

上村久留美=取材、文 星野泰孝=撮影

本記事は雑誌料理王国2014年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2014年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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