本場イタリアのシェフが語るパスタの世界 シチリア州「シャビカ」 19年11月号


2018年11月にIGC(国際穀物理事会)が公表した2018-2019年の生産データによると、イタリアはヨーロッパにおけるデュラムセモリナの生産、及び輸出量第1位にある。世界のデュラムセモリナ生産量4.2百万トンのうち11%がイタリアで生産され、そしてパスタにおいては過去20年間に世界中のパスタ消費量は63%上昇し、現在は14.8百万トンに及ぶ。イタリアの生産と消費量はともに世界第1位だ。イタリアからは世界約200カ国に向けてパスタが輸出され、その中心はスパゲッティであるが、イタリア国内では地方ごとに異なった形状のパスタが存在し、手打ち麺を含めると、パスタの形状も名前も星の数ほどあると言われている。まさにパスタ国なのである。そんなイタリアの一流シェフたちはパスタをどのように捉えているのか。

手打ち麺と乾麺には異なる歴史と異なる調理法がある

シチリア州東南部は、イタリアを代表するグルメ食材の宝庫である。ブロンテ産ピスタッキオ、エトナワイン、パッケリ種のチェリートマト、レモン、レッドオレンジ、アーモンド、トンダ・イブレア種のオリーブと枚挙にいとまがない。そしてシチリア州はイタリア第2位のデュラムセモリナ生産地でもある。

若きシェフ、ジョゼフ・ミケーリは、幼い頃から泳ぎに通い、地元の漁師たちと親交の深いシチリア州東南部プンタ・セッカの海岸に自分の店を初めて開いた。最初に開いたカジュアルなシーフード店に続き、すぐそばに2軒目のハイクラスなレストランをオープンした。毎日知り合いの漁師が届けてくれる新鮮な魚介を使った料理の数々が自慢で、2軒のレストランのクオリティは多くのシェフやグルメたちから注目を浴びている。この店の人気メニューは、マグロのパッケリとウニのスパゲッティ。マグロをミートソースにしてヤギのクリームチーズをほんのりと和え、大きなパッケリとトーストしたパン粉で仕上げる。ジョゼフにとって何より大切なのは、パスタのクオリティに加えて、鍋の中でソースと絡ませるタイミングだと言う。仕上がりを頭の中で描きながら、新鮮な魚介を目の前にしてどの形状のパスタに合わせるか決める。魚や貝の大きさによって火の通る時間が異なるため、それぞれの具材に最適なパスタの形状を選ぶ。

Pacchero della nonna/おばあちゃんのパッケロ (euro 18)
Aʼ sicca /ア・シッカ バジリコの香りのオリーブオイルとウニを絡めたスパゲッティ (euro 24)

ジョゼフは、「手打ちパスタは農家の知恵で、小麦粉と卵さえあれば作ることができる。一方乾麺の生産はパスタ打ち名人の知恵と経験の賜物。つまり上質の小麦粉と卵に加えて、技術力が必要だ。実は乾麺ってとても複雑」と教えてくれた。イタリア人にとってパスタは家庭の味で、日曜のランチにパスタは欠かせない。イタリア国外では、国のアイデンティティとされている。休みの日には、普段店のメニューにはないポルチーニを絡めたタリアテッレがフリーの象徴だと語った。

Lungomare Amerigo Vespucci, 97017
Punta Secca (RG)
TEL 0932 1836006
http://www.josephmicieli.it/

text 山田美知世
イタリア在住38年。イタリア共和国公認日本人初のオリーブオイル鑑定士。AIPO,Sol d’Oro、NYIOOC、JOOPの審査員。イタリアの出版社より「ARTE DI SUSHI」「RAMEN」「SAKE」など数々の本を出版。

本記事は雑誌料理王国2019年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年11月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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