本場イタリアのシェフが語るパスタの世界 プーリア州「アレックス・リストランテ」 19年11月号


2018年11月にIGC(国際穀物理事会)が公表した2018-2019年の生産データによると、イタリアはヨーロッパにおけるデュラムセモリナの生産、及び輸出量第1位にある。世界のデュラムセモリナ生産量4.2百万トンのうち11%がイタリアで生産され、そしてパスタにおいては過去20年間に世界中のパスタ消費量は63%上昇し、現在は14.8百万トンに及ぶ。イタリアの生産と消費量はともに世界第1位だ。イタリアからは世界約200カ国に向けてパスタが輸出され、その中心はスパゲッティであるが、イタリア国内では地方ごとに異なった形状のパスタが存在し、手打ち麺を含めると、パスタの形状も名前も星の数ほどあると言われている。まさにパスタ国なのである。そんなイタリアの一流シェフたちはパスタをどのように捉えているのか。

パスタはイタリア料理のシンボル

南のフィレンツェと称されるレッチェは、プーリア州の文化の中心地と言える。そしてプーリア州はイタリアにおけるデュラムセモリナの最大生産地でもある。この街のレストランの厨房で25名の男性シェフたちを率いる1986年生まれの女性シェフがアレッサンドラ・チヴィッラである。2016年にはガンベロ・ロッソから、サレント地方のベスト・レストランに若干30歳にして選ばれた。

店のスペシャリティは、アレッサンドラが子供の頃、毎週日曜の朝、母が作ってくれた料理の香りと味を再現した「家庭の香り」。シーフードを長時間かけて煮込んだスープと、様々な形状の混じったミスキアート・ポテンテと呼ばれるショートパスタが優しく融合し、ひと口目から幸せな気持ちに癒してくれるひと皿だ。

Profumo di casa/様々な形状のパスタのシーフードソース家庭の味 (euro 22)

この店では、魚のスープには細かい形状のパスタ、新鮮なウニにはロングパスタ、そして完熟トマトを贅沢に使うトマトソースには豪快に太いスパゲッティを組み合わせている。

Linguina ai ricci/ウニのリングイネ (euro 20)

シェフのアレッサンドラにとって、「表面をざらつかせてソースが絡みやすく工夫した手打ちでも、食材とのバランスは乾麺に秀でるものはない。だからボンゴレにはスパゲッティが最強のマッチング」と乾麺にこだわる。また、メインとしてサービスされるセコンドは大切な料理だけれど、パスタにはシェフの愛情そのものが表現されるのだそうだ。パスタはイタリア料理のシンボル。彼女が休日に最も楽しみにしているパスタ料理は、今も母が毎週時間をかけて手作りしてくれるミートソースとベシャメルソースにミートボールの入ったオーブン焼きパスタ「パスタ・アル・フォルノ」。

Via Vito Fazzi 15/23, 73100 Lecce
TEL 320 8034258
https://alexristorantelecce.it/

text 山田美知世
イタリア在住38年。イタリア共和国公認日本人初のオリーブオイル鑑定士。AIPO,Sol d’Oro、NYIOOC、JOOPの審査員。イタリアの出版社より「ARTE DI SUSHI」「RAMEN」「SAKE」など数々の本を出版。

本記事は雑誌料理王国2019年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年11月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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