新旧の良き酒場 的確な料理と正しい酒、楽しい会話添え。「酒場以上、割烹未満」の極上居酒屋。


緻密な下ごしらえと的確な調理に支えられた“いちいち美味い”料理。吟味を重ねた酒の種類が豊富で、カウンターを挟んで会話も弾む。間違いなく上質な割烹の店だが、盃を重ねる時間は“酒場”のそれ。

洋食、和食、フランス料理、居酒屋と経てこの店を構えた金子祐二大将。独立の際に考えたのは「笑顔で食べてもらえる店にしたい」。結論は「居酒屋」だった。その意味はカウンターに座れば実感できる。高低差やネタケースで隔たれることなく、客から金子さんの所作は丸見えだが、金子さんからも客の笑顔が丸見え。しかも絶妙な距離感でカウンターの内外で礼が保たれ、料理そのものが品位を保つ。

「私自身もお客様との会話を楽しみたい」という金子さんの願いが伝わる明け透けなカウンター。居酒屋というがカウンターもテーブル席(4人×2席)も余裕たっぷり。
洋食の腕が冴える「メンチカツ」(1200円/2個)。秋田県岩波農場の豚と黒毛牛のすね肉を粗く合い挽き。割れば肉の香りが、食せば肉の旨みが迸る。前割りの麦焼酎と。


例えば味わいと食感の変化を楽しめる刺身の盛り合わせ(6種)。その時最も美味しい旬の魚介は、それぞれ包丁の入れ方を変える。図らずもこの1皿で魚種によって酒を換えたいという気持ちが首をもたげるほどの変化が楽しい。

「刺身盛り合わせ」(1人前3000円~。写真は2人前)。少し炙り1時間ヅケた氷見のブリ、昆布で1日〆たカマス、胴の肉と味噌をあえた松葉ガニなどの6種が居並ぶ。
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わさび、からし醤油、塩とすだちなど6種の刺身にはそれぞれ最適な組み合わせを提示。細かい仕事とこだわりだが「これはあくまでもおすすめ。お好きなように」と金子さん。
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「日本橋はすべてのものが集まってくる場所。 “どこ産”にこだわらず、その日に市場で得た良いと思うものを出したい」という金子さん。日本橋だからこそ、にこだわる。
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「小松菜とほっき貝の山椒オイル和え」(900円)。自家製の山椒オイルとお店と縁のある長野のワイナリーのソーヴィニヨン・ブランが織りなす爽やかな苦みが心地良い。


その酒の揃えが、またいい。日本酒も焼酎も全国から幅広く揃えられ、日本ワインも豊富。定番で味わえる豊富な燗酒や東京の島焼酎が酒好きをくすぐる。料理に合わせるという前提で人気のブランドより蔵元やワインメーカーとの縁を大切にするから、ただ飲むだけでもなく蘊蓄を披露し合う酒でもない。料理が目の前で的確につくられ、酒と会話もつい進む。
「酒場以上、割烹未満」。この店のカウンターには上質な時間が約束されている。

釉月

東京都中央区東日本橋3-4-1 THE GATE
NIHONBASHI EAST M1F
TEL 090-1251-4165
月~金 18:00~21:30(最終入店)
土 18:00~20:30(最終入店)
日祝・第1・3・5土休


text 岩瀬大二 photo 鈴木泰介

本記事は雑誌料理王国2020年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年2月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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