食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

【渋谷】伝統の旨さをストレートに表現する「タロス」


味だけでなく、島の大自然も
まるごと体感できる空間をめざす

イタリア半島の西方、温暖な地中海性気候のサルデーニャ島には、人々とともに羊が暮らし、フラミンゴが生息する。自然豊かなこの島は、古くから開け、18世紀にはピエモンテを領してサルデーニャ王国として歩み始め、イタリア王国の前身となった。アラブや北アフリカの影響を受けて、多彩な食文化も花開くこの島に魅了されたのが馬場圭太郎さん。サルデーニャでの修業を終えると、郷土料理の知識だけでなく、島への憧れも持ち帰って、2007年、渋谷に「タロス」をオープンさせた。

貝類とチェリートマトのフレーグラ

サルデーニャ名物の粒状のパスタ、フレーグラは、イタリア本土でもあまり馴染みのない珍しい食材。魚介のソースと合わせるのが一般的で、大きさは、2~3mm のものから、7mm くらいのものまである。サルデーニャ産のオリーブオイルで調理する。

数種の貝から出たエキスを小粒のパスタに染み込ませる

①鍋に食材を入れ強火で炒める
鍋にオリーブオイルを敷き、硬めにゆでたパスタ、貝、トマトなどを入れて火にかける。

②水を入れてさらに炒める
トマトは味が出やすいように少しつぶしておく。2、3分ほど強火で炒めたら、水を注ぐ。

③ふたをして蒸し煮にする
中火にして、さらに炒めたら、パスタがやわらかくなるまで、15分ほど煮込む。

④仕上げにオイルをかける
イタリアンパセリを入れ、塩などで味を調えたら、オリーブオイルをかけて盛り付ける。

新鮮な旬の食材を使うことが一番のポイントです
地産地消の島の味に近づけるには、まず新鮮な魚介を使うこと。貝は1種類でもかまいませんが、味にバリエーションを出すために、今回はアサリ、ハマグリ、白ハマグリ、白貝、ムール貝を使いました。

伝統の旨さをストレートに表現する

「日本でサルデーニャを知る人はまだ多くはないのですが、サルデーニャというキーワードに、うちの店を思い出してもらえるようになったら嬉しいですね」。こう言って、馬場さんが、ひと品目に調理してくれたのが、島ならではのパスタ、フレーグラを使った「貝類とチェリートマトのフレーグラ」だ。フレーグラ発祥の地は、州都カリアリ。大きなクスクスのような粒状のパスタは、そのめずらしい食感から話題となり、今では、「タロス」を訪れる客の約8割が注文する人気のメニューとなった。それにしても、開店当初、認知度の低い地域の料理で勝負することに、不安はなかったのだろうか。

「自分が〝これだ!〞と感じたものに対しては深く考えず、素直に行動するのが僕のやり方。めずらしくておいしいから、日本で紹介したい。ただそれだけですよ」と語る馬場さんだが、実はすでに15年前から「これからのイタリア料理は地方の時代」と予測していた。だからこそ修業先にも、当時知られていなかったサルデーニャを選んだのだった。

ゲストを楽しませる雰囲気とサービスを

馬場さんがめざすのは、誰もが気軽に楽しめて、値段以上の満足感を得られる店。たとえば、魚介類をふんだんに使った「タロス風自家製小皿前菜」は、日替わりで8品ほど用意されていて5品から選べるシステムだが、その値段は5品で1200円とリーズナブル。塩やオリーブオイル、ワインやカラスミなど、一部
の食材はサルデーニャ産にこだわっているが、できるだけ日本の旬の食材を使って価格を抑えている。「料理だけでなく、お客さまを楽しませる雰囲気作りにも気を配っています」との言葉どおり、突然、バースデーケーキが出てきて驚いたという人も。「男性が女性に贈り物をしているのを見て、誕生日と気づいたものですから、お店からはケーキをプレゼントしました」。

安くて旨いサルデーニャ料理をモットーに。

喜びをみんなで共有するのもサルデーニャ流なのだ。また、自分が肌で感じた島の雰囲気を再現しようと、のこぎりを手に店内の内装を手がけることもある。

以前は知られていなかった遠い島の伝統の味を東京で定着させた馬場さん。シェフの思いは、郷土の味を未来へとつないでいくことだろう。

羊肉の煮込みのオーブン焼き

サルデーニャの肉料理には羊肉や豚肉が使われることが多い。羊肉の煮込みには、野菜やトマトソース、コショウ、ローリエのほか、酸味と甘味のバランスのよいサルデーニャ産のワインを使う。

サクッと焼き上げるため、羊肉を汁がなくなるまで煮る

①ひと晩寝かせた羊肉の煮込みをパイ生地で包む
羊肉は玉ネギ、セロリ、ニンニクなどと一緒にやわらかくなるまで2時間ほど煮込む。途中、煮汁だけを取り出して煮詰める。

②180℃のオーブンで約15分焼き、トマトなどを添える
焼き上がったら、トマトやハーブなどを添えて盛り付ける。サルデーニャ特産のコルクや木皿に盛って、家庭料理の雰囲気を出す。

日本の食材を活かした小皿前菜

築地直送の魚介や旬の野菜でサルデーニャの郷土の味を再現

ヒシコイワシのマリネ

ヒシコイワシは、頭や内臓を取ってそうじをし、5%の塩でマリネする。香り付けに、旬のタンカンの皮をマリネ液に。2時間ほどマリネしたら、洗って、さらに2時間、ビネガーでしめる。

マグロのボイル

イタリアンパセリの軸、塩、ローリエ、オレンジを入れた湯で20分ほどマグロをボイル。火を入れすぎないように注意。冷めたらカットし、酢漬けのケイパーとオイルで作ったソースをかける。

手長ダコのガーリックソテー

タコはぬめりをとり、ひと口サイズにカットする。フライパンにオリーブオイルとみじん切りのニンニクを入れ、さらにタコを入れて加熱。ゆでたスナップエンドウを加えて、塩で味付けする。

エビとヒヨコ豆のサラダ

エビはニンニクオイルを使って強火で炒め、塩で味付け。ヒヨコ豆は戻し、ローズマリーやオイルを入れて30分ほど塩ゆでにして、半分はペースト状にする。すべてを混ぜ合わせ、ミルトの葉を添える。

Keitaro Baba

1971年、新潟県生まれ。都内のフランス料理店とイタリア料理店を経て、94年渡伊。トスカーナ、サルデーニャ、シチリアなどで約5年間修業する。表参道「ナプレ」、赤坂「ラ・スコリエーラ」のシェフを経て、2007年「タロス」を開店。

タロス
Tharros

東京都渋谷区道玄坂1-5-2
渋谷SEDEビル1F
☎03-3464-8511
● 11:30~15:30(14:00LO)
12:00~15:30(14:30LO 土、祝)
14:00~15:30( ティータイム)
18:00~24:00(22:30LO)
● 無休
● コース 昼1050円~ 
 夜5000円、アラカルト
● 65席
www.tharros.jp

本記事は雑誌料理王国225号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は225号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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