2023年12月26日
線が細くて一見頼りなげに見える田波夫妻。だが、ふたりとも強い意志の持ち主だ。「これまでも人の意見に惑わされることなく、自分の価値観を大切に生きてきた」と口を揃える。友人の紹介で20年ほど前に出会ったふたりは、憲二さんが千葉、頼子さんが東京の出身。憲二さんは大学卒業後、通信会社で電話回線をつなぐ仕事に携わっていたが、「長野県で一緒にツリーハウスを作る仕事をしよう」という頼子さんの提案に共感。入社8カ月で会社を辞めた。「トム・ソーヤ」の世界こそ、頼子さんの憧れ。交際2年目のことだった。
さらに、仕事最優先の人生は選びたくない。自分たちが幸せと感じるライフスタイルを貫きたいと思ったふたりは、理想の暮らしを探して日本各地を旅した。原付バイクにテントを積んで1カ月半かけて沖縄をめざし、サトウキビの収穫で生活費を稼いだこともある。
その後、一度東京に戻ってアルバイトに精を出し、キャンピングカーを購入すると、今度は本州から四国方面へ。高知では友だちもできた。キャンピングカーに寝泊まりしていると仕事を世話する人がいて、道の駅で働き、高知県でもサトウキビの収穫を手伝った。「ここは暮らすのによいところ」。そのまま高知県に住んで入籍。本格的な黒糖作りへと踏み出したのだ。