食の未来が見えるウェブマガジン

シェフが惹かれる生産者。高知県・黒潮町【黒糖】


五感で炊き上げる伝統の製法こそ
現代のオリジナリティ

無農薬にこだわったサトウキビ栽培

黒糖の原料となるサトウキビ栽培については沖縄県が有名だが、高知県も昔からサトウキビ栽培の適地とされ、黒糖作りが盛んに行われてきた。高知でのサトウキビの収穫時期は11〜12月。余分な栄養分が抜け切ったサトウキビほど、炊き上げると良い黒糖になる。サトウキビに余分な栄養分が残っていると、ベタついた仕上がりになってしまうという。

「ですから収穫期までに余分な栄養分を抜き切るのがポイント。化学肥料を使うとこの調整が簡単なのですが、私たちのように有機物にこだわると加減が難しいんです」

農薬や化学肥料を一切使わずに育てたサトウキビを、昔ながらの製法でじっくりと炊き上げて黒糖を作っている。
農薬や化学肥料を一切使わずに育てたサトウキビを11~12月にかけて収穫。これを昔ながらの製法で16時間ほどじっくりと炊き上げて黒糖を作る。

常識を鵜吞みにせず自分たちで答えを探していく

高知で本格的な黒糖作りを始めて9年になる田波憲二さん、頼子さん夫妻は、化学肥料を使わない独自の方法でサトウキビ栽培を行おうとした。当初は先輩たちに止められたという。近くの港で水揚げされた魚を有機肥料とし、サトウキビの搾りかすや葉を畑に戻そうと考えたのだ。

独学で導き出した栽培法が成功するはずがない――。しかし、2年もすると田波夫妻が営む「上樫森」の土壌はどんどん良くなっていった。周辺の畑で虫が出ても、上樫森にはトラブルが及ばない。それを間近で見ていた農業関係者の中には、田波方式を真似る人も出てきた。

サトウキビは収穫の際に先端部分を切り落とすが、どこまで残して切り落とすかは、収穫する人の経験と勘による。この見極めも黒糖のできに大きく影響するそうだ。
サトウキビは収穫の際に先端部分を切り落とすが、どこまで残して切り落とすかは、収穫する人の経験と勘による。この見極めも黒糖のできに大きく影響するそうだ。

次ページ:田波夫妻の【黒糖】作りまでの人生の選択肢


SNSでフォローする