熊本の食材は、なぜ“外食の武器”になるのか


料理王国100選プロデューサーの中村が、食材探しの現場からレポートする「料理王国100選日記」。今回は熊本県の食材についてお届けします。

「料理王国100選」は、熱意ある生産者・メーカーからの公募品など、これまでに累計1,200商品以上を審査してきた、15年以上続く品評会です。
料理王国100選で高く評価されるということは、単に彼らの評価を聞くことが出来るというだけでなく、食品専門店の店頭やトップシェフたちのレストランのメニューに並ぶチャンスを得る、ということです。
私はプロデューサーとして公募された製品を審査するだけでなく、できるだけ地方へ足を運び、その地域ならではの伝統や風土を生かした食材を探し、生産者に「料理王国100選」をご案内することもしています。今回の熊本訪問は、まさにその延長線上にある食材探しの旅でした。

熊本の食の基礎データ

まず、熊本の食の強さを示す“土台”を、数字で押さえておきたいと思います。

  • GI(地理的表示)保護制度は全国一の10産品が登録されている。
  • 令和6年の調査で、農業産出額は全国6位(生産農業所得は3位)。農業が非常に盛ん。
  • 野菜、畜産、果実等、多様な品目がバランスよく生産されているのが特徴。

このように、熊本県は食材の産地としてポテンシャルは高いと考えています。

熊本は「水」の県であり、「食」の県でもある

熊本県は「火の国」として世界有数の活火山である阿蘇山のイメージも強く、この阿蘇の雄大なカルデラ地形と火山灰土がもたらす自然のろ過プロセスで、地下水がとても豊富です。料理人にとって水は重要ですが、水の恵みが豊かであることは、食を語る上で特に大事ではないでしょうか。そんな水の県でもある熊本にはどんな食材があるのか、今回の産地巡りを楽しみにしていました。

現地訪問で出合った熊本食材

今回は、何名かのバイヤーさんらも同行し、産地を周ります。
スケジュールの都合上、前泊して早朝から翌日の昼までという1日半の中で県南から阿蘇、そして天草まで移動する強行軍でしたが、4名の生産者さんを訪問することができました。

ふだん草:“青さ”が料理の輪郭を立てる葉物

伝統野菜の「ひご野菜」としてふだん草を栽培している清正農園の西 孝弘さん。肉厚で力強い葉が特徴で、わずかに塩味を感じる青菜。加熱すると緑が濃くなり、シャキッとした歯応えと甘さが出てきます。厚みのある葉で肉などの主食材の隣でも存在感を発揮する野菜です。

フルーツセロリ:セロリ嫌いを裏切る、季節限定の香り

同じく清正農園の西 孝弘さんが栽培する2〜4月ごろしかできないフルーツセロリ。ほんのり甘くて苦味が少なく、セロリが苦手な方からも「美味しい」と言われるそうです。前菜や冷菜にも相性が良いと感じました。

菊池水田ごぼう:あくぬきが必要なく、柔らかい

水田を活用して育てることで、まっすぐと柔らかく仕上がりやすい、熊本県のGI産品。
菊池地域は畜産地帯で良質な堆肥が豊富ということで、それを活かすための「耕畜連携」の取組みをしているそうです。そして収穫後、各生産者が灰汁抜きを行い出荷しているため、流水にさらす程度で十分というくらいに灰汁が少なく、通常の洗いごぼうとは違うことを勉強しました。

菊池水田ごぼう

くまもと あか牛:阿蘇がつくる赤身のうま味

阿蘇郡産山村で、あか牛生産者の一人「井信行(い のぶゆき)」さんの信行牛を見学できました。飼料は、菊池産の大豆や自家製の米ぬか、飼料米など阿蘇地域を中心とした国産にこだわっています。
赤身が多く、適度な脂肪が混ざったあっさりとした肉質は、阿蘇の高冷地という環境と豊かな水によるものです。

くまもと あか牛

天草のクルマエビ:甘みと食感は、環境と管理から生まれる

天草はクルマエビの養殖において100年以上の歴史を持ち、日本有数のブランドクルマエビが生まれます。株式会社クリエーションWEB PLANNINGの代表、深川沙央里さんを訪問。
天草のクルマエビはミネラル豊富な海と徹底した管理によって、強い甘みとプリプリとした食感、濃厚なうま味が特徴ですが、中でもここの陸上養殖は抗生剤や成長剤を⼀切使わないオーガニック育成にこだわっているのが特徴です。刺身でいただきましたが、上品な甘みが素晴らしかったです。

天草大王:日本最大級の地鶏

日本最大級の肉用地鶏。天草大王の生産者、姫コッコ倶楽部の山口博子さんにお話を伺いました。

目の前に八代海を見下ろせる、風通しがとても良い農場で恵まれた自然環境です。
遺伝子組み換えのない独自配合の飼料で肥育され、日数はオスで120日以上、メスで130日以上。一般的な地鶏が75日以上なので、ずいぶんな長期肥育。
国内でも最大級の鶏ということで、とても大きな鶏でしたが、思ったよりおとなしかったです。
肉質は歯ごたえとコクのある旨みが特徴で炭火焼きや鍋物など、鶏そのものがメイン素材となる料理に向きます。

熊本食材は、すでに外食の現場で動き始めている

産地巡りを経て、参加したバイヤーの販売店や料理店の現場で熊本食材が採用されました。このことは、熊本食材が単にストーリーがあって語れるというだけでなく、実用できるだけの品質を備えていることを示しています。

DEAN & DELUCAのデリ惣菜での採用例

シェフ、バイヤーが出逢った“つくり手”と“食材”をそのままメニューにし、お客様の食卓へ届けることで「食の物語のある食卓」を提供するプロジェクト『MEET LOCAL』に採用され、恵比寿店と横浜店でデリ惣菜として展開。(2026年2月6日〜3月1日迄)
スケジュールの都合で訪問できなかった蘇鉄園芸の蘇鉄国光さんが有明海の干拓地で作る高糖度トマト“潮トマト”もカプレーゼやサラダとして提供されました。

天草大王のバロティーヌ 菊池水田ごぼうのソース
清正農園ふだん草とサーモンのテリーヌ トマトクリームソース

お料理 宮本での採用例

大阪市北区東天満のミシュラン二つ星店「お料理 宮本」でも採用。
今回は訪問できなかった赤ナスや南関揚げ、タケノコ、イチゴ(ゆうべに)など、熊本食材を巧みに使った料理はどれもホッとする良い味でした。

(店内の撮影はできませんが、特別に許可をいただき、熊本食材を使用している品のみ撮影しています)

ふだん草と筍と南関揚げの炊き合わせ
車海老と赤茄子と菜の花の冷製
天草大王と菊池水田ごぼうの親子丼
ゆうべに苺とブランマンジェ

熊本は、阿蘇山〜水〜農業というベースがあり、農作物だけでなく畜産・水産まで高いレベルでつながった食材の宝庫です。エリアも広く、一口には語り尽くせない広がりがある県で、とても1日で回ることは不可能です。味の芯が強い食材も多く、和食、イタリアン、フレンチ、中華等どんな料理にも合わせられます。また、外食店に限らず、熊本食材を関東や関西でも手軽に買える販売店が増えれば良いと思いました。

熊本県食材/熊本県GI食材についてのお問い合わせ
熊本県 農林水産部 食のみやこ推進局流通アグリビジネス課

TEL:096-333-2470
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/73/

「料理王国 100選」事務局
https://cuisine-kingdom.com/100item
担当:中村和久

text:中村和久(料理王国100選プロデューサー)

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