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料理人が惚れる、肉の匠直伝!「揚げ焼き」で肉が何倍もおいしくなる


茂野眞さん ルキャトーズィエム
フライパンの火入れ

余分な水分を高温の油で飛ばし、肉の旨味を凝縮

 肉をたっぷりの油で揚げながら焼く「揚げ焼き」という技法。その最大の魅力は、余分な水分を高温の油で飛ばすことで凝縮された肉の旨味である。その旨味を逃さないのが、肉表面にできるキャラメル。火の通り具合を見ながら油をていねいにアロゼすることで、残したい味や香りだけを閉じ込めることができるのだ。

 その工程において何より重要なのは、肉が焼ける時の音を聞き分け、火入れの加減をコントロールすること。高温の油で火を通す場合、焼き上がるまでの時間は早く、機を逃すと旨味がすべて飛び、パサパサとした食感だけが残ってしまう。そのため、フライパン手前に油を集めて揚げ焼きするスペース、奥に焼きながらアロゼするスペースを作り、火の通り具合によって使い分けている。「肉の水分が抜けていくと、油の跳ねる音が乾いた音に変化します。油が高温になりすぎると油が酸化し、肉も酸化します。肉が焼ける匂いにも注意が必要です」

 揚げ焼きにおいては、肉の脂が調味料といっても過言ではない。そのため、肉選びから徹底し、現在、店で出される肉は、近江の木下牧場で自家配合の飼料を食べて育った近江牛「木下牛」がほとんど。発酵バターのような芳醇な香りと体温で溶けるフレッシュな脂が、揚げ焼きによって肉の旨味を存分に引き出すのだ。

茂野 眞さんによる【フライパン】の火入れ全工程

工程1
0~2℃で保管した肉は、営業開始とともに外に出して常温に戻しておく。肉をアルミホイルで包むのは酸化を防ぐため。

工程2
油の量は肉の種類や厚さによって変わるが、おおむね肉の1/3ほどが浸る程度が目安。油はなるべく軽く揚げ焼きできるサラダ油を使用。

工程3
手前に油を集める
フライパンからうっすら煙が立つまで熱する。適温になればフライパンの手前側に油を集めて肉を置き、油に浸すように揚げ焼きする。

工程4
片面に焼き色がついたら肉をトングでひっくり返す。この面も手前に集めた油で揚げ焼きにし、表面にしっかり焼き色をつける。

工程5
肉に含まれていた水分がある程度飛んだら、レードルですくった油を絶え間なく表面にアロゼしながら両面に熱を通す。

工程6
肉表面にキャラメルを作る
肉全体にある程度火が通ってきたら、肉をフライパンの奥側に置き、アロゼと微妙な火加減で肉表面にキャラメルを作る。

工程7
水分の泡と油の跳ねる音が小さくなってきたら、トングの掴み心地で状態の最終確認。火の通りやキャラメルの具合をチェックする。

工程8
焼き上がった肉はフライパンからバットに移し、このタイミングでないと味が馴染まない、という塩をすぐにふる。

工程9
油をしっかり飛ばす
付け合わせのポテトを揚げている間、塩をふった肉を200~250℃のオーブンの中に約30秒入れ、保温しながらしっかりと油を切る。

工程10
肉をオーブンで保温している間、盛り付ける器にも塩をふっておく。シェフ曰く「塩があったり、なかったりするのも味わい方のひとつ」。

工程11
オーブンから取り出した肉をカット。その日の肉の状態を見極めて、もっともおいしく食べられるようカットする厚さや方向を変える。

工程12
カットした肉を器に盛り付けたら、最後に削りたてのコショウを全体にふりかける。味付けは肉と器にふった塩と最後のコショウのみ。

押さえるべき3つのポイント
・ 肉を酸化させないように、注意して油の温度を調節
・火が通ってきたら、アロゼで肉表面にキャラメルを作る
・仕上げにオーブン保温で余分な油をしっかり飛ばす

Makoto Shigeno
ナチュラルワインに魅了され、1998年に渡仏。パリのビストロ「ル・セヴェロ」で修業を積む。帰国後、ステーキとビオワインの名店「祥瑞」でシェフを務めたのち、2013年2月に文化に対する意識や街並みがパリと似ていると感じる京都に、「ル キャトーズィエム」をオープン。

ル・キャトーズィエム
le 14e

京都市上京区伊勢屋町393-3 ポガンビル2F
075-231-7009
● 12:00~14:00、18:00~23:00(22:00LO)、 土日祝は16:00~23:00
● 水・木休
● 10席


白石亜矢子=取材、文 井原完祐=撮影

本記事は雑誌料理王国第268号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第268号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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