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盛り込む要素は最小限に「クローニー」春田理宏さん


「カンテサンス」で支配人を務めた小澤一貴さんが、「ティルプス」で腕を振るっていたシェフ春田理宏さん、「コンラッド東京」の「コラージュ」元支配人・小野寺透さんらと、西麻布に「クローニー」を開いた。

春田さんは、オープン間もないながら、「若手シェフ」部門で票を集めた。その理由として、「圧倒的にセンスがいい」「北欧のエッセンスを、センスよくフランス料理に取り入れている」「経験豊富で、新しいステージでも存分に力を発揮してくれると期待」などのコメントが寄せられた。

レフォール パセリ 鯖

熟成させた後で酢でしめ、皮目を炙ったサバに、レフォール(ホースラディッシュ)とパセリの2種のソースを合わせた。ビジュアル的にも面白く、食感、温度、香りも楽しめるひと皿。

ほどよく脂がまわるよう、状態を見極めて魚を熟成
届いたサバの状態によって熟成期間が異なるので、熟成の度合いを毎日チェックし、最終的には目で見て、手で触って判断する。

液体窒素で固めて、素材の香りを引き立てる
レフォールとパセリのソースを液体窒素で瞬間冷凍。ソースに空気を含ませた状態になるため、口の中で香りが広がりやすくなる。

余計なものは省き、シンプルな何を食べているかわかる料理

日本、フランス、北欧、アメリカなどで研鑽を積んだ春田さんの料理は、「何料理」と分類できない。全ての経験が、料理人というフィルターを通してひと皿に注ぎ込まれるからだ。「僕の作りたい料理は、シンプルで、何を食べているかわかる料理。ひと皿を、基本的に2〜3種類の素材で完結させます。余計なものは乗せたくない」と春田さん。「いかに削ぎ落とすか」にこだわる。それは北欧で学んだ影響だろう。足し算的なフランス料理に対し、北欧の料理は「素材の持っている味を引き出す」日本料理に似た引き算的な考え。「レフォール パセリ 鯖」にも、それは如実に現れる。サバに2種類のソースのみと、いたってシンプル。サバは、まずは熟成させる工程から。熟成期間は、届いたサバの状態によって変わるので、目で見て、そして触ったときの硬さや張り具合などで判断する。その後、酢でしめ、皮目を炙る。脂ののったサバは冷たすぎるとくどくなるので、常温よりやや高めにし、皮目はカリッとクリスピーに仕上げる。

主役はそのサバではなく、ソース。液体窒素で瞬間冷凍させた西洋わさびレフォールと、パセリのシャリシャリした食感の固形物がそれ。ビジュアルが面白いだけでなく、口中で香りが広がりやすくなる。冷たくてクリーミーで、すがすがしい香りのレフォールのソース。「この皿は食感と温度と香りを楽しんで欲しい」と言う。若いシェフの、今後に注目したい。

「クローニー」開店前に、サンフランシスコの三ツ星レストラン「セゾン」で研修した春田さん。小麦粉、ヨーグルト、黒ビールなどに、餞別でもらった酵母を入れてパンを焼く。

鍋で揚げるように焼いた硬めのパン。凹凸が出るようあえて1人前ずつ手でちぎってオープンに入れ、カリッカリに焼き上げる。

「カンテサンス」の支配人だった小澤一貴さんの声がけで、シェフ春田理宏さん、マネージャー小野寺透さん、ソムリエ石川雄大さんら、気鋭のメンバーでスタートを切った。

Michihiro Haruta

1987年大分生まれ。高校調理科卒業。パリ「ルドワイヤン」、東京「カンテサンス」、デンマーク「カドー」、ノルウェー「マエモ」などの星付き店で研鑽を積み、帰国後「ティルプス」のシェフを経て、2016年末「クローニー」のシェフに。

クローニー
Crony

東京都港区西麻布2-25-24 
NISHIAZABU FTビル MB1F
☎03-6712-5085
●18:00~翌2:00
●日休
●コース12960円+サービス料10%
●21:00以降はアラカルトメニューに
●27席
www.fft-crony.jp

名須川ミサコ=取材、文 依田佳子=撮影

本記事は雑誌料理王国271号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は271号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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