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広げた視野を昇華させ独自のスタイルへ「クローニー」春田理宏さん


さまざまな国で店の魅力を学び吸収し
新たな驚きを作り出す

日本、フランス、デンマーク、ノルウェー、アメリカで修業を積み、「クローニー」のシェフとなった春田さん。世界の名店を見てきた春田さんの料理を求めて美食家たちが集い、店はオープンから賑わいを見せている。

フレンチをベースとしつつ
驚きのある料理

2016年12月、東京・西麻布にオープンした「クローニー」。“親友”や“茶飲み友達”を意味する店名に込められた、「気兼ねなく心地よい存在でありたい」という思いのとおり、この店を愛するお客さまたちの穏やかな笑い声が店内にあふれている。オープンして1年も経たないとは思えない落ち着きのある雰囲気。そのなかで供される料理の数々が、食べる者の笑顔をさらに輝かせる。

「クローニー」のコースは全12品。フランス料理をベースとしつつも、ひと品ひと品に見たことのないような驚きがあり、飽きさせない。それでいて日本の食材をふんだんに使ったその味わいは、馴染み深さも感じさせる。「クローニー」の人気の要とも言えるこの料理を生み出すのが、30歳の若きシェフ、春田理宏さんだ。

高校の調理科を卒業後、ホテルに勤務した春田さんは、本場の料理を学びたいとフランスへ。約3年間で、パリの「ルドワイヤン」などミシュランの星付きレストランを中心とする12の店で修業。そしていったん帰国した際に岸田周三さんと出会い、「カンテサンス」に入った。のちに「クローニー」でパートナーとなる小澤一貴さんとも、このときともに働いている。

世界で積み重ねてきた経験が
新しい料理を生み出す

「カンテサンス」のあとは、デンマークの「カドー」へ。山へベリーを、森へアリを採りに行き、古くからの食文化に根付いた酢漬けや塩漬け、燻製などの調理法を学ぶ。その後ノルウェーの「マエモ」でさらに洗練された北欧料理を習得。日本の「ティルプス」を経て、アメリカの「セゾン」でジャンルにとらわれない料理と、空間作りやサービスの大切さを学んだ。

フランスでしっかりと基礎を身につけたうえで、デンマーク、ノルウェー、アメリカ、日本の名店を経て「クローニー」のシェフとなった春田さん。「この店では、これまでレストランに馴染みがなかった方はもちろん、世界中の店を食べ歩き知り尽くしている方でも、“新しい、おもしろい、おいしい”と思っていただけるような料理をめざしています」と語る。

人一倍多くの努力を重ね、多くの店で経験を積み、それぞれの魅力を吸収してきたからこそ生み出せる、誰のものにも似ていない春田さんの料理。そのおいしさ、楽しさを求めてお客さまが足を運び、「クローニー」はオープン後瞬く間に話題の店となった。また、料理だけでなくサービスもこの店の強み。チームで作り上げる“特別な時間”がさらなる人気につながっている。

キッチンの仕事を支える
サービスマンたち

「クローニー」は4人の創業者でスタートしている。シェフの春田さんとソムリエの石川雄大さん、そして、ディレクターの小澤一貴さん、マネージャーの小野寺透さんだ。小澤さんは「アピシウス」などを経て「カンテサンス」のディレクターを、小野寺さんは小澤さんと同時期に「アピシウス」を経て「コンラッド東京」のマネージャーなどを務めた。

1999年に「アピシウス」で出会い、飲食業界をよりよいものに変えていきたいという志を同じくして「いつか自分たちで店をやろう」と誓った小澤さんと小野寺さん。その後それぞれの道で修業を積みながら入念に事業計画を整え、シェフに春田さん、ソムリエに石川さんを迎え2016年に満を持してオープンしたのが「クローニー」だ。

「この店を会社に例えると、キッチンは開発・製造部門。私たちは営業部門です」という小澤さん。お客さまとじかに接する立場として料理の開発にも意見を出し、SNSなどを活用したPRも行う。さらに、小澤さん、小野寺さん、石川さんがそれぞれサービスマンとしてのキャリアのなかで獲得してきたお客さまたちが、「クローニー」のお客さまとなり、店のスタートを支えた。

優れたバランス感覚が信頼へ
チームで理想のレストランに

シェフの春田さんについて、小澤さん、小野寺さんが口を揃えて語るのが「バランスのよさ」。道具の使い方や人との接し方から、これまでの修業の活かし方、独創性とおいしさの両立まで、料理人としてのバランス感覚が優れているという。小澤さんは「カンテサンス」で出会った時からその素質を認め、今後もさらなる飛躍を期待している。

春田さん自身も大切にしているのは「おもしろさとおいしさのバランス」。趣向を凝らしつつも奇をてらいすぎることはない。旬の食材をシンプルに使い、季節を感じさせる料理を作り出す。そこには何料理という枠はなく、春田さんが今できることを自由に表現した“らしさ”がある。

コースは遊び心たっぷりの3つのフィンガーフードに始まり、スープ、前菜、料理として食べるパン、メイン、チーズ料理、デザートと続く。乾燥や塩漬け、酢漬けなどの調理法を取り入れながら、日本の食材を楽しませる洗練された味わい。パンには「セゾン」のシェフから譲り受けた酵母を使っている。それらを小澤さんほか経験豊かなサービスマンたちが、それぞれの感性でお客さまに届ける。レストランとしての理想の形のひとつがここに完成されている。

世界での経験に加え、成功を支えるのは
チームの力とバランスのとれた料理

ポイント1 サービスマンとのタッグ

「クローニー」は、春田さん、小澤さん、小野寺さんがそれぞれに独立できるという自信を得てから、その力を合わせてオープンした。誰かが誰かに頼るのではなく、ひとりひとりが十分に力を持ち、互いを尊敬し合うチームだ。

小野寺透さんは、「アピシウス」で小澤さんと出会って以来、ともに独立をめざしてきた同志。「クローニー」のマネージャーとして小澤さんを支えながらサービスを行う。

ディレクターの小澤一貴さん。「アピシウス」などを経て「カンテサンス」でディレクターを務めた。「クローニー」の運営全体を監督しながら、自らサービスも行う。

「料理だけがすべてではありません。サービスとの連携があってこそのレストラン。」

ポイント2 驚きとおいしさのバランス

食材は日本の旬のものを中心に、ひと皿に使う種類を抑え、その分、ひとつの食材をさまざまな調理法で合わせることで味わいに深みを出している。見た目の楽しさもありながら、シンプルでしっかりとおいしさを感じることができる。

デザートのモンブラン。和栗とホワイトチョコレートのペーストに凍らせたクリームとメレンゲを合わせて、「白い山」という言葉のとおり白一色のひと皿に。意外性のある見た目が楽しい。

軽く酢にくぐらせ炙ったサンマに、ブラウンマッシュルームを合わせた前菜。マッシュルームは生のカットと、ピュレにしたものを合わせて風味を増している。シーバックソーンの実で酸味をプラス。

Michihiro Haruta

1987年大分県生まれ。2008年に渡仏し、「ルドワイヤン」ほかで約3年間修業したのち、「カンテサンス」へ。さらにデンマーク「カドー」、ノルウェー「マエモ」、アメリカ「セゾン」などを経て「クローニー」のシェフに就任。

クローニー
Crony
東京都港区西麻布2-25-24
NISHIAZABU FTビル MB1F
☎03-6712-5085
●18:00~翌2:00
(コース20:00LO、21:30~ワインバー)
●日を中心に不定休
●コース 12000円(サービス料別)
●27席
www.fft-crony.jp

河﨑志乃=取材、文 岩橋仁子=撮影

本記事は雑誌料理王国280号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は280号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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