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修業時代から思い描いていた理想を具現化した店。フレンチ「エメ」武藤恭通さん


武蔵小山のおしゃれなグリーンショップ「TRANSHIP」の店奥に今年5月に誕生したビストロ「エメ」。オーナーシェフを務めるのは、フランスだけでなく、ニュージーランドや台湾のレストランで働くなど、豊富な海外経験を持った武藤恭通さんだ。

クラシックをベースに
新しいものを取り入れる

武藤さんが「そろそろ独立をしたい」と副料理長として働いていた「マダム・トキ」をあがったのは2013年。そこからオープンするまでの4年間は、出張料理やレストランの立ち上げなどフリーランスとして働く傍ら、ずっと物件探しをしていたそう。修業時代から「入り口に花屋などの植物がある場所」など明確な理想を持っていた武藤さん。イメージに合う物件を見つけるために何十軒も探し歩いて回ったという。そこまでこだわったのには理由がある。

「修業時代から、いつか自分の店を持つのが夢でした。ずっと独立を目標に、10年ほど前から器を買い集めたり、『こういう店をやりたい』というイメージをノートに書き留めたりしていました。多少変化した部分もありますが、『手仕事や古きよきものを大事にしたい』という核になる考えはブレずに持ち続け、現在の店の内装や料理のベースになっています」

「エメ」のメニュー表には「スープガルビュール」や「テット ド フロマージュ」「ピペラード」など、武藤さんの修業先であるブルゴーニュやバスク地方の郷土料理、古典料理が並ぶ。そこにフリーランス時代に手伝っていた店で学んだ和食や中華の技法を取り入れたり、和やオセアニアの食材などフランス以外の土地のものを使用したりすることで、オリジナリティを表現している。

「幅広い視野を持ちながら店を続けていきたいと思っています。将来的には、海外でイベントを行ったりもしてみたいですね。店にこもって職人的に料理を極めること、外に出て刺激を受けることの両方を大切にしていきたいです」

パイ包み焼き その日の厳選食材
「パイ包みはフレンチの王道。中身を変えて通年で提供していきたい」という武藤さん。夏はバスクの郷土料理である「アショア」を詰めて。契約農家から届く旬の野菜を付け合わせに。

一歩リードするためのスタート施策

フランスの蚤の市で購入したアンティークの器や「ノリタケ」の昭和後期の陶器、お気に入りの益子焼の作家・鈴木稔さんに作ってもらったカトラリー置き&皿など。「手仕事を大事にしたい」という武藤さんが、修業時代から少しずつ集めていたどこかノスタルジックで温かみのある器が、武藤さんのしみじみおいしい料理を引き立てる。

★器とグラスで雰囲気を演出する

フランスに行くたびに買い集めたという、蚤の市で購入したバカラのグラスが店内に飾られている。戸棚は栗の木で作られた国産のアンティークのもの。内装は居心地がいいよう、「ほどよいラフ感」を意識し、日頃、高級レストランに行っている人がカジュアルに通えるような空間に。「古きよきもの」であるアンティークがインテリアのベース。

★レストラン+αの付加価値をつくる

「一生懸命丁寧に作られているものを応援したい」という武藤さんの考えのもと、店内の一角にはグロサリーコーナーが。料理にも使用されているオーストラリア・タスマニア産の無添加のマスタードのほか、ニュージーランド産のマヌカハニーやインドネシア産の生こしょうなど、多彩な海外経験を持つ、武藤さんならではのラインアップが揃う。

★カフェタイムとしての営業も

仏語の「愛する」「好む」という意味を持つ動詞「aimer」の発音記号が店名の由来。「自分に関わってくれる人々にとって大切なお店でありたい」という武藤さんの思いが込められている。料理はアラカルトが中心。要望があれば、予算に応じてお任せコースも提供している。ランチとディナーの間はカフェタイムとしても営業中。

★書きためたノートで夢を形にする

修業時代に思いついたアイデアなどを書き留めていたノート。いつか独立したときに出したい料理や内装のイメージ、尊敬するシェフの言葉などが綴られている。「入り口に植物や花がある」「オープンキッチンでカウンターがある」「店には段差を設けて、階段を昇って入る」など、現在の店に通じるアイデアがたくさん記載されている。

シェフを支えるスタッフは、フランス修業時代の友人など。現在は調理場3人、サービス1人の4人体制で回しており、厨房ではフランス語が飛び交うなど国際色豊か。武藤さんはソムリエ資格を持ち、店で提供するワインの仕入れも行う。ワインセラーは客席の近くにあえて設置されており、将来的にはワインの販売もしていきたいと考えている。

Yasuyuki Muto

1979年神奈川県生まれ。国内で修業を開始。ニュージーランド、台湾で働いたのち、フレンチの道へ。2009年に渡仏。ブルゴーニュ、バスク地方などで修業後、帰国。「マダム・トキ」の副料理長などを経て、2018年5月に独立。

エメ
Eme
東京都品川区小山3-11-2 1F
☎03-5751-7636
●11:30~23:00
● 月休(不定休あり)
●平均予算 昼2000円、夜7000~8000円
●26席 

斉田麻理子=取材、文 土岐節子=撮影

本記事は雑誌料理王国290号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は290号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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